第一級史料も展示!岡山県立博物館「岡山の戦国時代~赤松氏から宇喜多氏まで~」

岡山の戦国武将「宇喜多を大河ドラマに!」と岡山市が名乗りを上げ、今県内で戦国時代が注目されつつある。しかし、歴史好きな人の間でも「岡山の戦国時代は難しい」「ややこしい」という声をよく聞き及ぶ…。そんな中、岡山県立博物館ではテーマ展として岡山の戦国時代が取り上げられておる。岡山戦国時代を第一級史料を見ながらストーリー仕立てで実感できる展示内容じゃ。この展示会の初日に、岡山戦国武将隊の宇喜多直家、宇喜多秀家、宇喜多家家臣・戸川秀安の3人が見に行って参った。その様子をご紹介いたしましょう。
掲載日:2024年03月04日
  • ライター:岡山戦国武将隊
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テーマ展「岡山の戦国時代~赤松氏から宇喜多氏まで~」 (開催中~2024年4月7日)

戦国時代(15~16世紀)の岡山では、備前の浦上氏や宇喜多氏、 備中の三村氏ら、多くの戦国武将が覇権を争っておった。今回のテーマ展は、岡山県立博物館所蔵、 または寄託されている古文書を展示し、赤松氏と浦上氏・宇喜多氏ら、そして宇喜多氏に滅ぼされた松田氏など、備前、備中、美作の土地で戦国時代を生き抜いていった人々について紹介したもので、岡山の戦国時代がようわかる仕組みになっておる。

1.岡山の戦国時代のスタートは?/「足利義教御判御教書」

この「足利義教御判御教書(あしかがよしのりごはんみきょうしょ)」(永享12(1440)年3月12日)には、第6代室町幕府将軍の足利義教が、赤松氏の一族に対して領地を与えることが書かれておる。しかし、足利義教は翌年の嘉吉元 (1441)年に、播磨・備前・美作の守護だった赤松満祐によって暗殺されたのじゃ。嘉吉の乱と呼ばれ、将軍の権威が失墜するきっかけにもなった事件で、これを岡山の戦国時代のスタートとして位置付けている。赤松氏はその後一時期没落し、山名氏に取って代わられたのじゃ。

2.赤松氏が返り咲き、再興 /「丹生屋正頼寄進状」

赤松の再興を目指した赤松氏の遺臣たちは、奈良にあった後南朝の本拠を襲い、玉璽(ぎょくじ)を奪還することに成功(=長禄の変)。その結果、赤松氏の再興に結びついたのじゃ。「丹生屋正頼寄進状(にぶやまさよりきしんじょう)」には、その時戦死した一族のために和気の安養寺に、田を寄進したことが書かれておる。
応仁の乱では細川氏の東軍についたため、山名氏を追い払い返り咲いたのじゃ。他に「赤松政則書状(あかまつまさのりしょじょう)」も展示されており、中央の室町幕府と結びつきながら勢力を拡大、継続していったことがわかるのじゃ。

3.下剋上の始まり・浦上氏の台頭と分裂/「浦上国秀書状」「延原景能等連署状」

戦国時代になると守護代であった浦上村宗(むらむね)が赤松政則の子供を殺して岡山の支配者として取って代わる。当主の村宗が戦闘で戦死したため、浦上氏は浦上政宗(まさむね)を当主としたが、幼少だったため浦上国秀(くにひで)が当主代行を務めた。「浦上国秀書状(うらかみくにひでしょじょう)」は片上(現在の備前市片上)の年寄らに100疋を納めるように命令した内容のものじゃ。
政宗の弟、浦上宗景(むねかげ)は独立する勢力となり、現在の和気町に天神山城を築き、備前・美作に勢力を広げ、兄・政宗、備中の三村氏、安芸に本拠を置く毛利氏らと対立していた。連判状「延原景能等連署状(のぶはらかげよしなどれんしょじょう)」は宗景を支えた家臣たちによるもの。
他に「浦上宗景判物(うらかみむねかげはんもつ)」も展示してあった。このあと宇喜多直家は宗景に出仕し、勢力を蓄えていくことになる。

4.宇喜多氏の砥石城が落城/「宇喜多能家畠地沽券 」

「沽券」とは土地等を売り渡したことを証明するもので、「宇喜多能家畠地沽券(うきたよしいえはたちこけん) 」は、金岡東庄の島を売り渡すことを書いたものじゃ。
宇喜多直家のおじいさんである宇喜多能家は、砥石城で島村氏に奇襲され命を落としてしまう。この時逃れた宇喜多直家は、これより不遇の時代を過ごすのである。宇喜多能家については、よくわかっていないこともあるのじゃが、その姿は、岡山県立博物館所蔵の宇喜多能家像(国重文)によって、今も見ることができる。

5.勢力を蓄える宇喜多直家/「宇喜多直家書状」

「宇喜多直家書状(うきたなおいえしょじょう)」は写しも含めて2点展示されておった。永禄9(1566)年5月15日付けのものには、浦上宗景のもと、備中・三村家親と激戦を繰り広げていた5月10日に、現在の岡山市中区竹田付近で戦闘が行われ、馬場重介が槍を使って一人を倒し、さらには撤退の際に動揺した味方を見て戻ってきたとある。とてもリアルで戦場の臨場感の伝わってくる書状じゃ。

6.忘れてはならぬ敗者の書状/「松田元藤折紙」

松田氏は姻戚関係を結んでいた宇喜多直家に滅ぼされた。「松田元藤折紙(まつだもとふじおりがみ)」はその約80年前のもので、差出人の松田元藤は宇喜多能家とも戦ったと伝わっておる。本拠地の金川城の別名を、公家の三条西実隆(さんじょうにしさねたか/1455~1537)からの書にちなみ、「玉松城(たままつじょう)」と命名した御仁じゃ。敗者とはいえ、公家と交わるなど武将といえども文化人としても在地を守っていたお人だったのじゃろう。

7.いよいよ毛利との合戦に!/「三村親宣書状」

八浜合戦(はちはまかっせん)と呼ばれる宇喜多氏と毛利氏との戦闘で、三村親成の子・親宣(ちかのぶ)が、山下牛助に出したものが「三村親宣書状(みむらちかのぶしょじょう)」。「無比類忠節(ひるいなきちゅうせつ)」と評価され、恩賞を約束されている内容じゃ。この戦いで我が宇喜多軍は、総大将の宇喜多与太郎元家(もといえ)様を失ってしもうたのじゃ。

岡山の戦国時代を語るに欠かせない「備前軍記」

江戸時代に岡山藩士・土肥経平(どいつねひら)がまとめた軍記物語であるが、彼は藩内だけでなく各地に残った資料・伝承をもとにこの「備前軍記」を作ったとされる。正確でない部分もあるが、今回展示されている永禄9年の宇喜多直家の書状の写しを見ており、実際に本文にもそのまま引用しているのじゃ。どうせ江戸時代のつくり話の軍記ものだと思って侮るなかれ。岡山の戦国時代を知る貴重な史料となっておるのじゃ。

岡山の戦国時代がようわかった!

今回のテーマ展はここで終わりであったが、岡山の戦国時代の始まりから生々しい現物の書状などを見ながらなので、ややこしいと思っていた岡山の戦国時代がわかってきた気がした。
この後、皆さんもよう知っとる岡山県を舞台にした毛利と信長の戦いは?岡山城の築城は?と思うたが、これはまた次回の展示に期待することにいたそう。

掛け軸や屏風なども展示

その他にも寄託された掛け軸や屏風などが展示されておる。これらは江戸時代に作られたものが中心ではあるが、とても貴重なもの。戸川秀安殿は屏風絵の中に自分の子孫の手紙が貼り付けられてあるのを発見し、びっくりしておったわ。

学芸員による展示解説もある

学芸員さんによる展示解説は、ぜひ参加してみたいものじゃ!テーマ展示用のレジュメを見ながらでもようわかったが、学芸員さんがついて解説してくれるとなると、もっとわかるじゃろう。あと2回ほど予定されているので記しておこう。
第2回:2024年3月16日(土)14:00~
第3回:2024年4月6日(土)14:00~
※各日とも予約不要

学芸課長による気まぐれ講座も開催予定

今回のテーマ展に関連して、学芸課長による気まぐれ講座「戦国時代の武士の生き方を知ろう」 を開催されるということじゃ。江戸時代の軍記物の一場面を読んで、戦国時代の武士の生き方・考え方について、軽〜い感じで説明してくれるそうじゃ。これも面白そうじゃ。写真は秀吉本陣跡より望む備中高松城。

【講座1】
日時:2024年3月20日(水・祝)14:00~
内容:備中高松城の戦い(1582年5月)の様子
【講座2】
日時:2024年3月24日(日)14:00~
内容:八浜合戦(1582年2月)の様子
※場所は共に岡山県立博物館2階ホール。参加費無料(ただし入館料が必要)。事前申し込みや予約は不要。開催時刻になったら開催場所にお越しくださればよいとのことじゃ。

えっ!博物館にこんな遊び場が?

博物館といえばちょっとマニアックで少し堅苦しいところって思っておられる方もいらっしゃると思うが、とんでもない。こんなに面白い場所もあるんじゃ。
入口を入ってすぐ右側に「わくわく歴史体験ゾーン」がある。ここには割れた銅鏡や備前焼、そして、大型の円筒型埴輪をくっつけて完成するパズルがあった。親子3代で、ああでもないこうでもないと夢中になっておったわ。
大人は思わず「懐かしいっ!」って思ってしまい、子供や若い世代の人は、やったこともない遊びに興味深々の昔遊びができるんじゃ。直家殿はめんこに夢中になっておったわ。
 
けん玉、ヨーヨー、お手玉、いろはかるた、あやとり、めんこ、トントンずもう、だるま落とし、百人一首、すごろく、とラインナップも多い。すごろくは時間も忘れるくらい盛り上がってしもうた。

おしまいに

今回のテーマ展「岡山の戦国時代~赤松氏から宇喜多氏まで~」は、備前・美作・備中での戦国時代が始まった頃から、宇喜多氏が備前、美作の覇者となるまでのもので、その後の様子もさらに知りたいと思うようになった。気になるお方は岡山県立博物館のホームページをチェックしてくだされ。近々よいニュースが飛び込んで来るやもしれぬでな!
それでは、第一級史料を見ながら岡山の戦国時代を楽しんでくだされ。 

【岡山県立博物館】
所在地:岡山県岡山市北区後楽園1-5
TEL:086-272-1149
開館時間:4月~9月9:00~18:00、10月~3月9:30~17:00
休館日:月曜日(月曜日が祝日または振替休日の時は翌日)、年末(12月28日~31日)、展示替期間中
入館料:大人250円、65歳以上120円、高校生以下無料
※特別展示期間中は別途料金
※学校教育活動の一環で入館する小中高生は無料(特別展含む)
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