予備知識:「潮待ち」とは
上の写真は2025年5月に、日韓国交正常化60周年を記念して、韓国の釜山から大阪万博へやってきた「朝鮮通信使」の復元船が牛窓に寄港した際のものです。
本蓮寺
「朝鮮通信使」は朝鮮王朝が江戸幕府へ派遣した外交使節団で、牛窓には計11回寄港し「本蓮寺」などに宿泊しました。2025年の来航は実に261年ぶりの出来事となったそうです。境内には室町時代から江戸時代にかけて造営された本堂や三重塔などが当時の姿のまま残されています。
燈籠堂
唐琴の瀬戸
ともづな石(纜石)
「神功皇后」は懐妊の身で九州の熊襲(くまそ)や朝鮮半島の新羅(しらぎ)を征服し、その帰途に「応神天皇」を産んだという英傑です。架空の人物と考えられてきましたが、実在したとすれば4世紀後半(古墳時代)の人物となります。
「神功皇后」が遠征のため船で九州へ向かう途中、この地で牛鬼という怪物に襲われた際に、住吉明神が現れて牛鬼を投げ倒して退治した「牛転び(うしまろび)」が転訛したのが「牛窓」の由来とされています。
五香宮(ごこうぐう)
※勧請(かんじょう):神の分霊を他の場所に移して祀ること
牛窓神社
ちなみにこれは余談ですが、私の記憶が確かなら牛窓神社の前にある海の家は、少なくとも30年以上前から変わらず営業されている気がします。ここで海を眺めながら食べるかき氷は最高です♪
【万葉集 詠み人知らず】
牛窓の 波の潮騒 島響み(とよみ)
寄さえし君に 逢わずかもあらん
[おおよその意味]
牛窓の島々に高く響く潮騒のように大きな浮名が立ってしまったので、思いを寄せるあなたとは会えないままとなるのでしょうか。
[個人的解説]
先を急ぐ旅人が「潮待ち」となって、何もすることがない、何もできないという状況になると、気持ちばかりが焦って、あれこれと想いを巡らせているうちに不安になってしまうのだと思います。「唐琴の瀬戸」の高い潮騒が、その想いに拍車をかけて生まれた歌なのかもしれません。
今回ご紹介した場所は比較的近いエリアにあるので、半日あれば徒歩でも見てまわることができると思います。無理をせず、各所で休憩しながら散策を楽しんでくださいね。
まとめ
ちなみに、架空の人物とされてきた「神功皇后」ですが、近年の新たな発見や研究の進展によって「古事記」や「日本書紀」の記述が史実に基づいたものである可能性が出てきています。もしかすると実在の人物か、あるいはモデルとなった人物が存在するのかもしれない…。そんな歴史のロマンを感じながら、今回ご紹介した場所を訪れてみるとさらに楽しめると思います。