【晴れの国おかやまは、天文県!】「せいめい望遠鏡」完成記者発表レポート!

 瀬戸内海や中国山地が遠くに見える標高372mの竹林寺山の山頂に、188cm反射望遠鏡ドームがあり、東に約270m、丘の上に東アジア最大となった「せいめい望遠鏡」が入っている京都大学岡山天文台のドームがあります。浅口市と矢掛町にまたがる岡山の地から、宇宙の神秘をひも解く新しい歴史が始まります。
 2018年8月17日に行われた「京都大学3.8mせいめい望遠鏡完成記者発表」の取材により、せいめい望遠鏡の観測対象・建設の歴史・世界初となる新技術・仕組みなどに迫ります。

写真:「せいめい望遠鏡完成のお祝いの虹」2018年8月23日 庄司優太さん(浅口市地域おこし協力隊)撮影。
掲載日:2018年11月29日
  • ライター:船橋弘範
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1.経緯と科学目的(柴田一成 台長)

 柴田一成先生(京都大学大学院理学研究科附属天文台 台長)のお話から、記者発表が始まりました。
 京都大学では、花山天文台(京都市山科区)・飛騨天文台(岐阜県高山市)の2つの天文台を保有しており、新たに岡山天文台が加わりました。花山天文台は日本アマチュア天文学発祥の地で、初代台長の山本一清さんは日本初の民間天文台である倉敷天文台設立にも尽力され、ここでも京都と岡山のご縁がありました。
 2005年、民間の企業家である藤原洋さんからの6億円もの資金援助があり、産学連携により開発開始しました。その後、文部科学省からも9億円の予算が付き、建設が進み、2018年7月27日に完成しました。
 新技術開発としては、鏡の研削加工技術・超軽量架台・分割鏡制御技術で、これらはみな、未来の超大型望遠鏡建設の基礎技術となります。

【せいめい望遠鏡の科学目的】
 天体爆発現象の研究:ガンマ線バースト(重力波天体)、太陽型星のスーパーフレア。太陽系外惑星の探査
 1.ガンマ線バースト:クレベサデルらが、1973年にベラ衛星により発見したが、最初はソ連の核実験だと思われた。継続時間は、1ミリ秒から1000秒で、極めて遠方で起こる「宇宙最大の爆発」で、正体は謎です。 ガンマ線バーストの発生直後(1分以内)の分光観測実績は世界では無いので、世界初の分光観測を狙い、ガンマ線バーストの正体を解明します。
 2.太陽型星のスーパーフレア:太陽で起きる最大級フレアの10~1万倍のエネルギーを持つフレアをスーパーフレアと言い、せいめい望遠鏡の分光観測により解明します。 数週間から数か月の連続観測により、スーパーフレアからのプラズマ噴出を初めて検出できます。 3年間の分光モニター観測により、スーパーフレアの前兆現象である巨大黒点の生成・消滅過程を追跡します。
 3.太陽系外惑星の探査:恒星のわずかな運動を測ることによって、太陽系外惑星が続々と見つかり出した(2018年8月現在、3,777個以上)。 地球外生命発見のさきがけへ!

2.望遠鏡開発・建設の歴史(長田哲也 教授)

長田哲也先生(岡山3.8m望遠鏡プロジェクトリーダー、京都大学宇宙物理 教授)より、望遠鏡開発・建設の歴史に関する説明がありました。
1999年1月:京都大学大学院理学研究科宇宙物理学教室で、ワーキンググループ結成、2001年5月:学術会議 天文研連からのサポート、2002年-2005年:分割鏡方式、トラス構造、研削加工技術など検討

「4者協力の覚書」
2006年8月:京都大学大学院理学研究科 天文台・宇宙物理学教室、名古屋大学理 光赤外線天文学研究室、国立天文台 岡山天体物理観測所、ナノオプトニクス研究所
2007年10月:光学系の研削加工機械が完成(岐阜のナガセインテグレックスで披露) 研削加工の試験などを続行
2013年:完成部分を京都大学が寄付受け
2013年7月:京都大学から文部科学省へ、望遠鏡を研究設備として、ドームを施設として概算要求

「望遠鏡」2013年12月:平成25年度補正予算として採択、2015年3月:完成 、2016年8月:仮ドーム内で光学試験
「ドーム」2015年1月:平成27年度予算として採択 、2017年2月:完成 、2017年6月・7月:望遠鏡の主要部分をドームに移設

3.せいめい望遠鏡の特徴 (栗田光樹夫 准教授)

栗田光樹夫先生(京都大学宇宙物理 准教授)より、「せいめい望遠鏡の特徴」に関する説明がありました。
 せいめい望遠鏡の色は、地元の小学生へのアンケート結果により、決められました。
 可動部分を除く緑色の基礎部分の重量は10トンで、可動部分の重量は20トンで、軽量化が図られています。大きさは、横8m・縦8mです。
 望遠鏡がどの方向を向いていても1分以内で観測天体の方向に向けて観測開始できます。従来の望遠鏡では、数分から5分程度必要でした。
 東アジアには、4m級の可視光・近赤外線観測が出来る望遠鏡が無かったが、この望遠鏡により、世界レベルでシームレスな観測が可能になります。
【せいめい望遠鏡の特徴】
1.分割鏡 分割鏡方式は、複数の小さな鏡で望遠鏡の主鏡を構成する方式で、大きな1枚鏡を作る限界を克服できるメリットがあります。
  せいめい望遠鏡では、大きさ約1m・70kgの18枚の分割鏡で構成されます。 鏡同士の段差は、50nm(2万分の1ミリメートル)でリアルタイムに段差と傾きを調整します。
  分割鏡方式の望遠鏡は世界に6台あり、7台目となる。 鏡の段差(位相)まで合わせているのは、KECK望遠鏡の同型3台のみで、4台目となる。
  回折限界に達する分割鏡制御技術を使用した望遠鏡は1例あり、2例目となる。
   各分割鏡の接続部分にエッジセンサを配置し、各分割鏡の下に3個のアクチュエータという装置を設け、望遠鏡構造の重力変形・温度変形・風圧による変形で起きる段差をリアルタイムに制御システムで修正します。
2.軽量な構造 突発天体観測のために、1分以内に観測する天体に望遠鏡を高速駆動で向ける必要があります。
  そのため、軽量で硬い構造を実現するため、巨大な円弧状の高度軸・トラス構造・ホモロガス変形と遺伝的アルゴリズム手法を利用しました。
  これにより、鏡筒の重量は従来の数分の1になりました。 

4.反射鏡の開発 (木野勝 助教)

木野勝先生(京都大学岡山天文台 助教)より、「反射鏡の開発」に関して説明がありました。

1.主鏡 直径3.8mの凹面で、18枚の分割鏡から構成される。
2.副鏡 直径1mの凸面。
3.第三鏡 長径1mの平面。

【主鏡の形状と精度】
せいめい望遠鏡の分割鏡は、外形はバームクーヘン型で、鏡面は軸外し形状。
1枚の分割鏡は、大きさ約1mで重さ約70kg・材質はゼロ膨張ガラスセラミックス・形状誤差は100ナノメートル以下(1ナノメートルは、1ミリメートルの100万分の1)

【加工と計測】
これまでの鏡製作は、職人技による研磨で、1メートルの鏡面加工に約1年を必要。
せいめい望遠鏡では、超精密研削+仕上げ研磨、研削の導入で研磨工程を短縮し、1枚を約3週間で完了。
藤原洋さんからの資金援助により、京都大学と名古屋大学で鏡の形状計測装置を開発し、京都大学発ベンチャー企業のナノオプトニクス研究所(現 アストロエアロスペース)では超精密加工機を調達して20枚の鏡を加工。超精密加工の共同研究も行った。

【完成した鏡】
1枚あたりの加工期間は、研削加工で1週間・研磨加工で2週間。 コーティングは、アルミ蒸着+SiO保護。

5.観測装置の特色 (岩室史英 准教授)

岩室史英先生(京都大学宇宙物理 准教授)より、「観測装置の特色」に関して説明がありました。
 このような大きな望遠鏡を開発する場合、観測装置の予算も付いて来ますが、観測装置を作るための予算は無いので、既存の観測装置を改良して転用したり、新しくプロジェクト資金を各グループで確保して観測装置を作り始めています。
 せいめい望遠鏡の大きな観測目標である突発天体や惑星探査などに特化した観測装置以外に、すばる望遠鏡のような大望遠鏡では観測できない長期間のモニター的な観測:明るさが変光する変光天体をターゲットとする観測装置も用意します。
【現在開発中・検討中の装置(概要)】
1.可視面分光装置(KOOLS-IFU) 広がった領域の分光 突発天体 既存装置の改良・拡張
2.惑星探査装置(SEICA) 極限補償光学+コロナグラフ 惑星探査 開発中
3.近赤外相対測光分光器 2天体同時測光分光 変光天体 開発中
4.可視高分散分光器 可視光全体を一度に観測 フレア 計画中
5.高速測光分光装置 高速露出カメラ 変光天体 既存装置の改良
6.赤外偏光撮像装置 近赤外偏光撮像カメラ 星形成 開発開始
7.多色撮像カメラ 可視光複数波長での同時撮像 超新星 開発開始
8.ぐんま高分散分光器(GAOES) ぐんま天文台装置の移設 惑星探査 既存装置

6.全国共同利用 (泉浦秀行 准教授)

泉浦秀行先生(国立天文台 准教授)より、「全国共同利用」に関して説明がありました。

国立天文台と京都大学で、覚書の取り交わし(2017年10月)
1.京都大学と国立天文台が相互に協力
2.国立天文台は旧岡山天体物理観測所188cm望遠鏡の後継機と位置づけ
3.約半分の観測時間を国立天文台が全国大学共同利用
4.共同利用のため国立天文台が3名の教職員を配置
5.利用料を国立天文台から京都大学へ支払い

7.見学・施設公開について (戸田博之 教務補佐員)

戸田博之さん(京都大学岡山天文台 教務補佐員)より、「見学・施設公開について」に関して説明がありました。

1.一般見学 岡山天文台3F外周回廊の開放窓からのせいめい望遠鏡の見学
  8月26日(日)から毎日、9:00から16:30(年末年始期間、雨天・積雪・強風時、整備・保守期間などを除く)
  一般からの問い合わせ先:岡山天文博物館 電話 0865-44-2465
2.ドーム内見学 実施方法を検討中。
3.観望会 2019年以降の実施で検討中。

8.見学会 主鏡と第三鏡

記者発表が終わり、見学会になりました。写真は、主鏡と第三鏡です。
鏡面のキラキラ感は、とても美しいものでした。

9.見学会 副鏡

写真は、副鏡です。望遠鏡の鏡筒の先端部分にあります。

10.見学会 第三鏡の中に見える主鏡と副鏡

写真は、焦点付近から撮影した第三鏡です。第三鏡の中には、主鏡と副鏡が見えます。鏡の位置は未調整なので主鏡・副鏡がずれて写っています。
主鏡で集められた星々の光は副鏡に届き、副鏡からの光は第三鏡に届いて観測装置に届きます。つまり、第三鏡は、青色ナスミス台や赤色ナスミス台に設置された各種観測装置へ光を届けるスイッチのような役割を果たします。これにより、迅速な観測に対応できます。

11.見学会 高所作業台からの撮影

写真のように高所作業台に乗せていただき、高い位置からの撮影しました。
高所作業台が徐々に高度を上げてゆくと、せいめい望遠鏡の主鏡の全景が見えて、光り輝く様子に感動しました。
高所作業台の揺れに伴うブレがありますが、下の動画をご覧ください。

12.見学会 ドームから見る青空

写真は、ドームから見上げる青空です。主鏡・第三鏡・副鏡も見えています。
下の動画では、ドームが閉まる時の様子を見ることができます。

13.サイエンス・広報担当 野上大作准教授

写真は、2018年5月26日のせいめい望遠鏡公開の時に撮影したものです。
野上大作先生(京都大学宇宙物理 准教授)は、サイエンスや広報を担当されています。
野上先生には、いつも、変な質問でも真摯にお答えをいただいておりますが、この日は出張のためにご不在でした。
せいめい望遠鏡での一般向けの観望会が、将来予定されています。この大きな望遠鏡で見る星や星雲を想像するとワクワクします。
残念ながら、天文台全体の運営費が不足していると伺いました。お金に余裕のある方は、下記ホームページの「寄付」メニューからご寄付をお願いいたします。

14.せいめい望遠鏡ドームの昼間の開口

取材終了後、せいめい望遠鏡ドームが昼間に開いている貴重な姿を見ました。

 「天体爆発現象の研究:ガンマ線バースト(重力波天体)、太陽型星のスーパーフレア。太陽系外惑星の探査」などを科学目的に、長年に渡り、研究・開発を行われた天文学者の皆様・関係者の皆様に敬意を表します。想像以上のご苦労があったことと思います。

 科学目的を実現するための「分割鏡技術」・「軽量架台・鏡筒技術」などの数々のアイデアで構成され、世界最先端の新技術です。この技術は、第二・第三のせいめい望遠鏡として、日本国内や外国で花開くことでしょう。また、従来の望遠鏡よりも低価格で、コストパフォーマンスが高いことも特筆すべき点です。

 先生方のお話を伺い、研究・教育・普及の場として、せいめい望遠鏡は命を吹き込まれた、生まれたばかりの「せいめい」だと感じました。
 この岡山の地から発信される「宇宙の神秘をひも解く大発見のニュース」を楽しみにしましょう!

15.岡山天文博物館 せいめい望遠鏡解説コーナー

 隣接する岡山天文博物館には、「せいめい望遠鏡解説コーナー」がありますので、せいめい望遠鏡の見学前には見ておきたい場所です。
 また、せいめい望遠鏡ドームの外周回廊からの見学に関する問い合わせは、岡山天文博物館にお願いします。
 数々の魅力的なイベントもありますので、岡山天文博物館facebookページをチェックしましょう。

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