岡山総鎮守 岡山神社
創建当初の西暦860年(清和天皇貞観年中)は、「岡山」という現在の岡山城本丸がある地に鎮座しており「坂下(さかおり)の社」と呼ばれていました。永禄年中(1558-1570年)に「岡山大明神」と改められます。1573(天正元)年、歴史上でも有名な宇喜多直家が岡山城を築くにあたり、現在の地に遷され、岡山城の守護神として社領(神社の土地)を寄附。直家の子・秀家が本殿を、その後の城主・小早川秀秋が拝殿以下を造営しました。池田家城主の時は城内鎮守として崇敬を受け、その後も備前国岡山総鎮守として時を刻んできた、まさに岡山の歴史と縁が深い神社です。万治年中(1658-1661)以後は「酒折宮(さかおりぐう)」と号していましたが、1882(明治15)年、社号を現在の「岡山神社」とされました。
とても大きな絵馬に迫力あるデザインで毎年、その年の干支が生き生きと表現されている作品です。岡山の企業とアーティストが制作を手がけています。折り紙絵馬に願いを書きこみ、大絵馬に奉納する願掛け作法が珍しいと注目されています。
岡山神社は、手水舎のまわりに芝桜をはじめいろんな季節の花々が咲いていて、いつも癒してくれます。また訪れることができた時は、どんな花を愛でられるでしょうか。
心願成就の「ことばもり®」は、岡山のデザイナーと写真家の協力によって完成しました。高梁川の伏流水と岡山県産のミツマタで手漉きした備中和紙で作られた、岡山県指定郷土伝統的工芸品です。飾ったり、身に着けて持っていると、和紙は使い込むほど風合いが出てくるので、次第に手にもなじんでくるそう。岡山神社の風景を写した写真がお守りの紅白に映えます。
そして、岡山神社と縁が深い岡山城と桃をあしらった限定のご朱印帳とお守りもあり、桃色がとても綺麗でした。
※2020年5月1日現在、授与所は一時閉鎖中
倉敷総鎮守 阿智神社
「阿知」(あち)の地名と社号の由来は、古く『日本書紀』に記述があります。「倭漢直の祖 阿知使主(あちのおみ)」という阿知使主の一族が渡来したことが記されており、この一族の一部が当地周辺に定住したことが由来とされています。
主祭神は「宗像三女神」(むなかたさんじょしん)。天照大神(あまてらすおおかみ)と素戔嗚尊(すさのおのみこと)が誓約をした際にお生まれになり、海の神「道主貴」(みちぬしのむち)とも称され、交通・交易の安全を司る神です。
繁栄していった江戸時代には神仏混淆(こんこう)により妙見宮(みょうけんぐう)と称されていましたが、1869(明治2)年、神仏分離令により現在の阿智神社の社号になりました。今も倉敷に住む方、倉敷を訪れる方々の拠りどころとなっています。
ほかにも阿智神社ならではのお守りがたくさんあり、様々な人々が訪れる神社には、長い歴史の中でたくさんの祈りや願いが捧げられてきたことがうかがえます。神職さんにそれぞれのお守りについてのお話を伺うとさらに愛着が湧きました。
繊細なレースに県指定の天然記念物「阿知の藤」をデザインした、映える色合いが美しいレース編みの「花纏守」(はなまきまもり)。赤磐市のレース工場「岡山レース」とのご縁から生まれました。
通年あるものと、春夏秋冬の季節ごとに作られるものがあり、各色の名前はそれぞれ日本最古の和歌集『万葉集』から名づけられています。訪れた時は春限定の「さわらび」と名のついた花纏守が、芽吹いたばかりの緑のようで美しかったです。色とりどりのレースのお守りはどれもすべて綺麗で華やかで、本当に晴れやかな気持ちになりました。
藤の花というと紫色を思い浮かべますが、阿智神社の境内にある「阿知の藤」はアケボノフジという品種で桃色がかっているのだそう。毎年、ゴールデンウィーク前後に藤の花は見頃を迎えます。阿智神社は手水舎もとても美しく、訪れるだけで心が洗われるよう。今はお守りの藤の花に心を寄せて、またいつか訪れたいと思います。
備前國一宮 吉備津彦神社
古来より神社背後の「吉備の中山」は山全体が神の山として崇敬されてきました。大吉備津彦命もこの山に祈り、吉備国を平定し、現人神として崇められました。
2018(平成30)年5月には、「『桃太郎伝説』の生まれたまちおかやま~古代吉備の遺産が誘う鬼退治の物語」が日本遺産に認定。吉備津彦神社は、物語を構成する27の文化財のひとつになっています。
一般的に桃太郎と鬼は、昔話のイメージから鬼退治などで争った印象が強い中で、岡山では、ふたりは吉備の国と文化、経済の発展のために協力し合ったという桃太郎伝説が大切にされています。(※全国には諸説あります)
戦いの後に桃太郎と鬼が手を携え、国のために尽くしたという平和な解釈は、そうであったらいいなという願いもこめられているような、心温まるお話ですよね。温羅神社のそばには「桃」の木が育ち、いきいきと綺麗な花を咲かせている姿も、感慨深いです。
吉備津彦神社で毎年2月3日に行われる「節分祭」では、全国的にも珍しい、桃太郎と鬼が共に豆を投げるという微笑ましい光景がみられます。岡山では絆が深い吉備津彦命と温羅に思いを馳せると、岡山の歴史がより身近で大切に思えてきます。
桃は古来より厄除けの力があり不老長寿の実として珍重されていたといいます。「桃の節句」ひなまつりも厄除けが始まりとされており、桃はお守りとしても意味が込められているのですね。さらに、晴れの国おかやまで育つ白桃は岡山を代表する特産品。いろんな「桃」と「岡山」の深いご縁を、改めて感じます。
素敵なお守りはほかにも。「縁結び守り」は紅白の2体1組のお守りで、「幸せ祈願」の祈祷をお願いすると、1体を持ち帰り、1体は神社で預かって1年間お祈りしていただけます。なかなかお参りに行けない時も心安らげるお守りだと思いました。
この時期、今持っているお守りを大切にして、祈りをこめて神様へ思いを馳せるだけでも、その気持ちはきっと届くのではないでしょうか。
※2020年5月1日現在、一部業務を縮小中(お守りの種類や時間帯など変更の可能性あり、詳しくは公式HPをご参照ください)
子どもの健やかな成長を願って掲げるこいのぼり。悠々と泳ぐ姿に元気をもらえます。今は外出が難しい状況ですが、晴れた日に空を見上げると心がすっと軽くなる気がします。
神社周辺を歩くと、門前に大きな神池がひろがり、住吉神を祀った鶴島、宗像神を祀った亀島も拝むことができます。風情ある茶屋や桃太郎線が通る光景など、晴れ渡る吉備の国一帯の長閑な景色にも心癒されました。
編集後記
これまで身近にあった神社にまつわる歴史や縁起を調べてみると、地域との深いご縁を感じます。何度もお参りしてきた時には気づかなかったこともわかり、故郷の歴史に思いを馳せる時間は心を穏やかにしてくれました。
そして、今回ご紹介したすべての神社に、桃太郎のモデルとなった吉備津彦命がお祀りされていました。吉備津彦命と岡山県には、とても深いご縁があるのですね。「岡山といえば桃太郎」といわれることもうなずけます。生まれ育った町にもまだまだ知らないことがあり、私たちのそばにある神社では毎日、穏やかな日々と平和を願い祈りを捧げてくださる。守っていただいているありがたさを改めて感じました。生活する場所、故郷について、学びなおすのもいいなと思いました。
今ある時間を、皆さまが穏やかで健康にすごせますように。