玉島に「わたしのお茶事和佳」オープン。懐石料理とお抹茶で茶文化体験(倉敷市)

江戸時代、北前船の寄港地として栄えた港町である玉島には、各地の文化が海路を通して伝えられました。特に京都からの茶の湯文化は商家を中心に広がり、町家の中にも茶室が作られました。そんな茶文化がある玉島に2025年3月、気軽に茶事を楽しめるスポット「わたしのお茶事和佳」がオープン。今回、1日1組のおもてなしを体験してきました!
掲載日:2025年05月12日
  • ライター:高杉郁子
  • 167 ビュー

「わたしのお茶事和佳」とは?

2025年3月に倉敷市玉島にオープンした「わたしのお茶事和佳」は、地元産の食材にこだわった懐石料理とお抹茶を、落ち着いた空間でゆっくり楽しめる飲食店です。受け入れは1日1組(最大5人)のみの予約制。店主の佐藤さんは農林水産省を退職後、これまでの業務で培われた知識と料理の腕前、また趣味で続けられている茶道の経験を生かそうとこのお店を始められました。

甘酒でおもてなし

玄関を入ると応接間に通され、甘酒のおもてなしを頂きました。砂糖の入らない甘酒はお米本来の甘さが優しく、飲みやすいお味でした。甘酒は「飲む点滴」とも言われ身体に良いので、疲れた身体が元気になった気がしました。甘酒の後は、今日の懐石料理のメニューを頂き移動します。

年代物の器コレクション

応接間には店主の佐藤さんが長年集められた年代物の器や花瓶、置物などがたくさん飾られていて、見るだけでも眼福でした。この後の懐石料理にも珍しい器が季節に合わせてお料理と共に出てきます。

畳にテーブルの客席

懐石料理を頂く和室は、畳にテーブルが置かれています。通常お茶席は障子を閉めてするそうですが、お庭の新緑を見ながらくつろいでほしいとのことで、開放的な空間で過ごせます。

手入れが行き届いた庭園

テーブル席からのお庭の風景です。手入れが行き届いていて、新緑がとてもきれいでした。玉島の中心地ですがとても静かです。

床の間

お茶事は、冬場は部屋の真ん中の炉を使ってしますが、夏場は畳でふさぎ、床の間の前でします。懐石料理の時は掛け軸がかけられますが、お茶亊の時は掛け軸が取り外されて季節のお花に変わります。

地元食材を使った懐石料理

懐石料理の最初のお料理は、ご飯とお味噌汁、お刺身でした(飯、汁、向付)。ご飯は総社市産の「朝日米」で、農薬や化学肥料5割減で作られたお米です。お味噌汁の玉とうふは、玉島の老舗のピーナツとうふで、白みそと赤みそを季節に合わせて混ぜて溶いたお味噌汁です。お刺身はヒラメの昆布締め。寄島でとれたもので新鮮で美味しかったです。使われているお野菜もすべて地元産です。

煮物椀

煮物はアコウのくずたたきで、ハモに似た感じですが、食べやすくて美味しかったです。お野菜も地元産で、茹で加減がちょうどよく歯ごたえがありました。器は明治時代のもので、器の外は季節のユリ、蓋の中には蝶が描かれていて、季節を五感で楽しんできた昔の人の感性の豊かさに感動しました。

焼き物

焼き魚は、サワラの木の目焼きで、しょうゆたれの漬け焼きです。器は江戸時代の古伊万里です。

炊き合わせ・和え物

炊き合わせは、新玉ねぎと鶏のつくねにモロッコインゲンがのっていました。旬のお野菜に季節を感じました。和え物は、玉島産の八朔に地元の野菜を白和えされていて、さっぱりとしたお味でした。

箸洗い

具の入っていない吸い物の箸洗いは、レモンの香りを感じるお湯割りのようでした。

八寸

八寸はママカリの酢漬けのクリームチーズ和え。初めて食べるお味でクセになりそうな感じでした。岡山名物のママカリの新たな頂き方です。小松菜のソース和えと共に、香ばしい風味のおこげにのせて頂くと絶品でした!お酒は飲めないので柚子サイダーと共に頂きました。柚子サイダーの器がこれまたおしゃれで、輪島塗の漆器でした。グラスではなく盃なので少し緊張しましたが、いつもと違う非日常が楽しかったです。陶器の器は古伊万里で、鳥かごの絵が描かれていますが、鳥は描かれていません。つまり、想像してくださいということだそうです。デザインの面白さが伝わってきます。

湯桶・香の物

そばちょこに入ったものは湯桶(ゆとう)で、お米をお湯でふやかしたようなものです。香の物の沢庵には、細かい隠し包丁が入っていて、「拭いていく」という意味があるそうです。香の物の器は、備前焼でしたが、とても珍しい扇子の形をしていました。

季節のお菓子

懐石料理の最後は季節のお菓子で、玉島の老舗和菓子屋「松濤園」の、バラをモチーフにしたお饅頭でした。ここで一度部屋を退出して、応接間でお茶亊の準備が整うまで待ちます。

作法は気にせずお茶事体験

お茶事の準備が整うと再び部屋に戻ります。佐藤さんがお茶を点てて下さいました。静かな中に、お湯とお茶を点てる音が響きます。テーブルに運ばれ、作法は気にせず頂いて大丈夫です。

お抹茶

美味しいお抹茶でした。「ズズッ」と最後の1滴まで飲み干していいそうです。

季節の生け花

お茶亊の時は、懐石料理の時の掛け軸から、生け花に変わりました。季節のシランが備前焼の器に馴染んでいました。

おわりに

お茶文化の歴史がある玉島。お茶があるからそれに合わせてお菓子もあり、道具屋もありで、本物が根付いたエリアです。「わたしのお茶事和佳」は、時代と共にあり方も楽しみながら引き継いでゆけるようにと、佐藤さんが新たな試みとしてスタートさせました。ぜひ訪れてみてください。早くも人気で数ヶ月先まで予約が埋まっている日もあるそうなので、気になった方はお早めに。
※お店の場所はナビが間違った場所に誘導することがあるようなので、通町商店街を目指して行って、商店街の中を写真の矢印方向に曲がって、赤いポストがあるところがお店です。

【わたしのお茶事和佳】
所在地:岡山県倉敷市玉島3-3-10
TEL:090-2524-0297
営業日:金~日曜日(要予約)
※茶事は11時にスタート(約2時間)
料金:10,000円
駐車場:あり
マップを見る

同じテーマの記事

このライターの記事