「こたつぶどう」の異名を持つ『グロー・コールマン』

温暖で降水量の少ない気候と高い温室栽培技術に支えられ、全国シェア98%

ロシア南部のコーカサス地方が原産の「グロー・コールマン」。多くのぶどうが9月に最盛期を迎える中、グロー・コールマンはぶどうの中で最も遅い11~12月に収穫期を迎え、コタツに入って食べる季節に出荷されることから、「こたつぶどう」とも呼ばれています。

岡山県での栽培が始まったのは大正時代。大阪の栽培家から苗木を譲り受けた猿場地区(現岡山市北区横井上)のマスカット農家が、長年の経験と栽培技術を元にガラス室での研究を重ね、栽培方法を確立したといいます。やがて岡山市、倉敷市を中心に広まり、現在では全国生産の9割以上を岡山県が占めています。

開花から収穫までの時間と手間は、他のぶどうの倍以上

グロー・コールマンの開花時期は、ピオーネなどと同じ6月上旬頃ですが、その実はゆっくりと育っていくため、食べ頃を迎えるのは他のぶどうの2~3ヵ月後です。
そのため栽培する人々は、他のぶどうに比べて倍以上の期間をかけてこの品種を育てているのです。たとえば、ひと房ひと房にまんべんなく陽光が当たるように日陰を作る葉を取り除いたり、地面に光を反射するシートを敷いたり。ぶどうの少ない冬に味わえる希少なグロー・コールマンは、ぶどう農家のたゆまぬ努力の結実なのです。

薄い果皮の中に、酸味が少なく、すっきりとした甘さの果汁がたっぷり

ドイツ語で「大きな石炭」を意味するグロー・コールマンと名付けられたぶどうは、深みのある黒褐色でひと粒ひと粒が大きいのが特徴。

むかずにそのまま食べられるほど薄い果皮に包まれた果肉は、酸味が少なく、すっきりとした甘さで、したたるほどの果汁を含んでいます。また、実の表面についている白い粉(ブルーム)は、ぶどうの糖分やミネラル、脂質成分が果皮に出てきたもの。甘くておいしい証拠です。

取材協力:今井 恒男さん