【シリーズ】How to make 備前焼?vol.5-窯焚き編【日本遺産】

岡山随一の焼き物、「備前焼」の知られざるつくり方を、備前焼作家のツマである藤田がお伝えするシリーズ。備前焼の見どころといえば、5日間以上に及ぶ登り窯での「窯焚き」。今回はその様子に密着、撮影。迫力満点の窯焚きの姿についてお届けします。
掲載日:2017年11月09日
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備前焼の醍醐味といえば”窯焚き”!

「土と炎の芸術」というキャッチコピーがある備前焼。その言葉通り、備前で採れる良質な土に加え、5日以上も火を絶やさず、登り窯に薪を焚べ続ける窯焚きが備前焼の見どころ。しかも、一つの窯で年に2回ほどしか行われないので、とってもレアなのです。伊部の街で窯焚きに出会ったら超ラッキー!

点火の儀は、一番前の部屋から

薪をくべるのは一番前の部屋の焚き口から。基本は、赤松の木を使います。写真のように薪を組んで空気の流れを作った上で点火。良い作品ができることを祈って、お酒をお供えしたり手を合わせて拝む窯主さんも昔からいらっしゃるそうですよ。神聖な瞬間なのですね。
最初はガスバーナーで強い火を送る窯もあるそうですが(大きな窯だとそうした方が良いらしい)、我が窯はライターで新聞紙に点火し、薪に移すシンプルなやり方。

薪を絶やさず、温度を上げていく

良い感じで炎が上がってきました。ここからは、とにかく温度を上げて上げて、1000℃を目指します。

温度計と時計は必須アイテム

必要なのは、温度計と時計。温度計は窯の温度を測る専用機器で、窯の内部と繋がっています。1時間毎に温度を測り、表に記録。ちゃんと温度が上がっているかチェックするのと、窯焚き当番を交代する時の引き継ぎ時に使います。

窯の周囲は常に薪だらけ

下の焚き口から薪を入れることで燃焼をキープし、合間合間に上の焚き口から薪を入れて温度を徐々に上げていくのが焚き方のリズム。それぞれ、投入した薪が燃え尽きる前に新しい薪を追加するので、常に窯の周囲には薪をスタンバイさせておくようにします。圧迫感がすごい。

すごーい!窯焚きが得意なフレンズが集合

最短でも5日間、長い時は10日以上も窯を焚き続けなくては完成しないのが備前焼ですから、マンパワーが必要不可欠。昔から、陶工たちが何人か集いシフト制で窯を焚き、窯主は間に仮眠をとって体力を温存するのです。そして、手伝ってもらった陶工さんが窯を焚く時には窯焚きに行くのが通例。孤独に見える陶芸家ですが、意外と横の繋がりが強いんです。

煌々と萌える炎にうっとり

時折、上の焚き口から柄が長い鉄製のシャベルを突っ込んで灰をかき分けたりするのですが、その際に見られる踊る炎のなんと美しいこと…。この火を纏って備前焼は美しく変化するのですね。うっとり。

炎の美しさを動画でも

窯焚きは見学者も多いのです

この秋窯を焚いた時は、アメリカからのお客さまが見学に来てくれました!めったに見られない備前の窯焚きをぜひ一目みたいとわざわざ遠くから来られる見学者も多いんです。

窯焚き終盤には迫力満点の”炭入れ”

窯焚き5日目ともなれば、窯内の温度は1200℃を超えてしっかりと焼き締まり、そろそろ窯焚きを終えようかという段階に入ります。(窯主がどんな作品を仕上げたいかによって変わりますが)その終盤に行うのが”炭入れ”です。
窯の横から柄の長いシャベルで砕いた木炭を入れ、直接作品に降りかけます。すると降りかかった部分だけ酸素がなくなり、「桟切り(さんぎり)」という模様が生まれます。
バチバチと激しい音とともに火花が散ります。備前焼作家はまったく火を怖がらないのですが、これを見るとなるほど、火に慣れるわけです。

煙突からは、モウモウと黒煙が

木炭が酸素を吸うと、窯の中の酸素が減ります。すると酸素不足から、煙は黒く変色。黒煙となって煙突から立ち上るのです。…こう書くと学校での理科の授業を思い出しますね。陶芸は、科学と切り離せない作業なんです。

そろそろ窯焚き終了です

もう終わろうかという直前に、一番前の部屋からもうちょっとだけ焚いて…。
焚き口をレンガで閉じ、土で隙間を埋めて終了です。長期間の肉体労働、お疲れ様でした。
作品を取り出せるようになるのは約3日後。なぜなら、一晩経ってもまだ写真のような温度ですから。とてもじゃないけど熱くて中に入れやしません!笑

備前焼作りのビッグイベント窯焚きを見逃すな

高温になり、赤白く燃え上がる作品たち。この熱さに耐えて生まれる備前焼たちはどれも丈夫で深い味わいを持つものばかり。過程を知ると余計に焼物が愛おしくなりますよね。
伊部の街に行ったら煙突をよーく観察してください。煙の出ているところは窯焚き真っ最中ってわけです。見学OKかどうか聞いてみるのも大いにアリ!ぜひその目で見てもらいたいなと思います。
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