津山市のUJITEI(ウジテイ)はアートな体験で創造力が刺激される農家民宿

岡山県には美しい自然の景観と郷土の特色を活かした個性豊かな農家民宿が多くあります。今回ご紹介するのは、アートな体験ができる宿泊施設です。
県北にある人口5,000人ほどの町、津山市加茂町。ここにクリエイター家族が運営するUJITEI(ウジテイ)という素敵な農家民宿があります。
運営者のYUKA(ゆうか)さんが幼少期に経験した遊びを通して、日本の伝統や文化を知ってもらえる場所になっています。
掲載日:2022年12月27日
  • ライター:酒井悠
  • 3950 ビュー

柚子を採るのも素敵なアトラクションに!

今回、筆者たちは、UJITEIの(ご家族)みなさんが作られたお米のワラ(藁)を使い、しめ縄作りに挑戦しました!

その前に、まずは飾りになる草花をゲットしに山に入ります。季節やタイミングもあり、今回は柚子を採りにいきました。
敷地内にはYUKAさんのお父さん(TOSHIMI/としみさん)が作ったアート作品があちこちにあります。

こちらは「昇り竜」という名前で、田んぼの往来がしやすくなるように作られた階段のような機能の作品です。
そしてYUKAさんが、なにやら見慣れない道具(およそ4mの長さの竹)を持ち柚子の木の下まで進んでいきます。
UJITEIの敷地内にある柚子。立派に実っています。
先程の道具、実は先端に切れ込みが入っており、その部分に木の枝を挟むことで柚子を採る道具 ― いわゆる高枝切り ― だったのです。
慣れているYUKAさんに掛かれば朝飯前なこの作業。
YUKAさんとっては日常的なことですが、ここを訪れるゲストにはとても人気の体験だそうで、「日常の風景を愛でることも価値になる」ことがわかるエピソードでした。
体験参加のおふたりもこの表情です!
ちなみに、こちらもお手製の高枝切りとのことです。

いざ!しめ縄作り体験!

部屋に戻り、先程ゲットした柚子やワラを使ってのしめ縄作り体験のスタートです。
まずは束になっているワラを2つに分ける作業です。
続いて、ささくれている部分を丁寧に手で剥いでいきます。
YUKAさんは、幼い時からご両親と一緒にしめ縄を作っていたこともあり、そのキャリアは30年を誇るそう!

さすがの手捌きだけあって、あっという間に縄を結っていきます。
今回初めて体験したおふたりには、捻りながら編んでいくのは一苦労だったようで、悪戦苦闘しながらでこの表情。
時折、YUKAさんが丁寧に実演しながら手伝ってくれました。
同じ作業を繰り返し、しめ縄を2本編んだところで、仕上げに入ります。
結った際に出たささくれた部分をハサミで整えていきます。
そして、2本のしめ縄それぞれに輪っかを作り、その部分を針金で留めます。
次にお正月飾りの定番であるウラジロと松、そして、赤い実の南天で装飾していきます。

諸説ありますが、ウラジロは左右に2枚の葉が広がることから「夫婦円満」を、さらに葉の裏が白いことから「清らかな心」を表します。
松は、常緑樹で年間を通じて青いため「永遠の命」の象徴とされており、中には樹齢数1,000年というものもあり、不老長寿の意味合いもあるそうです。
南天は「難を転ずる(ナンテン)」ことから、こちらも縁起が良いとされています。
YUKAさんのお母さん(TAEKA/たえかさん)にもお手伝いいただき、庭で採ってきた柚子を最後に添えます。

柚子に竹串を通して装飾したこともあり、フレッシュな良い香りを感じることもできました。
そして、ワラの下の部分をハサミで切って揃えれば完成です!
この季節にぴったりの素敵なしめ飾り!
同じ工程で作っても全く同じ仕上がりにはならない。
作り手の個性が出るのも、こうした手作りの体験の醍醐味かもしれませんね!

UJITEIの魅力は「田舎の日常」が体験できること

ここからは、UJITEIでお聞きした宿への想いを写真もお借りしてご説明します。(写真は全てUJITEIのInstagramより引用しています)

「ここには特別な観光地はない」というYUKAさん。では、UJITEIを訪れるゲストは、何を目指してここに来るのでしょうか。
「自然と共存する日本の田舎に残る文化や生活がある」というのがその答えだと言います。

例えば、泊まりに来たゲストと一緒に農作業をしている様子をおさめたこちらの1枚。
お米作りと日本人の暮らしが結びついていることを話しながら行う稲刈りなどは、貴重な経験になっているのだとか。
YUKAさん曰く「世界各国の人と話をする中から見えてきた日本は、都会と田舎があり、田舎では自然と共存する暮らしが残っていること。シンガポールにも香港にも田舎はないし、アメリカのように大規模農業だけを行っているわけでもない」という日本の田舎の価値でした。

訪れる多くのゲストはウェブサイトの写真の雰囲気に惹かれるそうです。

「House Hotel(ハウスホテル)」という造語を用いているUJITEIは、「日本の田舎が見てみたい」という訪日外国人からの要望を満たすことが念頭にあったようで、訪れたゲストからも「ジブリ作品の世界で見た田舎で暮らす人がここにはいる!」というレビューをもらうこともあるのだとか。

2014年のUJITEIオープン当初の利用者はヨーロッパの方の割合が多かったそうですが、コロナ前ではアジアが半分程度の割合で、香港、シンガポール、台湾、そして東京から来るお客さんが多く、今もリピーターが多いそうです。

田舎の日常と宿を掛け合わせて生まれたUJITEI。
魅力的な理由がそこにあるような気がします。
広いリビングに面した窓からは、季節ごとに彩りを変える山々や遠くまで広がる田畑、そして満点の星空が見えるそうです。
海外のクリエイターの方が長期滞在することも多く、田舎の自然にインスパイアされリフレッシュされるようです。
部屋には沢山の作品が飾られており、そこには、宿泊するゲストがゆっくりと自然に囲まれた空間で寛げるようにとの想いが込められています。
今回体験したしめ縄作りは冬限定ですが、UJITEIでは他にも自然の景色を眺めながらの書道、施設周辺を散策し花を集めるところから始める生け花など、多種多様な体験コンテンツが揃っています。
UJITEIを訪れるゲストはレンタカーで直接現地に来る以外に、最寄の鉄道の駅(JR因美線の美作加茂駅)を目指す方法もあり、その場合はUJITEIのみなさんが送迎をしてくれるそう。

駅の係の人も楽しそうにゲストを案内しているエピソードもお聞きし、そういった部分にもこの地域の方の心遣いが感じられました。

ロケーション、ホスピタリティ、アットホームな雰囲気…
どれをとっても魅力的で、また訪れたい、いや、帰りたいと思える場所でした。
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