酒蔵見学、試飲あり!五感で日本酒を楽しめる酒蔵4選(浅口市編)

水にも米にも気候にも恵まれた岡山県は酒どころ。県南西部に位置する浅口市は、遙照山系からの豊富で良質な水、海に近い土地の利から、昭和初期には20軒近くもの酒蔵があったそう。今は4つの個性的な酒蔵があります。
今回は、嘉美心(かみこころ)酒造・平喜(ひらき)酒造・丸本酒造、3つの酒蔵見学に参加してきたのでレポートします。酒蔵見学はないものの、ぜひ立ち寄ってほしい神露(しんろ)酒造についてもご紹介します。
※未成年や運転者の方の試飲はご遠慮ください。
掲載日:2019年12月19日
  • ライター:m.k
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①屋上から瀬戸内海が見える「嘉美心酒造」

瀬戸内海に面した寄島町にあることから「渚の蔵」と呼ばれる「嘉美心(かみこころ)酒造」。創業は1913年(大正2年)です。
酒蔵見学の途中、屋上にも上がらせていただけます。寄島のまちなみと瀬戸内海を、広々と見渡すことができました。
高梁川流域は「備中杜氏」と呼ばれる酒づくりのプロが多くいた地域。ここ寄島も、かつては何百人もの方が酒づくりに携わっていたといいます。
酒蔵見学は、一週間以上前の予約制(平日)です。私が参加した際は、杜氏(酒造りの最高責任者)の方が案内してくださいました。実際に使う機械や道具を間近に、手元の写真とともに臨場感をもって、酒づくりの工程を知ることができます。
秋口から冬にかけてが仕込みのシーズンということで、仕込みの様子を見学することができました。仕込み真っ最中のとろとろなお酒が入ったタンクを見たり、実際に混ぜてみたり。しぼりたてのお酒を飲ませていただけたりも。
たくさんの工程を丁寧に行うことで、美味しいお酒が出来上がるのですね。日本酒は、自然の力と真心の結晶です。
最後の試飲タイムでは、気になるお酒を呑み比べできます。フルーティーな香り高いものから、まったりと味わいあるもの、すっきりとしたものまで、同じ酒蔵でも銘柄によって味が違うのが日本酒の魅力です。
岡山県産のお米の旨味が生きた、甘口のお酒が特徴の嘉美心酒造。瀬戸内海の小魚料理に合う、甘口のお酒が発展してきたという海辺ならではの歴史があるそうです。
2019年12月22日(日)には「冬のミニ蔵祭り」が開催されます。限定酒や、日本酒カクテルバーなど、お楽しみ盛りだくさん。鴨方駅から送迎バスもあります。
蔵祭りは年間を通じて、季節ごとに開催されているので、ぜひチェックしてみてください。
私のお気に入りは、今年の新米が使われている「純米吟醸無濾過生原酒しぼりたて 冬の月」、濃厚な旨味と芳醇な風味が贅沢な、人気のお酒です。今年から販売がスタートした、心シリーズ(写真は純米吟醸酒)も、少し発泡感がありおすすめです。
酒蔵見学について、今後は有料(1人500円(税込))で、ミニおちょこ、試飲は3種類まで(4杯め以降、1杯100円)となるそうです。
一週間以上前からの予約制で、平日のみの受付。所要時間は、試飲を含め1時間程度となります。

②コンピュータも人の五感も活躍「平喜酒造」

ビール工場のように屋外に大きなタンクがずらりと並び、酒蔵として県内有数の広さを誇る「平喜(ひらき)酒造」。鴨方に酒蔵ができたのは1923年です。
同じ敷地内に2つの蔵があり、今回はどちらも見学させていただけました。コンピュータで品質管理を行う「黎明(れいめい)蔵」と、昔ながらの方法で酒づくりを行う「豊穣蔵」です。
黎明蔵では、最新の設備やテクノロジーを駆使し、温度・湿度管理を徹底することにより、年間通じての酒づくりが可能になっています。ただし、コンピュータは環境の管理はしてくれても、酒の状態までは管理してくれません。順調に酒づくりが進んでいるかを判断するのは、今でも人の仕事なのだそう。麹づくりや仕込みの過程で、見た目や香りを人がチェックしながら、酒づくりを進めておられます。
酒蔵というよりは工場といった雰囲気の「黎明蔵」に対し、「豊穣蔵」にはお米を蒸すための大きな木桶がありました。木桶でお米を蒸している酒蔵は、今ではとても貴重なのだそうです。
平喜酒造では木桶仕込みのお酒もつくっており、昔ながらの製法となると、できあがる数は少なくなる上に手間もかかりますが、その分、うまさにこだわった酒づくりを行っています。
豊穣蔵の奥には、酒の味を決めると言われる麹をつくる部屋が。杉に囲まれ厳かな雰囲気がありました。
酒蔵見学を予約の際に試飲を希望すると、暖簾がかわいい「きき酒処」で試飲をすることができます。
左側3本が「豊穣蔵」でつくられたお酒、右側2本が「黎明蔵」でつくられたお酒とのこと。見学をしたあとに飲み比べをすると、感慨深く、いろいろと質問してしまいます。
お気に入りはこの2本。酒蔵見学のお土産で酒粕をいただけました。
「喜平 純米大吟醸 雄町の雫」は、岡山県産雄町米を使っていて、お米の風味が華やかに出ていて上品!
「喜平 純米吟醸 木桶仕込」は、ほんのり木の香りが。まろやかな味わいが美味しく、「燗にするとどんな感じだろう?」と家でやってみたところ、さらに香りが引き立ちました。
どちらもやや辛口です。
今回は杜氏の原さんに案内していただきました。仕込みシーズンは、泊まり込みの日が続くそうです。
酒蔵見学は事前予約制で、平日のみとなります。

③登録有形文化財の酒蔵が現役稼働「丸本酒造」

独自のこだわりからファンが多い、鴨方町竹林寺山のふもとにある「丸本酒造」。1867年創業です。
毎月日程を決めて、酒蔵見学が開催されています。
現役稼働している酒蔵は、なんと国の登録有形文化財に指定されています。酒蔵見学の最中も、建物の雰囲気にうっとりしてしまうほど。
秋から冬にかけては仕込みシーズン真っただ中ということで、蔵人さんたちの作業の様子を見ることができたり、ぷくぷくした仕込み中のタンクを覗かせていただけました。
大切に育てられているのが伝わってきます。
丸本酒造では「酒造りは米がいのち」の信念のもと、酒米の自家栽培を行っています。春には苗づくり、梅雨時期に田植え、秋には稲刈りと、近隣の田んぼで米づくりからこだわっておられます。
平成15年、日本初の酒米特区に認定。今では日本・北米・欧州、3つの有機認証を取得し、オーガニックの日本酒の製造・販売をされています。
試飲タイムで大人気だったのは「竹林かろやかオーガニック(純米吟醸)」(中央)。有機山田錦を使用しており、コクがあって豊かな味わいが「美味しい!」と好評でした。
酒蔵見学は、日程を決めて定員10名までで開催されています。開催3日前までの予約制で、料金は一人600円となります。(文化財保全料として)
次回は、2020年1月25日 (土) 午前の部:9:00~11:00、午後の部:14:00~16:00 とのことです。

④金光教の文化と歴史を感じる「神露酒造」

金光町大谷地区には金光教本部と門前町があり、昔ながらの建物が並ぶ風情あるまちなみが残っています。
門前町の中にある「神露(しんろ)酒造」は、創業1909年。立派な建物の歴史はさらに深いそうです。
酒蔵見学の実施はありませんが、営業日(基本的に月~土。日・祝はお休み)であれば立ち寄ることができ、商品が購入できる店舗になっています。
店内には、金光教のお神酒を中心に、なかなか見ることができないお酒がずらりと並んでいます。
金光教のマーク(やつなみマーク)が入ったカップ酒もあり、思わず手にとってしまいました。
新酒「しぼりたて」は12月15日(日)に販売が開始されたばかりだとか。まろやかな旨口のお酒です。奈良漬も人気のようで、購入してみました。
来店は、信者さんでなくても大歓迎とのことです。金光教の文化を感じに、ぜひ行ってみてください。
そして、金光教の門前町といえば、金光まんじゅう。まち歩きもおすすめです。
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