【前編】レンタサイクルで岡山のサイクリングコース「備中ぐるり歴史探訪ルート」を走破してみた(笠岡市~井原市)

岡山県内に沢山あるサイクリングコース。それぞれに魅力あるコースですが、今回実際にレンタサイクルを借りて走った様子を前・後編に分けて紹介します。体験したのは「備中ぐるり歴史探訪ルート」。まずは笠岡市をスタートし、井原市方面へ向かいます。
掲載日:2025年05月26日
  • ライター:大岩主弥
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ハレいろ・サイクリングOKAYAMA

岡山に幾つかあるサイクリングコース。岡山県が推奨しているコースを紹介している「ハレいろ・サイクリングOKAYAMA」というサイトがあります。
ここで紹介されているサイクリングコースはどれも魅力的。車でやってきて、スポーツサイクルに乗り換えてコースを走る方が多いようですが、今回は誰でも楽しめるよう近場のレンタサイクルを駆使してサイクリングコースを堪能してみようと思います。

備中ぐるり歴史探訪ルート

「ハレいろ・サイクリング OKAYAMA」で紹介されているサイクリングコースの中から、今回は「備中ぐるり歴史探訪ルート」を走ってみました。名前の通り“備中”を走り抜けるコースです。岡山県西部に位置し、瀬戸内海と中国山地に挟まれた備中地域。笠岡市、矢掛町、井原市、倉敷市、浅口市、里庄町と多くの街を走り抜けるこのルートでは、備中の多彩な風景が楽しめます。走行距離は108㎞。スポーツサイクルでの平均所要時間は約3時間30分。山あり、海あり、歴史あり。さて、どんな光景に会えるでしょうか。
コースには要所要所で写真のような道路表示があるので、ガイドにしながら走ることができます。

レンタサイクルの紹介

利用したのは、JR笠岡駅改札口を出て左手にある笠岡市観光協会(9:00~17:00)のレンタサイクル(自転車返却は16:30まで)。普通自転車700円(3台)、電動アシスト付き自転車1,500円(2台)があります。

今回は山を走るルートになるので電動アシスト付き自転車をお借りしました。街乗りで一日乗れるくらいの電池量はあるとの事でしたが、山を走るときは電池量を多めに消費するため、節約しながら使ってくださいとのこと。実際乗ってみると通常の自転車と違い、漕ぎ出しにかなりのアシストをしてくれるので、山でもスイスイ。これは凄い。言われた通り山での電池消費量は多かったので、長距離乗る場合は平地では電源オフが良いように思いました。

コースの見どころ①木山捷平生家

「木山捷平生家」はJR笠岡駅前から約30分。矢掛町に向かう途中にあります。木山捷平さんは、現在の笠岡市山口に生まれ、昭和期に小説や詩で知られた作家。笠岡市立図書館には木山捷平文学コーナーもあり、地元の方々に親しまれています。

コースの見どころ②旧矢掛本陣石井家住宅

JR笠岡駅から約1時間のサイクリングで到着した矢掛宿。風情ある街並みが保存されていて、気分は江戸時代。街並みを見ているだけでも楽しめますが、古い建物の中には営業しているお店もありますので食事やショッピングもお楽しみいただけます。江戸時代の旧本陣と旧脇本陣が揃って残る宿場町は全国でも珍しいそうですよ。
中でもこの街の歴史的シンボルと言われているのが「旧矢掛本陣石井家住宅」。山陽道第18番目の宿場町矢掛の本陣として、国の重要文化財に指定されています。
本陣は参勤交代で江戸と国もとを行き来する大名や公家、幕府役人の宿として作られているため、建物は当時の建築の中でも特に力を入れて作られているものが多いそうです。江戸時代に作られた貴重な建物で、当時ここを訪れた人たちの息吹を感じてみてください。

コースの見どころ③中世夢が原

矢掛を離れ、隣の井原市の山道をひた走ること約1時間。基本的にはずっと上り坂なので、自転車の電動アシストはオンで。電動アシストがなかったら相当大変な行程になりそうな上り坂を行き、見えてきたのは井原市の北部・美星町にある「中世夢が原」。鎌倉から室町時代にかけての村の様子を時代考証を重ね再現したテーマパークです。一歩踏み込むと映画さながらの世界観にワクワクすること間違いなしです。そんな場所なだけに映画やドラマのロケ地にもなっています。NHK大河ドラマ「武蔵」や映画「あずみ2」など、ここでしか映し出せない映像が作られています。ロケ地めぐりが好きな方は是非。

コースの見どころ④神楽民俗伝承館

「中世夢が原」の入場門の前には「神楽民俗伝承館」があります。備中地方を代表する民俗芸能として、全国的にもその名を知られている「備中神楽」に関する資料(衣裳・神楽面)を展示している施設です。 使い込まれた沢山の神楽面や衣装が見られので歴史風俗を垣間見るのに大変すばらしい場所でした。無料でどなたでも入れるので、「中世夢が原」に訪れた際にはこちらもおすすめします。
備中神楽について「中世夢が原」園長の三村さんにお話を聞きました。

「備中地方では、古く(中世の頃)から神事を中心とした神楽が行われていました。しかし、それは人々の娯楽的な欲求を満たすものではありませんでした。そこで、江戸時代の後期に国学を学んでいた神官・西林国橋(1764~1828)が、「古事記」や「日本書紀」の中から『天の岩戸開き』『オオクニヌシのミコトの国譲り』と『スサノオのミコトの大蛇退治』といった三編の神話を芸能性の高い神能、神代神楽を再編成して伝わってきたのが備中神楽です。日本の神話を知って神楽を観ると、よりその面白さがわかります。「中世夢が原」ではゴールデンウィークのイベントとして、毎年5月3日と5日に備中神楽を行います。他にも9月の第2土曜日に「中世夢が原大神楽」という本格的な神楽イベントも行っています」とのこと。

「神楽民俗伝承館」には神様のお面が沢山飾られていました。確かに知ってから神楽を見るとより楽しめそうです。本格的な「備中神楽」が見られる機会は年に3日。見逃せないですね!

休憩スポット「星の郷青空市」

「中世夢が原」から上り坂をもうひと踏ん張り。約15分走れば「星の郷青空市」に到着です。井原市美星町内でとれた新鮮な野菜や加工品など、ほとんどの品が市価より安く販売されているという青空市。私は平日の昼に訪れましたが平日にもかかわらず多くのお客様で賑わっていました。同じ敷地内に食事処も幾つか。美星バーガーが食べられるお店や地元の牧場が運営するジェラート屋など充実のラインナップ。まだまだ旅は続くのでここでひと休み。
美味しそうなものが多すぎて目移りしましたが、今回私は「手打ちそば青空」さんへ。
「川上食堂乃中華そば」をチョイス。美星町の懐石料理店「喜楽別亭」が、1950年代に店主のおじいさまが創業した「川上食堂」で愛された味を復刻。それを提供しているそうです。蕎麦屋で手打ちそばを食べないのかと突っ込みを受けそうですが、岡山と言えば「中華そば」。個人的に見かけたら食べちゃうくらい好きなんです。「川上食堂乃中華そば」は800円。上品で素朴な味わいで美味しかったです。

【手打ちそば青空】
所在地:岡山県井原市美星町西水砂45-1
TEL:086-687-3757
営業時間:11:00 ~ 14:00
定休日:火曜日
駐車場:あり(星の郷青空市の駐車場利用)

白糸の滝を越え次の目的地へ

上り坂続きの難所はほぼ終わり、次の目的地「鬼ヶ嶽」に向かいます。向かう道の途中には「白糸の滝」もあり、名前の通り細く美しく落ちる滝も見られます。車だと通り過ぎてしまうかも知れませんし、こうした場所をじっくり見られるのはサイクリングの醍醐味ですね。

コースの見どころ⑤「鬼ヶ嶽」

歴史を巡るサイクリング旅。時代はさらに遡り古代へ。ここ「鬼ヶ嶽」には以前温泉があり、温羅(うら)が温泉に浸り、吉備津彦命(きびつひこのみこと)から受けた傷を治したという逸話から名付けられた地名だそうです。吉備津彦命=桃太郎、温羅=鬼と言われています。岡山県には桃太郎伝説について面白い話や関わる遺跡が沢山ありますので、ご興味ある方は桃太郎伝説と古墳時代を辿れる「吉備路自転車道ルート」も是非。
鬼ヶ嶽では鬼があちこちで迎えてくれました。
「鬼ヶ岳ダム」はダム湖も雄大で見ごたえたっぷりです。鬼ヶ嶽は紅葉の時期が大変きれいだそうです。是非その時期にも足を運んでみてください。
 

まとめ

「備中ぐるり歴史探訪ルート」のサイクリングはまだまだ続きますが、今回はここまで。ここまでの行程で休憩立ち寄り含め約4時間。既にスポーツサイクルでの平均所要時間は超えていますが、どうしても立ち寄りを楽しむと時間かかってしまいますね。立ち寄りもサイクリングの楽しみポイントですから焦らずゆっくりじっくり行きましょう!
次回は【後編】として倉敷市からゴールの笠岡市まで走り抜けます。歴史と絶景の旅。次回もお楽しみに。
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