株式会社アーリーモーニング/宮本英治さん
目次
株式会社アーリーモーニング/宮本英治さん
新見市大佐地区の大日高原で、高品質な紅茶を栽培・製造しながら紅茶専門店「アーリーモーニング」を経営する宮本英治さん。自社で開発したブランド「EIJI MIYAMOTO」を筆頭に、家庭用およびギフト用の紅茶商品を次々と開発。その品質は紅茶の本場・ロンドンでも高く評価されており、JR西日本グループが主催する「せとうちおみやげグランプリ特別賞」も2回連続受賞。また、旅行会社と連携した体験農園やツアー等の受入も実施するなど、商品の製造販売のみならず、岡山県の観光誘客にも大いに寄与しています。
幼児教育から紅茶の世界へ
幼い頃は、幼稚園の先生になるのが夢だった宮本さん。高校卒業後、専門学校でイラストレーション、短期大学で幼児教育を学びますが、当時、男性が幼児教育に携わることをなかなか認めてもらえない風潮があり、やむを得ず社会教育主事として市町の教育委員会や社会教育課などに勤めました。
希望の職につけず自身の生き方を模索する中、宮本さんは「どこでも、誰とでも、自分らしく幸せに生きる力を育てる」という幼児教育の志を別の形で実現できないかと考えます。そこで浮かんだのが、以前から興味があった「紅茶」でした。中学生の頃からヨーロッパの歴史や絵画に興味を持ち、イギリスの紅茶文化の基礎知識はありました。「もともと自然や農業に憧れがあったので、最初は百姓になってシャトーのような農園を作れたらと考えましたが、ワインはお酒が飲めない人や未成年は楽しめません。紅茶は大人だけでなく子どもが楽しめる点が魅力でした。」宮本さんは、その日から本格的な紅茶の勉強をスタートします。
新見で理想の紅茶づくりに着手
平成8年(1996年)、町役場を退職し、「紅茶研究家」としての活動を開始した宮本さん。最初は紹介を受けながら講師活動を始めましたが、徐々に口コミにより全国から紅茶の講師の話が舞い込むようになります。多忙な日々の合間をぬって紅茶研究に励むうち、「自ら紅茶を作ってこそ紅茶研究家ではないか」と思い至ります。紅茶栽培に適した土地を探すうち、世界三大紅茶産地として知られるインド北部のダージリン地方の気象条件に酷似した土地に出会います。それが、現在の農園がある新見市大佐地区の大日高原でした。
平成11年(1999年)、正式に家族と移住することを決め、ペンション兼紅茶専門店を開業(現在は紅茶専門店のみ営業)。平成17年(2005年)春、最初の紅茶の樹を植えて念願の紅茶農園を開きました。「虫害や気候の変化、イノシシの被害など最初は苦労の連続でした。安定してきたのはつい最近のことです。」と宮本さんは当時を回想します。
紅茶の本場イギリスで高い評価
転機となったのは平成25年(2013年)、「6次産業化計画」の事業者に認定された時のことです。宮本さんは約8年かけて育てた樹から紅茶づくりに着手。紅茶の主要生産国であるインドやスリランカの製茶機械を導入し、これまで蓄積した経験や知識をもとに、茶葉の手触りや香り、発酵時間等、徹底的にこだわりぬきました。同年11月、自社ブランドティー「EIJI MIYAMOTO」が完成。完成した茶葉をいろいろな取引先に送る中、宮本さんは思い切って、紅茶の代表的な会社である東インド会社にも送りました。
最初、同社からは日本は(紅茶の)消費国であり生産国ではないという回答でしたが、「その後、最高ティーマスターから『本場の紅茶を理解している』『とてもユニークだ』との言葉をいただきました。」と宮本さん。その流れに乗り、平成28年(2016年)、イギリス・ロンドンへの出品が実現。目利きの紅茶バイヤーたちから「ダージリンよりダージリンらしい」という賛辞を受けました。宮本さんの紅茶が、本場・イギリスで認められた瞬間でした。
「瀬戸内おみやげグランプリ特別賞」を2回連続で受賞
宮本さんの紅茶は国内でも高い評価を得ました。著名な料理人・熊谷喜八氏に目にとまったのです。そのことで飲食ブランド「アフタヌーンティー」と接点ができ、後に全国展開する際の足掛かりとなりました。また、イギリスへ出品した際に高評価を得たことから、国内の百貨店や高級スーパーから取引を希望する声が増えていました。
そこで、宮本さんは新たな商品開発に乗り出します。それが岡山産のジンジャーと広島産のレモンを使った「ジンジャーレモン」と、岡山、広島、山口の特産フルーツの香りや味を生かした「せとうち3県巡りTea」です。なるべく地元の素材を使用しパッケージの見た目にもこだわったこれらの商品は、JR西日本グループが主催する「瀬戸内おみやげグランプリ特別賞」を2回連続で受賞。現在、人気の岡山土産の一つとして注目を集めています。
心から紅茶を楽しむために英国庭園を整備
宮本さんは紅茶を楽しむ環境も大切にしています。新見市の大日高原に広がる紅茶農園には約350坪の本格的な英国庭園を整備。高原ならではの絶景ビューを眼下に、四季の花々を愛でながらのんびり散歩やお茶を飲んで過ごすことができ、庭園で優雅なティータイムを楽しめるツアーや農園での茶摘み体験ツアーなども年間10~15回程度実施されています。
併設の紅茶専門店ではお土産用の茶葉を購入したり、カレー(サラダ付き)など軽食が楽しめるほか、最近ではイギリスから輸入した約100年前の手巻き式蓄音機で月1回コンサートを開いているそう。「紅茶の味は五感と密接に関わっています。水色(すいしょく)、手触り、香り、音楽、味etc。一杯の紅茶が気持ちをリセットしてくれる、癒やしのひとときを提供できれば。」と宮本さんは語ります。
これからも紅茶の魅力を伝え続ける
今後の目標についても伺いました。「紅茶のミュージアムを作って、皆さんが紅茶について勉強できる場所を作れたら。茶葉の摘み取りから加工に至る生産の過程と、できあがった紅茶を楽しむという消費の過程、その両方を学び楽しむ場を作りたいのです。」と宮本さんは目を輝かせました。
最初の紅茶の樹を宮本さんが手植えしてから約20年。何もなかった高原は、今では立派に育った茶畑と美しく手入れされた庭園が広がり、紅茶を愛する人々が集う場所になっています。「苦しい時、一杯の紅茶に助けられたことが何度もありました。これからも誰かにとってのサポートになる紅茶を作り続けていきたい。」宮本さんがかつて追い求めていた「どこでも、誰とでも、自分らしく幸せに生きる力を育てる」という幼児教育への想いは、今では自らの紅茶の理想に生かされています。宮本さんのこれからの活動にも期待が高まります。




































