【シリーズ】How to make 備前焼?vol.4-窯詰め編【日本遺産】

岡山随一の焼き物、「備前焼」の知られざるつくり方を、備前焼作家のツマである藤田がお伝えするシリーズ。今回はクライマックスに向けて、窯の中に作品を並べる作業「窯詰め」をお届けします。
掲載日:2017年10月10日
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作品を窯に詰めるだけ?…実は重労働&苦心の連続!

ろくろなどで形成した作品は、乾燥させて焼成するのにベストな状態にしておきます。そして窯焚きの日が迫ると、窯の中にどんどん作品を入れていくのです。ただ並べるだけ?いやいや、それが大変なんです。時には1000以上の作品を詰めなきゃいけませんし、どこにどう作品を置くかで、全然仕上がりの模様が違うんですから。
というわけで、窯詰めのテクニックあれこれをご紹介します。

必要なもの①「銀砂」

こちらは「銀砂(ぎんしゃ)」と呼ばれる砂。陶芸用品店などで売られています。作品を並べる時はこの銀砂を敷き、その上に必ず置くのがモットー。そうしないと、作品が置いた場所にくっついてしますからです。

必要なもの②「棚板・棚の脚」

写真の右側にある四角柱のブロックが棚の脚です。これと棚板を組み合わせて棚を作り、銀砂を敷き詰め、作品を詰めるスペースを作るのです。

棚が出来上がるとこんな感じ

棚を作り、作品を並べ、棚を作り、作品を並べ…というのを、狭い窯の中で繰り返します。すると、窯の中はまるで古代遺跡のような様相に。

写真の場所はこんなに狭い

これが、先程の写真で紹介した棚がある窯の入り口です。夫がしゃがんでいるのが分かりますでしょうか?これくらい体をかがめないと入れないほどの狭い空間なのです。正直、ここで棚を作り作品を詰めて…を繰り返していると、相当腰にキます!

必要なもの③「藁(わら)」

田んぼで作業したことのある人はご存知ですよね。稲の茎を乾燥させた、藁(わら)です。実はこれが、備前焼にとって非常に重要な役割を果たしてくれるんです。その使い方を見ていきましょう。

藁は、作品に模様をつけるのに大活躍

備前焼で、こういう赤い線のような模様を見たことがありませんか?これは、藁を作品に巻きつけるなどして焼成して生まれる「緋襷(ひだすき)」と呼ばれる模様なんです。藁と備前の土だから生まれる、赤い化学反応…。その華やかで美しい模様は、ファンが多いのもうなずけます。

「緋襷」の模様が欲しい時は…

じゃあどうやってくっつけるのか。お皿なら、緋襷が欲しいところに藁を置くだけでいいんです。シンプルに短い線が必要なら、↑の写真のように藁をハサミで切っておくといいですね。
もっと作品全体に緋襷が欲しい!という場合はこちら。藁を何本かこよって縄のようにし、作品にぐるぐると巻きつけています。豪快に見えますが、焼き上がると藁は燃えてなくなり、美しい緋色の模様だけが残るのですから不思議です。

④「ボタ」の模様の作り方

また、備前焼には丸く穴が空いたような模様の器が多くあるのも特徴です。一体あの丸い模様はどうやって出しているのか?の答えがこちら。専用の粘土で円形の煎餅のような「ボタ」を作り、作品に触れさせます。すると焼き上がったらその部分には色がつかないというわけです。

燃えずに便利!⑤「セラミックシート」

「セラミックシート」という磁器の素材でできたハサミで切れるシートも販売されています。こちらを使うと、広範囲に、はっきりとした色の抜けを作ることができます。

詰め終わりの様子は…?

さあ、これらのテクニックを駆使しながら、さらに窯にある4部屋のどこに入れるのか、どんな景色がほしいのかを考えて全ての作品を詰めたら完了です。一番前の部屋(ウドと言います)はどうなっているのでしょうか?
おおっ!奥には棚とたくさんのカップ類、そして手前には壷や花入れなど大物が。ライティングも相まって、迫力満点です。
ちなみにこのウドでは直接薪を焚き続けるので、最も多く灰が作品に降りかかり、多彩な景色が生まれるんです。だから多くの作家さんは、ウドに気合いを入れた作品を詰めるんですって。

次回「窯焚き」が待ち遠しい!

全ての入り口をレンガと粘土できっちり塞いで準備完了。次回はいよいよ、炎との戦い、「窯焚き」です。
毎回見学希望者の多い工程。しっかり撮影しておりますので楽しみにお待ちください。
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