果物そのものを味わっているようなフルーティで爽やかな『リキュール』

豊かな伏流水と、酒の味を左右する米。豊穣の地で挑む蔵元の「和リキュール」

豊富な水量を誇る一級河川が3本も縦断する岡山県。瀬戸内の温暖な気候と、清らかな水が育む土壌は、「豊穣の地」として古くから豊かな恵みをもたらしてきました。
稲作の発展により9~11世紀に国として栄えた、備中・備前・美作地域。18世紀初期には、大阪の米問屋経由で「備前米」が一躍有名に。酒造好適米として「山田錦」「五百万石」などの優良品種の酒米親として重宝され、「幻の酒米」とも呼ばれる「雄町米」の生産で、全国の蔵元から一目を置かれるようになりました。
そんな酒造りに恵まれた環境で銘酒を磨き上げてきた蔵元が、リキュール造りに挑んだきっかけが、若い世代の日本酒離れ。注目したのは、くだもの王国・岡山が誇るフルーツでした。

白桃やピオーネなどを贅沢に使用。老舗蔵元の世界が認めるリキュール

若い世代の中でも、特に顕著だったのが女性の日本酒離れ。この状況を危惧し、平成16(2004)年頃から本格的にリキュール造りが始まります。
県内最古の蔵元『室町酒造』では、酒造技術の研鑽と杜氏の熱意で、国内でも前例がほとんどなかった日本酒ベースのフルーツリキュールを完成させました。雄町米や雄町の伏流水、とろけるようなみずみずしい果肉と甘みを持つ「清水白桃」、大粒で濃厚な甘みと爽やかな酸味の余韻がたまらない「ピオーネ」など、地元産の素材をとことん吟味し、贅沢に使用しています。
手間ひまかけて仕込み、1年間の熟成を経てやっと完成するリキュールは、「モンドセレクション」や「IWSC(インターナショナル ワイン&スピリッツ コンペティション)」など、世界の名だたるコンテストで最高賞や金賞を受賞しています。
まるで果物そのものを味わっているような濃厚な甘みとふくよかな香り、日本酒ならではのキリリと爽やかなあと口は、既存のリキュールのイメージを一新。国内に留まらず世界を魅了する酒となりました。

果物のおいしさと酒の奥深さを凝縮。お酒離れを食い止める救世主に

世代を超え、国境を越えて愛されている岡山メイドのフルーツリキュール。慶応3(1867)年創業の『丸本酒造』では、1本500mlに契約農家から仕入れる完熟白桃を2個以上使う贅沢なリキュールを、旭川の近くに蔵を構える『宮下酒造』では、ピオーネの皮まで丸ごと使った芳醇なスピリッツを開発するなど、老舗蔵元からこだわりのリキュールが次々と登場しています。
ふわりと鼻を抜けるフルーティな香りと味、爽快な余韻は、ロックはもちろん、食前酒として味わったり、アイスクリームにかけたり、料理に用いたりと楽しみ方はさまざま。デザインコンシャスなパッケージも手伝って、ギフトとしても幅広い世代から人気です。
岡山の果物のおいしさも、お酒の魅力もギュッと凝縮されたハイブリッドなフルーツリキュール。蔵元が総力をあげて完成させたお酒は、アルコール業界に新風を巻き起こしています。

取材協力:室町酒造