美作市のサウナ&カフェ「 kobatoisa(コバトイサ)」で“ととのう”体験

近年、全国的に空前のサウナブームが続いています。都市のスパ施設から地方の温泉地まで、「ととのう」体験を求めて多くの人がサウナに足を運ぶようになりました。かつては中高年男性のイメージが強かったサウナも、いまや男女問わず若い世代にも広がり、心と体を整える“リトリート”としての魅力が再認識されています。そんな中、ただ汗を流すだけでなく、自然とつながり、自分自身を見つめ直す時間を提供してくれる特別な場所が岡山県美作市にあります。

岡山県美作市の吉野川沿いに建つ「kobatoisa(コバトイサ)」は、薪サウナとカフェ、そして地域に根ざした新しいライフスタイルの発信拠点です。その佇まいはどこか懐かしく、それでいて現代的な空気感を漂わせています。建物の歴史を辿ると、かつては地元の酒造の販売所だったそう。酒造りが終わり空き店舗になっていたこの場所に新しい命を吹き込んだのが、地元の住宅メーカー「小林工業」です。
掲載日:2025年06月05日
  • ライター:酒井悠
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地域と暮らしの交差点としての挑戦

「kobatoisa」は、美作市の小林工業が新たに取り組むサウナ事業の一環として誕生しました。住宅工業のノウハウを生かし、薪ストーブの販売代理店としての知見を土台に、本格的なフィンランド式薪サウナの製造・販売をスタート。展示場も兼ねてこの地に拠点を設けたのが、プロジェクトの始まりです。

「衣・食・住」の交差点として、地域の人が集まれる場所にしたいという思いがありました。美作市には、地元の人が気軽にランチやお茶を楽しめる場所が少ない。だからこそ、“サウナの後に美味しいご飯”を提供するカフェも同時に立ち上げたのです。

薪のぬくもりと自然の恵みを感じる本格フィンランド式サウナ

「kobatoisa」のサウナは、ガスではなく薪を使ったフィンランド式。薪特有の輻射熱がじんわりと体を温め、ロウリュの蒸気がやわらかく包み込む──そんな静かで力強い熱体験が待っています。

銭湯などにあるサウナに比べて温度を抑えてあり、ロウリュ(サウナストーンにアロマ水を掛けて蒸気を発生させること)をすることを前提に80度前後に設定されています。そのおかげでサウナ内でも息苦しくなく、しっかりと汗がかける心地いいサウナが実現しています。

水風呂は吉野川のほとりというロケーションに合わせてアウトドア感溢れる樽型で、環境に配慮してウイスキーの樽が再利用されています。冷たすぎず、身体に優しい温度設定で、ほのかに漂う樽の香りも楽しめる、五感に寄り添う水風呂です。

川の流れをBGMに、デッキチェアでの外気浴はまさに極上のリトリート。

女性用サウナには、キューゲルと呼ばれる氷玉を使ったアロマロウリュも導入。バーチ(白樺)や金木犀、ユーカリなど、季節によって変化する香りが人気で、特に森林系の香りは女性リピーターの間で好評です。

カフェの2階は畳敷きのくつろぎスペースとなっており、ピラティスや瞑想といった用途にも活用可能。美作の自然を感じながら、心と体を整える時間が流れます。

料金は以下の通りで、初めての方でも安心して利用できるセットや水着などのレンタルも用意されています。

【利用料金】
平日:1人2時間 2,500円/土・日曜日、祝日:1人2時間 3,000円
(タオル・サウナマット・サンダル・イオンウォーター付き)
ポンチョレンタル:300円
水着レンタル:300円
サウナハットレンタル:無料

「整った」後には、体に沁みる地元食材の“サ飯”を

サウナでしっかり汗をかいた後に食べる食事──いわゆる“サ飯”にも、kobatoisaならではのこだわりがあります。すべて手づくりで、地元美作や近隣地域の食材がふんだんに使われています。

例えば、地元の卵と米粉麺を使ったランチメニューの「美作産卵を使った異国香るパッタイ」は、ナンプラーの香りと干しエビの旨みが絡み合う本格派ながら、身体に優しい一品。

さらに、根強いファンを持つのが「なぎビーフのとろとろ牛すじカレー」(1日限定10食!)。とろとろに煮込まれた牛すじの旨みとスパイスの香りが絶妙に溶け合い、しみじみと体に染み渡る一皿です。野菜の甘みと肉のコクが合わさり、サウナ後の空腹をやさしく、そしてしっかりと満たしてくれます。

そして、カフェメニュー名物の「自家製フォカッチャの鯖サンド」は、美作市のお茶の産地・海田のお茶を練り込んだ自家製フォカッチャに、脂ののった鯖、紫キャベツ、自家製ソースを合わせた逸品。どちらも「汗をかいた体が求める塩味と酸味」が絶妙に調和しています。

デザートでは、自家製のチーズケーキやほうじ茶ケーキ、季節のガトーショコラなどを提供。ドリンクも美作の素材にこだわり、お茶やハーブティー、サウナ後の体に染みわたるクラフトドリンクも用意されています。

家族で作ったからこその温もりと創意

「kobatoisa」という名前は、「kotoisa(フィンランド語で“心地よい”)」に、小林工業の“koba”を組み合わせた造語です。その名の通り、空間の随所に“家族の手作り”の温かみが息づいています。

サウナ施設の設計はもちろん、料理やお店のロゴやデザインはお姉さんたちが担当。帽子や備品も手作りで揃えられており、「できるだけ地元で完結したい」「自分たちが心地よいと思えるものを届けたい」という思いが詰まっています。

薪は建築現場の廃材を再利用。環境への配慮と、地域資源の循環を意識した取り組みも、kobatoisaのイノベーションのひとつ。福利厚生として社員スタッフはサウナを無料で利用でき、ランチも社割で楽しめるようになっており、生活と仕事が交差する“小さなコミュニティ”のかたちがここにあります。

リピーターが絶えない地域に根ざした交流拠点へ

平日でも客足は途切れず、利用者は男女半々。カップルや女子会利用も多く、子連れのファミリーも安心して訪れられるよう、カフェスペースは広く、夜は週末限定で“夜カフェ”営業も。ティラミス風の夜パフェと美作のお茶で締めくくる、大人のご褒美時間も人気です。

地域住民向けの「地元割」や、貸切のデイユース、さらには宿泊が可能な「savupirtti stay&sauna」(サボピルティ ステイアンドサウナ)も近くに展開し、週末のリトリートや観光客の滞在拠点としても活用が進んでいます。

夏が近づくと、川沿いには蛍が舞い、夜サウナの幻想的な風景をさらに引き立てます。サウナを通じて、美作エリアの自然と文化が織りなす“豊かな時間”を体感できるのです。

「サウナをもっと知ってほしい」──進化する発信拠点

「サウナってまだまだ知られていないんです」と語るのは、熱波師の資格も持つ小林さん。サウナ文化の普及と地域の活性化を両立させるチャレンジを続けており、今後はワーケーションやリトリート滞在との連携、企業研修やイベント開催なども視野に入れ、kobatoisaは“地域の未来をつくる場所”へと進化していきます。

サウナの後に、自分と向き合う時間。料理で体を癒し、人と語らう時間。そんな贅沢なひとときが、ここにはあります。「ととのう」だけじゃない「つながる」サウナ。あなたもぜひ、美作のkobatoisaで体験してみてはいかがでしょうか。

【kobatoisa cafe&sauna】
所在地:岡山県美作市巨勢2451-1
TEL:090-7181-4107
営業時間:サウナ 10:00~21:00(最終枠19:00~)
     カフェ 11:00~14:30(ランチタイム)、14:30~17:00(カフェタイム)
     ※不定期で夜カフェ営業あり(17:00~21:30/L.O.21:00)
定休日:水曜日
駐車場:あり(店前5台・第1駐車場6台)

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