知る人ぞ知る名所「頼久寺庭園」は静寂の絶景!東京ミッドタウンのモチーフも(高梁市)

こんにちは!月子です。岡山県高梁市に、静寂に包まれた美しい日本庭園があるのをご存知ですか?丸窓に切り取られた景色は、まさに心奪われる美しさです。今回ご紹介する「頼久寺」では、心落ち着く空間の中で、ゆったりとした贅沢な時間を過ごせます。実はこの庭園、東京ミッドタウンのモチーフにもなったと言われているんですよ。この記事では「頼久寺」の見どころや拝観料、アクセス方法などをご紹介します。
掲載日:2025年06月09日
  • ライター:月子
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天柱山 頼久寺とは

天柱山安国頼久寺は、岡山県高梁市にある臨済宗永源寺派のお寺です。詳しい創建時期は不明ですが、1339年に足利尊氏が再興し、備中の安国寺となりました。その後、1504年には備中松山城主の上野頼久公が寺の景観を一新。頼久公が逝去された後、その名にちなんで頼久寺と改称されました。そして、この頼久寺庭園を手がけたのが、江戸時代初期の大名であり、茶道・建築・築庭の巨匠として知られる小堀遠州(こぼりえんしゅう)です。1974年には国の名勝庭園に指定されました。

お城のような入口

頼久寺の入口は、石段を登り切ると目の前に壁があり、すぐには境内へ入れない構造になっています。これはまるでお城の「虎口(こぐち)」のよう。なぜこのような造りになっているのか不思議に感じていましたが、ご住職のお話によると、かつて備中松山城の出城としての役割も果たしていたのだそうです。
高梁市は、現存天守を持つ備中松山城のお膝元であり、城作りの技術に長けた地域です。頼久寺のこの特徴的な入口も、そうした地域の歴史や城郭築造の技術が影響しているようです。ご住職のお話に、頼久寺が持つ奥深い歴史を垣間見ることができました。

庭園全景

それでは、庭園をご紹介していきましょう。
少し薄暗い屋内から縁側へ抜けると、目の前にパァっと開ける明るく、そして得も言われぬ美しい光景が広がります。この劇的な体験は、ぜひ実際に足を運んで肌で感じていただきたいです。
実は、頼久寺の建物は天保年間に一度焼失しています。しかし、この美しい庭園は奇跡的に焼失を免れました。なんと、庭園の正確な図面などは残されておらず、代々、伝承によって美しい刈り込みの形が保たれてきたそうです。現在は昭和に撮影された写真をもとに、その景観が維持されています。

白砂の波紋

頼久寺庭園は蓬莱式枯山水庭園です。枯山水とは、水を使わずに水景を表現する庭園のこと。頼久寺庭園では、白砂で水の波紋が見事に描かれていました。この美しい模様を崩さないため、お庭には降りず縁側から美しい光景をお楽しみください。

不老不死の願いを表す亀島

ツツジの刈り込みの前にあるのが亀島です。真ん中の大きな岩が甲羅、右側の小さな岩が頭を表しています。蓬莱式庭園は不老不死を願う思想に基づいて造られているため、このように長寿の象徴である亀が表現されているんですね。

鶴島は東京ミッドタウンのモチーフ

こちらの鶴島は、高さ約150cmの板状の岩とサツキで構成されています。手前にも石を配置することで、奥行きが感じられるようになっています。実はこの鶴島、東京ミッドタウンのモチーフの一つと言われているんですよ!空間全体の基本計画(マスタープラン)を手がけた建築家デイヴィッド・チャイルズ氏は、頼久寺とニューヨークのロックフェラーセンターからデザインのインスピレーションを得て、東京ミッドタウンの構造を創り上げたそうです。
このお話を伺い、驚くとともに、頼久寺庭園が日本国内にとどまらず、世界をも魅了する場所なのだと改めて感じました。

サツキで表す見事な青海波

こちらは海の波を表した「青海波」と呼ばれるサツキの刈り込みです。幾重にも押し寄せる波の様子が見事に表現されており、この時期はピンクや赤の鮮やかな花が彩りを添えます。
なお、青海波は幾何学模様の名前としても知られ、穏やかな波がどこまでも続く様子を表した縁起の良い文様です。「永遠に穏やかな生活が続くように」という願いが込められています。不老不死を願う蓬莱式庭園にぴったりの意匠ですね。

サツキのお手入れのご苦労

サツキのお手入れに関して、近年の自然環境の変化にご苦労されているそうです。近年の夏は、以前とは比較にならないほどの猛暑となり、春を楽しむ間もなく夏のような暑さが訪れる年が続いています。かと思えば、今年は5月に入って急に冷え込むなど、以前では考えられなかったような気候の変動が起きています。このような環境の変化が、サツキの管理において非常に難しい点だとご住職はおっしゃっていました。また、歴史あるお寺の庭園であるため、老木となったサツキは世代交代をさせることもあるそうです。

丸窓からの風景

この絶景、ぜひご覧ください!
ああ、これが憧れの丸窓からの景色。壁がまるでフレームのようで、絵画のよう。その美しさにはただただ心を奪われ、言葉を失って見惚れてしまいました。
 

サツキの見頃の時期

例年のサツキの見頃はだいたい5月末までです。
ちなみに、今年は5月に冷え込んだこともあり、少し遅れて見頃を迎えました。残念ながら、6月初旬の雨と翌日の強い日差しにより今は見頃を終えています。

四季折々の魅力

頼久寺といえばサツキが有名ですが、実は四季折々でさまざまな魅力があります。少し前まではツツジが庭を華やかに彩り、私が訪れた際はサツキが見頃を終えつつも、まだ可憐な花を楽しむことができました。そして、6月中旬からはクチナシの白い花が庭園に爽やかな彩りを添えてくれます。また、現在モミジは赤ワインのような深い色合いをしていますが、これから緑へと変わり、秋には再び鮮やかな紅葉へと姿を変えます。こうして木々や花々が、庭園にさまざまな表情をもたらしてくれるのです。

縁側での贅沢なひととき

縁側に座って美しい庭園を眺めていると、穏やかで幸せな気持ちになっていきます。静寂の中、ウグイスの「ホーホケキョ」という鳴き声が聞こえてきました。※お庭には降りないでくださいね

裏庭からはカエルの鳴き声

書院でくつろいでいると、定期的に聞こえる「ゲコゲコゲコ…」。書院の右手がメインの庭園、左手には池のある庭園があります。その池からカエルの鳴き声が聞こえてきていたんです。姿は見えませんでしたが、なんとも微笑ましい空間でした。

御朱印

参拝の証として御朱印をいただけます。お志として500円をお納めします。

ご住職からのお言葉

今回の取材では、ご住職の生島様が庭園の様々な魅力を教えてくださいました。「いろんな日本庭園があるので、ぜひ日本庭園を好きになってください」と仰っていました。この頼久寺庭園を訪ねたら、その魅力に触れて日本庭園を好きになること間違いなしです。

拝観時間・拝観料

庭園拝観時間:9:00~17:00
定休日:年中無休
拝観料:大人400円、中高生200円、小学生以下無料、障がい手帳をお持ちの方150円(介助者1名同額)

アクセス情報

所在地:岡山県高梁市頼久寺町18
交通アクセス(車):岡山自動車道賀陽ICから約20分
交通アクセス(公共):JR備中高梁駅から徒歩約15分
駐車場:普通車10台

頼久寺も見える!ループ橋展望台

頼久寺からの帰り道、ループ橋展望台に寄ってみました。ここは「高梁観光百選 大久保峠からの眺望」として選ばれており、映画「バッテリー」のロケ地でもあります。高梁市の町が一望でき、右の方に頼久寺も見えます。
所在地:岡山県高梁市上谷町

おわりに

「頼久寺」は、俗世から抜け出したような別格の美しさでした。その静かで落ち着いた空間は、まさに「知る人ぞ知る名所」。心ゆくまで静寂の中でその美しさを堪能できた感動は忘れられません。正直なところ、「この特別な場所は秘密にしておきたい!」という気持ちも少しありましたが、同時に「岡山にはこんなにも素晴らしい場所があるんだ」という感動を、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思い、ご紹介させていただきました。ぜひ、足を運んでみてくださいね!
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