「用の美」を湛えた手彫りの『烏城彫』は、使うほどにツヤが増し味わいが深まる

国産天然木の木目を活かし、日本産の生漆で丹念に仕上げた逸品

岡山の象徴ともいえる岡山城は、漆黒の外観から烏城(うじょう)とも呼ばれています。その異名を名に冠した「烏城彫」は、「手作り、手彫り、手塗り」に徹した漆工芸品です。
栃(トチ)、欅(ケヤキ)、桂、桐など、日本産の天然木の木目を活かして、野菜や果物、花、古瓦などの模様を彫刻し、色漆で着色。さらに日本産の生漆を塗っては布で拭き取る「ふき漆」という作業を、13~24回繰り返して作られる「烏城彫」は、奥ゆかしいツヤを湛えています。

自作する楽しみから始まった漆器が、岡山県特産の工芸品のひとつに

「烏城彫」は、木口九峰(きぐちきゅうほう)氏が、自身の趣味として自分の茶道具に好みの彫りを施したことに始まります。やがて木彫りを本職とするようになった木口さんは、「岡山の産物として恥ずかしくない品」と確信を持ち、昭和2(1927)年に一連の作品を「烏城彫」と命名したのです。
趣味として始めたゆえに素材を厳選し、自ら気に入るまで入念に仕上げるという作品への姿勢は、今も職人たちに受け継がれ、現在では岡山の特産品のひとつに数えられるまでになりました。

長く愛用できる漆器は、贈答品としても喜ばれている

岡山では「お盆屋さん」として知られ、人々に親しまれてきた「烏城彫」。昔から岡山に住む人々になじみ深い丸盆や角盆を中心に、コーヒートレイ、小物入れなども作られています。いずれも、立体的な手彫りと、手間ひまをかけた「ふき漆」によって現れる美しい木目、使い込むほどに増していくツヤと味わい深さが魅力です。
長く愛用できることから、自宅用としてはもちろん、お土産や贈答品としても、多くの人に利用されています。