信じられない超絶技巧!若手備前焼作家の美しい【細工物】にご注目

備前焼といえば花器やお皿…だけでなく、【細工物】にも注目を。「これも備前焼!?」と驚くほどの超絶技巧を駆使した【細工物】が、若手作家たちの手で生み出されています。今にも動き出しそうな動物や、刀剣のリアリティに息を呑んで。
掲載日:2018年10月19日
  • ライター:藤田恵
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備前焼の「刀剣」制作に没頭。【森本直之さん】

鈍く光り、厳かに佇む。この刀は、ホンモノ…!?
備前市は佐山の山里で、18年以上作陶を続ける森本直之さん。3年ほど前から、ある細工物の制作に没頭しています。
それは、”刀剣”。
幼少の頃から刀鍛冶への憧れを持ち、自身も刀剣を所有するほどの愛刀家である森本さんは、企画展への出品のために御守り刀を制作したことから備前焼で刀剣を作る奥深さ、楽しさに開眼。1年に10本ペースで制作を続けています。
(写真撮影=高島秀吉さん、写真提供=森本直之さん)

気の遠くなる作業の果てに生まれる、名刀「山鳥毛」

2018年5月、森本さん自身が一番の名刀だと思う国宝の備前刀「山鳥毛(さんちょうもう)」を備前焼で写した作品が生まれました。
備前焼で刀剣を作るのは至難の業。細くて長いもの、薄いものは窯で焚くと反ったり曲がったりするからです。
まずは、取り扱いに細心の注意を払いながら造形。そして、山鳥毛ならではの華やかな刃文を、溝を彫って白い土を流し込む「象嵌」で細やかに表現。また窯で焚く際は反り返らず、作品本体に負担がかからない絶妙な押さえを設置。
特に今回は、これだけ長い刀を焼くのは初めてのこと。歪みのない、美しい刀身に惚れ惚れ…。

精密な刀身彫刻もご覧あれ

絵や図がはっきりと分かる「象嵌」だけでなく、種類の違う土を混ぜて刃文を表現する「練り込み」や、造形した上から石の粉をつけて火が直接触れるのを防ぐなど、あらゆる方法で刃文や地鉄を表現している森本さん。
写真の刀剣は、備前焼特有の茶色い焼けが、まるで長い年月を経て錆びついた刀のように見える一振。
龍の背びれや鱗の一枚一枚が丁寧に描かれた、刀身彫刻の倶利伽羅(くりから)の精巧さに驚きます。

今にもさえずりそうな小鳥たち

刀剣も良いのですが、森本さんといえばホンモノそっくりの雀やメジロたちも必見。
急な乾燥を防ぐため秋から冬に制作を行い、完成まで1ヶ月ほどかかるという手間暇のかかった作品たち。カワイイだけでなく、1枚ずつ伸ばした粘土を張り付けてリアルに表現された、柔らかそうな羽毛に引き込まれます。
刀剣も小鳥もぜひ見たい!という方は、JR伊部駅2階にある備前焼伝統産業会館で常設されている森本さんの作品が見られますし、事前に電話の上で工房にお邪魔することもOKとのこと。
ぜひ以下のリンクから、フェイスブックページをチェックしてみてください。

伝統の中で魅せる”イマドキ”の粋な洒落。【好本康人さん】

作家の家が軒を連ねる備前市伊部で、備前焼作家の父・好本宗峯さんの仕事を見ながら育った好本康人さん。東京造形大学で彫刻を学んだ後、バックパッカーとしてインドやタイ、中国などを巡って世界の文化に触れてきたと言います。
「国の文化を受け継いで、次に繋ぎ、他国の人たちに見せていくことは大切だと、改めて感じました」。
外の世界を見、備前焼の細工師になる決意を固めてから14年経った今。
その精巧な造形力だけでなく、豊富な知識を生かしての独自の洒落っ気でファンを増やし続けている実力派作家さんです。
(写真撮影・提供=好本康人さん)

カエルだって釣りをする。鳥獣戯画の世界へようこそ

この作品のタイトルは「待てばカエルの日和あり」。そう、「海路」をカエルに言い換えたことわざの洒落なんです!
眺めるだけで物語を読んでいるような気持ちになれるこの作品。じっくり見ていると、カエルの水分すら感じられそうな滑らかな肌。ヌメッとしたカタツムリの皮膚。ホンモノそっくりの林檎と恐ろしいほどの作り込みです。
そこに、カタツムリの貝など備前焼特有の焼き色がしっかりと表現されていて圧倒されるばかり。
(写真提供=好本康人さん)

可愛すぎてチェスどころじゃない!「鳥獣遊戯」

こちらのタイトルは「鳥獣遊戯」。そう、お分かりですね。絵巻物「鳥獣戯画」の世界観を、そのままチェスの駒に仕立てたユニークさに脱帽です。
もともと、一つの物事に没頭してのめりこむタイプの康人さん。1作品につき最低でも1ヶ月はかかるという制作過程は「少しも手が抜けず、正直苦しい」と思う作業の連続だそうですが、かといって自分の思い描く完成に至るまで妥協できない性格だからこそ、突き詰めた凄みが作品から溢れています。
なにより動物たちのイキイキとしたこの表情!うっとり見とれてしまってチェスどころじゃありません…。
西洋彫刻の技術を生かし、生き物の骨格や筋肉をしっかり形を造る。対象物にまつわるストーリーを調べ、実物とふれあい、そうして土に落とし込む内にどんどん動物たちと親しくなっていくという、好本さんの制作手法。完成まで時間がかかるため、なかなか作品をお目にかかれないのも理解できます。
現在は、備前焼伝統産業会館での常設のほか、事前に電話で確認の上で作品がある場合は伊部にある工房兼ギャラリーで見せてもらえます。
ちなみに、次の展示会は2019年秋頃とのこと。今から待ち切れません!
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