備前焼の「刀剣」制作に没頭。【森本直之さん】
備前市は佐山の山里で、18年以上作陶を続ける森本直之さん。3年ほど前から、ある細工物の制作に没頭しています。
それは、”刀剣”。
幼少の頃から刀鍛冶への憧れを持ち、自身も刀剣を所有するほどの愛刀家である森本さんは、企画展への出品のために御守り刀を制作したことから備前焼で刀剣を作る奥深さ、楽しさに開眼。1年に10本ペースで制作を続けています。
(写真撮影=高島秀吉さん、写真提供=森本直之さん)
気の遠くなる作業の果てに生まれる、名刀「山鳥毛」
備前焼で刀剣を作るのは至難の業。細くて長いもの、薄いものは窯で焚くと反ったり曲がったりするからです。
まずは、取り扱いに細心の注意を払いながら造形。そして、山鳥毛ならではの華やかな刃文を、溝を彫って白い土を流し込む「象嵌」で細やかに表現。また窯で焚く際は反り返らず、作品本体に負担がかからない絶妙な押さえを設置。
特に今回は、これだけ長い刀を焼くのは初めてのこと。歪みのない、美しい刀身に惚れ惚れ…。
精密な刀身彫刻もご覧あれ
写真の刀剣は、備前焼特有の茶色い焼けが、まるで長い年月を経て錆びついた刀のように見える一振。
龍の背びれや鱗の一枚一枚が丁寧に描かれた、刀身彫刻の倶利伽羅(くりから)の精巧さに驚きます。
今にもさえずりそうな小鳥たち
急な乾燥を防ぐため秋から冬に制作を行い、完成まで1ヶ月ほどかかるという手間暇のかかった作品たち。カワイイだけでなく、1枚ずつ伸ばした粘土を張り付けてリアルに表現された、柔らかそうな羽毛に引き込まれます。
刀剣も小鳥もぜひ見たい!という方は、JR伊部駅2階にある備前焼伝統産業会館で常設されている森本さんの作品が見られますし、事前に電話の上で工房にお邪魔することもOKとのこと。
ぜひ以下のリンクから、フェイスブックページをチェックしてみてください。
伝統の中で魅せる”イマドキ”の粋な洒落。【好本康人さん】
「国の文化を受け継いで、次に繋ぎ、他国の人たちに見せていくことは大切だと、改めて感じました」。
外の世界を見、備前焼の細工師になる決意を固めてから14年経った今。
その精巧な造形力だけでなく、豊富な知識を生かしての独自の洒落っ気でファンを増やし続けている実力派作家さんです。
(写真撮影・提供=好本康人さん)
カエルだって釣りをする。鳥獣戯画の世界へようこそ
眺めるだけで物語を読んでいるような気持ちになれるこの作品。じっくり見ていると、カエルの水分すら感じられそうな滑らかな肌。ヌメッとしたカタツムリの皮膚。ホンモノそっくりの林檎と恐ろしいほどの作り込みです。
そこに、カタツムリの貝など備前焼特有の焼き色がしっかりと表現されていて圧倒されるばかり。
(写真提供=好本康人さん)
可愛すぎてチェスどころじゃない!「鳥獣遊戯」
もともと、一つの物事に没頭してのめりこむタイプの康人さん。1作品につき最低でも1ヶ月はかかるという制作過程は「少しも手が抜けず、正直苦しい」と思う作業の連続だそうですが、かといって自分の思い描く完成に至るまで妥協できない性格だからこそ、突き詰めた凄みが作品から溢れています。
なにより動物たちのイキイキとしたこの表情!うっとり見とれてしまってチェスどころじゃありません…。
現在は、備前焼伝統産業会館での常設のほか、事前に電話で確認の上で作品がある場合は伊部にある工房兼ギャラリーで見せてもらえます。
ちなみに、次の展示会は2019年秋頃とのこと。今から待ち切れません!