人間国宝も無形文化財も…!お宝だらけの備前焼ミュージアムは陶芸の聖地だった

約1000年もの歴史をもつ備前焼。作家から5人の人間国宝が輩出されるなど、職人たちの技術の高さもお墨付きの、日本きっての名焼物なのです。その中でも選りすぐりの名作をじっくり眺めるなら、備前焼ミュージアムが一番。普段は撮影NGな現場を、取材で特別にレポートさせてもらいました!「館内がどうなってるのか気になってたの」というアナタ、必見です。
掲載日:2018年03月01日
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伊部駅前にそびえ立つ凛々しいビル

国道2号線沿いにキリッとそびえ立つこのビル。約1000年も前から作られてきた備前焼の歴史が学べて、人間国宝の作品や今も活躍する作家の作品などがギュッと集まった美術館なのです。
その豪華なラインナップは、備前焼ファンはもちろん、陶芸や器好きならゼッタイに見るべき、まさに聖地。
エレベーターとスロープがあり、ベビーカーでも訪問しやすいですよ。

4階から見るナイスビュー

まずはエレベーターで景観の美しい4階へ。
窓から駅裏を見れば、茶色い丘が。こちらは国指定史跡の「伊部南大窯跡」といって、室町時代にできた大きな備前焼の窯の跡地なのです。この距離にしてこのデカさ。さすが国内最大規模の窯!
いつもと違った視点から眺める伊部の街はとても新鮮です。

「物故作家代表作品」エリアから拝見

物故作家を中心に、現在もお元気な作家さんによる作品も展示しているのが4階。主に、伝統工芸展や各種の公募展で活躍した備前焼作家の幅広い作品が見られます。 「これぞ備前焼!」な伝統を守りながらどこかモダンな作品、トラや鯉など本物そっくりに作られた細工物…。個性にあふれた作品が一堂に
まり、バラエティの豊富さにワクワクします。
こちらは、「焼締陶公募展」の入賞作品。人の上半身ほどもある大作に、思わず目を細めるほど小さく細かなアルファベットがぎっしりと配置されています。釉薬を使わず焼き上げられた原始的なつくりと、作家のイマドキな感性のギャップが楽しい!

5人の人間国宝作品にうっとり

備前焼といえば、作家の中から5人もの人間国宝を輩出していることで有名。
それらの人間国宝、全員の作品が一度に見れてしまうフロアが、3階の「人間国宝館」です。
金重陶陽、藤原啓、山本陶秀、藤原雄、伊勢崎淳。一度は衰退しかけた備前焼を再興させてきたセンスと高い技術力にうっとり…。

金重家の超絶技巧に歓声!

卓越した形成技術で自由自在に形が造り出され、熟練した焼成技術でヒダスキやボタといった味わい深い模様が生み出されていることが見てとれます。
また、写真のニワトリは金重陶陽さんの細工物。羽の一枚いちまいに至るまで土型へ丁寧に刻み込まれている様子に、思わず息を呑みます。さすが江戸時代から細工物を得意としてきた金重家といわんばかりの、今にもバサッと跳び立ちそうな臨場感は圧巻。

まだまだ名工揃いの備前焼界

人間国宝館のお隣のブースは「岡山県重要無形文化財展示室」。こちらにも、備前焼の興隆を担ってきた数々の名工たちの作品が並んでいます。中には白い土を使った「白備前」の細工物もあったりで、茶色っぽいという備前焼のイメージが覆るかもしれません。
学芸員の中尾さんいわく「江戸時代には色を塗ったカラフルな備前焼もあったそうですよ!」。そうなの!?

2階&1階は企画展を実施

年に4回ほど企画展を実施している同館。備前焼に限らず別の産地の焼物を展示したり、また備前焼とあえて比較したりと、いずれも「陶芸」の奥深さを感じられる企画ばかり。
写真撮影時は1960年代に益子などで作陶を行い一世を風靡した名匠、加守田章二展の真っ最中。伊部に住む備前焼作家も大勢訪れ、名作を楽しまれていたそう。

2階の階段横には備前焼年表アリ

企画展だけでなく、2階には備前焼の歴史が学べるコーナーがあります。
なんと645年頃に初めて伊部の西の方に窯が築かれたことや、1587年には豊臣秀吉の茶会に備前焼の茶道具が使われたことなどが書かれています。
はるか昔からその姿を変えず、戦国時代の武将たちや江戸時代のお殿様たちに愛されてきた備前焼の、めちゃモテっぷりが伺えますね。

1階では、ドでかい大甕がお出迎え

1階には企画展に加え、壁で区切られたコーナーに備前焼の製作工程や、模様の種類・出し方の説明パネルが展示されています。
中尾さんが言うには「実は備前焼って、とっても化学的な焼物。土に鉄分が多く含まれているので、酸化させるか・還元させるかでいろんな色が出ます。また、土と炎だけで生み出されるシンプルだけど奥が深い作家の仕事ぶりには、素直にすごいなと思ってもらえるはずです」とのこと。
また、中央には大人もすっぽり入れそうな「三石甕(さんごくがめ)」がドーン!これはインスタ映えしそう…ですが、館内撮影NGなので、心のシャッターを連写してくださいね。

右も左もお宝だらけな備前焼ミュージアム!

古備前と今の備前焼。1000年もの間変わらない魅力と、次世代の陶工たちによって革新されていく魅力。どちらも併せ持ったホンモノの備前焼に会いに、ぜひ備前焼ミュージアムへ行ってみてください!
マジでオススメです!
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