芸術だけじゃない!犬島の石切り丁場へ行ってみた

犬島は銅の製錬所の遺構を保存・再生した「犬島精錬所美術館」や瀬戸内芸術祭で人気の瀬戸内海に浮かぶ島じゃが、今回は犬島に残る石丁場を岡山城総普請奉行を勤めた角南友行を案内人に宇喜多秀家、戸川秀安がご紹介いたす。
掲載日:2023年05月08日
  • ライター:岡山戦国武将隊
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石の島でもある犬島全景

犬島は岡山市東区にある岡山市唯一の人の住む離島なんじゃ。
銅の銅の製錬所の遺構を保存・再生した「犬島精錬所美術館」や瀬戸内芸術祭などアートで人気の瀬戸内海に浮かぶ周囲3.6kmの小さな島じゃが、今回は犬島に残るもう一つの歴史遺産、石丁場を岡山城総普請奉行を勤めた角南友行を案内人に宇喜多秀家、戸川秀安がご紹介してまいろう。

定期船で10分で到着

岡山市東区にある宝伝港より定期船あけぼの丸に乗船し、約10分で犬島に上陸じゃ。
犬島に船が到着する前から煙突が見え隠れしておったが、近代産業遺産や芸術・アートを求めて多くの観光客の方々はまず、そちらへ向かう。
我々岡山戦国武将隊の面々はそちらには一切目を向けることなく(ホントは相当、後ろ髪を引かれておったが)、江戸時代初期から岡山城や大阪城の石垣に使われた石が切り出された石丁場を目指したのじゃ!

【宝伝港からのアクセス】
あけぼの丸:宝伝⇔犬島(所要時間約10分)
TEL:086-947-0912
片道運賃:大人400円、子ども200円
宝伝発:6:40、8:00、11:00、13:00、13:45、15:15、17:00、18:30
犬島発:6:55、8:20、11:15、13:20、14:00、15:35、17:15、18:45

 

島内に点在する丁場湖

まず目指したのは、石切場の跡である丁場湖。島内にはこのような池が十数個点在している。実はこの丁場湖と呼ばれる池全てが石丁場跡なんじゃ。
どれだけの石をここ犬島から切り出したのか?1つの丁場湖を見ても相当な量じゃなと感じる。良質な石を求めてどんどん下に向かって切出して出来た穴に水が溜まって池になったり、海水が入り込んで出来たものじゃったんじゃな。

矢穴の残る石丁場

次は矢穴痕の残る丁場へ来てみた。矢穴というのは石を切り出したときの作業痕なんじゃが、まず石を割るにはノミと槌で石に長方形の穴を割る方向に一列に空けていく。そのできた穴に楔を打ち込み、少しずつ叩いて割っていくんじゃな。割れたあとには穴の半分が残るということなんじゃ。それを矢穴と呼んでおるんじゃ。
この工法は城に石垣が盛んに使われだした戦国末期頃よりはじまったものなんじゃな。
ここ犬島の石丁場には石を切り出す途中の矢穴が掘られた状態の大きな石がぎょうさん残っておるんじゃ。石切り職人たちの息づかいまで聞こえてきそうじゃ。

大きな良質な石を産した犬島

犬島の石は良質で非常に硬く、現在でも墓石など様々なものに利用されており銘石「犬島石」として 重宝されている。
そして、大材とよばれる大型の石が産するのも特徴で、江戸時代初期の大阪城大改修の時には白羽の矢が当たり 、犬島で採れた多くの石が大阪へ運ばれたんじゃ。
大阪城の石垣に使われている一番大きな石、通称「蛸石」はここ犬島で切り出されて運ばれた石なんじゃ。
その他江戸時代には江戸城の石垣、鶴岡八幡宮の鳥居、上野東照宮・仙台東照宮の鳥居、静岡浅間神社の鳥居、岡山後楽園の庭石、吉備津神社の石鳥居など、明治時代には大阪築港に多くの石材が使われた。昭和以降平成にも全国の記念碑や岸和田城・丸亀城の石垣修理、富山城の石畳整備などに使われているんじゃ。

残念石?

残念石という言葉、あまり聞きなれないが、丁場から切り出されたのに、何かしらの理由で運ばれずに放置された石のことなんじゃ。
せっかく切り出されたのに本来の目的である石垣の石に使われることなく、目的を達成しないまま放置されてしまった残念な石ということなんじゃな。
残念石を探しながら島を歩いてみられよ。いたるところに残っているので直ぐに見つかるはずじゃ。海の中も覗いてみられるとよい。

石にマーク? 定紋石

今度はもう少しな離れたところにある佐賀、鍋島藩の石丁場に来てみた。岡山なのになぜ佐賀?とお思いであろうが、実は大阪城の大改修のとき江戸幕府は全国の大名に手伝い普請を命じたんじゃ。その時岡山池田藩は質の良い犬島の花崗岩を幕府に提供したんじゃな。それで犬島にも鍋島藩が派遣されて石丁場がのこっているんじゃ。
ここには定紋石と呼ばれる石に印が掘られたものが残っている。城郭用語では刻印と呼ばれておる。これはこの石は自分たちの石だぞ!という所有を表すためのものなんじゃ。丁場や、積み出しの港など、築城現場には相当量の石材が集められておるので、そうしとかんとかケンカになるのでな。

犬島自然の家には石切り道具が展示

次は角南殿おすすめのスポット、犬島自然の家に来た。ここは廃校になった旧犬島小・中学校を利用した岡山市の運営する施設なんじゃが、ここでは自然体験活動ができるのじゃ。シーカヤック、ストーンクラフト、海辺の散策、海釣り、バーベキューなど、そして、夜は大きな望遠鏡で天体観測も楽しめる。宿泊施設もあるので家族づれに大変人気の施設なんじゃ。

しかし、我々は石丁場関係の資料が展示されておる木造校舎へ向かった。ここには、石切に実際使った道具が展示されておった。矢穴を掘るときに使った石ノミ・セットウ、矢穴に打ち込んで石を割った鉄製の楔、割った石を成型するときに使ったコヤスケなどが並べられておった。
職員の方へ声をかけると実際に手にとって触ることもできる。見た目より相当重いものじゃった。
板張りの長い廊下には、犬島の歴史が簡単に写真などを使って紹介されておるので木造校舎を見学してみるとよいじゃろう。

【岡山市立犬島自然の家】
所在地:岡山市東区犬島119-1
TEL:086-947-9001
休所日:火曜日(火曜日が祝日の時はその翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)
※7月15日~8月31日の間は無休
団体・個人を問わず、誰でも利用可。
天体観測やシーカヤックなどの体験や宿泊が可能

 

地産地消・おさかなバーガーが人気のお店

丁場を回っていたら腹も減ってきた。途中気になる店を見かけたので、ちと寄って腹ごしらえじゃ。
「カフェスタンドくるり」というお店じゃ。
お店に行くと、何やら変わった風体のお客人が。お話してみると香川県から水上バイクという水の上を走る馬で犬島に遊びにおいでとのこと。たいそう犬島がお気に入りのようで、今回2回目の犬島ということでござった。ここは客席全て屋外なので、お客人同士気軽に会話できる雰囲気もとても良い。
ここのお店で人気なのはハンバーガーらしい。特に人気なのはおさかなバーガー。地元で採れた新鮮な季節の魚を使った一品じゃ。これはお勧めじゃ!

これからの季節はアイスクリーム

くるり殿では氷菓子にも力を入れられているようじゃ。たくさんの種類がそろうておる。アイスにも地元犬島産の材料で各フレーバーアイスを作られているそうじゃ。これからの季節にはピッタリじゃな!

店主さんは犬島に魅せられた移住組

くるり殿はこの犬島に魅せられて大阪より移住してこられたオーナーさんが始めたということで、お店の建物も手作りで自分で建てたということしゃ。素人とは思えん見事な出来栄えなんじゃ。
犬島にある飲食店は美術館の定休日に合わせて店休日としているところが多い中、くるり殿は営業しているのでとても助かる。
最後のお支払いの時、角南殿、何故かわしらの時代の銭で支払おうとしたが店主さんに丁重に断られておった。そのあとPayPayが使えたので良かったがの。
店主さんとお話しながらのんびり過ごせる居心地の良い場所じゃった。

【カフェスタンド くるり】
所在地:岡山市東区犬島265
TEL:050-3185-8025
営業時間:11:00~15:00
定休日:不定休

せっかくなのでアートにも

犬島を一周巡ってきたが帰りの船まで時間もあるし、上陸した時後ろ髪を引かれておったので、アートな気分にも浸ってみた。

海際のベンチ

やはりアートの島。島内を回っていると、いたるところにアート作品が点在している。
歴史遺産でもある石丁場を回りながら現代アートも楽しめる島であった。

お城ファン・歴史ファンの方々にもぜひとも訪れて頂きたい島じゃと思うておる。特に石垣マニアの方にとってはまさにパラダイスじゃな!
犬島は芸術だけじゃない。色々な楽しみ方のできる島じゃった。
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