特別企画列車「戦国列車」で行く井原鉄道沿線の山城と歴史スポット

2023年10月から岡山県総社市と広島県福山市神辺町を結ぶ、旧山陽道に沿って走る井原鉄道でラッピング列車「戦国列車」が運行中じゃ!鉄道マニア、歴史マニアにとって特別な列車なんじゃ。
この戦国列車に乗って井原鉄道沿線の山城と歴史スポットを巡るツアーが行われた。参加した岡山戦国武将隊の宇喜多直家、その妻おふく、宇喜多家家臣・戸川秀安がその様子をお伝えしよう。尚、このツアーは今後も定期的に開催されるという。

掲載日:2023年12月21日
  • ライター:岡山戦国武将隊
  • 3149 ビュー

戦国列車とは?

戦国列車は 井原鉄道を走る列車で井原鉄道と沿線5市町による井原線沿線観光連盟によって共同で企画し造成された列車なんじゃ。
歴史&山城ナビゲーターの山城ガールむつみさんが車両デザインを監修した。
黒一色の車体に井原市ゆかりの戦国武将、北条早雲の肖像画がヘッドマークと車体にデザインされ、井原線沿線の山城とゆかりのある那須、宇都宮、庄、三村、備中伊勢、尼子、山名、毛利、宇喜多の9氏族の家紋が配されておる。

しぶーぃ外観、内部は?

列車内部も戦国感満載じゃ。沿線の山城や、歴史スポットなどが紹介されているパネルや中吊り広告が設置されておる。荷物ネットの上には城柵(瓦の土塀でないのが、また良し)と足軽兵がデザインされておって、戦国時代の城の城内にいるようじゃ。
北条早雲殿とのツーショットを撮れるコーナーもあって面白い!おふく殿は早速、楽しそうにツーショットを撮っておられたが、直家殿は少しヤキモチをやいておったようじゃ。

戦国列車を使ったツアーを体験

この戦国列車を貸し切り、歴史スポットをめぐるツアーが開催された。案内は戦国列車をデザインした 山城ガールむつみさんじゃ。総社駅を出発し、奈良時代の官僚・吉備真備ゆかりの倉敷市真備町のまきび記念館、矢掛町の吉備真備公園、備中高松城水攻めの時、毛利軍の本陣となった矢掛町と倉敷市にまたがる猿掛城、そして 江戸時代の宿場町の残る 矢掛宿の街並みの散策などが行われた。

1.まきび公園

総社駅から戦国列車に乗車して高梁川の鉄橋を渡り、吉備真備駅で下車。まきび公園へ。
この公園は日本の公園というよりか中国風の雰囲気がするんじゃ。
吉備真備は奈良時代の政治家・学者で、遣唐使として現在の中国に2度も渡った人物で、この地方の出身なんじゃ。
公園内のまきび記念館には遣唐使の歴史や、吉備真備の業績などが分かりやすくパネル展示されており、とても勉強になる無料で入館できる施設じゃ。

【まきび公園】
所在地:岡山県倉敷市真備町箭田3652-1

2.吉備真備公園

もう1箇所、まわった順番とは異なるが、吉備真備にちなんだ場所も訪れた。吉備真備公の遺徳を偲んで設けられた公園で巨大な真備公の像が建立されており、2007年に「日本の歴史公園100 選」(日本公園緑地協会)にも選定されておる矢掛町にある吉備真備公園じゃ。
真備公が中国から囲碁を最初に伝えたのを記念した「囲碁発祥の地」記念碑などもある。
中国風の建物の休憩所「館址亭」ではランチじゃ。
公園近くから手打ちうどんののぼりや看板が目についておったのじゃが、ボリューム満点の手打ちうどんとおにぎりのランチじゃった。とても美味しい。この手打ちうどんは公園近くにある吉備真備の産湯の井戸の水を使ったものらしい。なるほど、古代の味がした。

【吉備真備公園】
所在地:岡山県小田郡矢掛町東三成3872-1

3.戦国の山城・猿掛城

いよいよ今回のメイン猿掛城 登城である。猿掛城は矢掛町と倉敷市にまたがる戦国時代の山城なんじゃ。最初庄氏により築かれ戦国時代まで居城とした。そしてその後は三村氏と続き、毛利元就の4男元清の居城となった。備中高松城水責めの折には毛利軍の本陣となった城である。
さぁ、いよいよ登城開始じゃ!

遺構もよく残る猿掛城

小田川沿いの登城口から約40分くらいで本丸に到着する。地元の方々により整備された登城道で安全に登ることができた。いつものことじゃが、保存会の方々には頭の下がる思いじゃ。途中、太鼓丸や頂上付近からは遺構がどんどん現れてきて飽きない。ガイドレシーバーでむつみさんの案内と解説の声がリアルタイムで常に聞こえているので、迷子にもならず、とてもよく理解できた。圧巻は本丸(一の段)の先にある大堀切。20m程のロープを伝って降りてゆく。堀底に降りて切岸(人工的に削った斜面)を見上げてみると「これは、ここからはこの城、攻め登れんわ!」と思うた。
戦国の山城、大いに堪能できた登城じゃった。

【猿掛城跡】
所在地:岡山県小田郡矢掛町横谷

4.庄氏の菩提寺、洞松寺(とうしょうじ)

ここ洞松寺(とうしょうじ)は、庄氏により応永19年(1412年)に中興されたと伝わる庄氏の菩提寺として繁栄した曹洞宗のお寺じゃ。ここには庄元資の墓と穂井田(毛利)元清の墓と伝わる供養塔が残っておる。宇喜多直家様も戦国の世を振り返り丁重にお参りしておったようじゃ。

洞松寺では、現在修行の寺として全国から、そして世界から修行僧が集まり、日々修行の生活をおこなっておられる。今も20数名の修行僧の方々が励んでおられた。外国人の修行僧も多い。
寺には江戸時代に建てられた多くの建物も残っておるが、山門を除き国の登録有形文化財となっておる。美しく整えられた境内は落ち着きのある荘厳な雰囲気であり、本来のお寺の姿というものが色濃く残っておった。

【洞松寺】
所在地:岡山県小田郡矢掛町横谷3796

5.宿場町の雰囲気が色濃く残る矢掛宿

最後に訪れたのは ここのところ大人気で多くの人が訪れている矢掛宿じゃ。
江戸時代、明治・大正・昭和の建物が多く残っており、今でも宿場町の雰囲気が色濃く残っている。大名や公家、幕府の役人などが泊まった本陣と脇本陣も当時のまま現存している。共に国の重要文化財となっており、同じ宿場町に本陣、脇本陣と残っているのは日本でここ矢掛宿だけなんじゃ。
町家もうなぎの寝床と呼ばれる間口が狭く、奥行きが長い建物が並んでおったり、街道に沿って平行に建物が建っているのではなく、それぞれの建物が少し斜めにずれて建ち、ノコギリ刃状のラインとなっておる。これは、最初の敷地割のためとも、死角を作り防御のためとも様々な説があるが、宿場町の名残である。

【矢掛宿(伝統的建造物群保存地区)】
所在地:岡山県小田郡矢掛町矢掛及び小林の一部

昔の風景と融合しながら変わりゆく矢掛宿

そんな、歴史感あふれる矢掛宿じゃが、今は新感覚、新形態の新しいお店が続々とオープンしており、かつて一度矢掛宿を訪れた方はきっとびっくりするじゃろう。
写真映えする美味しい食事、スイーツなど数々の矢掛グルメも若い人にも大人気なんじゃ。
立寄った通りの中ほどにある「やかげ町家交流館」は、観光案内・土産物の販売・矢掛町のイベント情報なども得られる観光交流施設じゃ。
ここで矢掛宿のマップやグルメ情報などを集めて散策するとよいじゃろう。

【やかげ町家交流館】
所在地:岡山県小田郡矢掛町矢掛2639

おいもフェスも開催中!

ツアーで我々が訪れた時、ちょうど イベントを開催しておった。
OIMO-FES「おいもがい〜もんIN YAKAGE」というグルメイベントでおいもを使ったスイーツや料理を21店舗で提供しておるということじゃ。1~3品のお芋メニュー注文で、嬉しいプレゼントもあるデジタルスタンプラリーもやっておる。
21店舗を1日では回りきれんので、また来よう。
矢掛宿の中にある「やかげ郷土美術館」に矢掛町で発見された吉備真備の祖母の銅製の骨蔵器のレプリカが展示されているのを見学してこのツアーは終了した。

【OIMO-FES「おいもがい〜もんIN YAKAGE」】
開催期間:3年11月19日(日)~2024年1月31日(木)

これからますます面白くなる井原線沿線

今回ツアーで訪れたスポットの他にも井原鉄道沿線には魅力ある歴史的なスポットがたくさんある。井原線沿線観光連盟ではいろいろなところで各種イベントやスポットの整備などを行っていくということじゃ。ツアー前日には「地域の歴史・文化の魅力を再発見」というセミナーも開かれ、今回のナビゲーターの山城ガールむつみさんによる「井原線沿線周辺の歴史とお城の楽しみ方」という講演もあった。「井原線沿線は面白い魅力的なところがたくさんあるのでいろんな楽しいツアーをたくさん組めるエリアです。」と、おっしゃっておった。

井原線沿線観光連盟(事務局:井原市観光交流課)TEL:0866-62-8850
井原鉄道株式会社 営業企画課:TEL:0866-63-2677

猿掛城の御城印も配布開始!

今回のツアーで登城した猿掛城の御城印が、いよいよ配布開始された。2023年12月18日より、矢掛宿の矢掛ビジターセンター問屋で販売されておる。井原線沿線では北条早雲の出身の城・高越城に続き2つ目じゃ。猿掛城の御城印も山城ガールむつみさんのデザインによるもので、戦国時代まで本城とした庄氏の家紋 「軍配団扇紋」と、 庄氏に養子を送り、実質的に支配下に組み込んだ三村氏の家紋「丸に三つ柏」、さらにその後、猿掛城に入った毛利氏の家紋 「一文字に三つ星」がデザインされておる。
また、 庄家長が源平合戦の際に、平清盛の5男重衡を捕らえたと伝わることから 「平家物語絵巻」の一部も盛り込まれておる。さらに、大動脈であった小田川と山陽道を臨む要衝地に築かれた猿掛城の城山の山容と、地形図もモチーフされておる。

【矢掛ビジターセンター問屋】
所在地:岡山県小田郡矢掛町矢掛1989

おしまいに

これから戦国列車は5年間は井原線で運行される予定じゃ。沿線には古代から近代まで歴史の魅力が詰まっておる。戦国の山城も数多く、猿掛城はじめ高越城(井原市)、神辺城(福山市)、矢掛茶臼山城(矢掛町)、福山城・幸山城(総社市)、高屋城(井原市)など面白そうな山城も点在しておる。この戦国列車に乗って車窓から昔に思いを馳せて歴史の旅を楽しんで下され。

同じテーマの記事

このライターの記事