「倉敷銘菓・藤戸まんぢゅう」源氏平家の昔より変わらぬ老舗の想いと愛される味

その昔、源平合戦の舞台にもなった倉敷市藤戸町に800年以上前から伝わるお菓子「藤戸まんぢゅう」。岡山県内に長くお住まいの年配の方には、「源氏平家の昔より〜」で始まるCMソングに聞き覚えがある方も多いのでは?長い年月をかけて地元の人々に寄り添い、日常の茶請けにも慶弔の席にも当たり前にある存在です。とても身近で、ずっと親しまれているその味に込められている歴史と想いなど、「藤戸まんぢゅう」の物語について聞いてきました。

ライター
イマオカ マコト
掲載日
2025年8月20日
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カテゴリ

「倉敷銘菓・藤戸まんぢゅう」源氏平家の昔より変わらぬ老舗の想いと愛される味

源平合戦と藤戸寺から始まった「藤戸まんぢゅう」の物語

「藤戸まんぢゅう」の発祥は寿永3年(1184年)、源平合戦の藤戸の戦いで源氏の武将・佐々木盛綱が浅瀬を教えてくれた地元の民を口封じのために斬り捨てたことで、村人たちがその魂を慰めるために藤戸寺に饅頭を供えたことが起源となっています。

江戸期の元禄時代頃まで藤戸寺の茶店で提供され、その後、饅頭をつくっていた民家「饅座小屋」での販売を経て、万延元年(1860年)に現在地で「藤戸饅頭本舗」として暖簾を掲げて、地元の生活に深く根付いてきたそうです。

素材と製法へのこだわり

藤戸寺の目の前にある「藤戸饅頭本舗」本店でお話をうかがったのは社長の金本博行さん。「正確にさかのぼれる限りで7代目」と笑って仰いながら話してくださいました。

昭和の雰囲気が色濃く残る本店、ガラスケースや時計、扉など、一気にタイムスリップしたような感覚になります。


近年まで店舗で製造販売されていたのは、「藤戸まんぢゅう」一種類のみ。その味を支えているのは変わらぬ素材で、社長曰く「創業以来、小豆は北海道十勝産を使用。薄皮となる酒粕は、古くから付き合いのある蔵元のものだけを使い続け、作りたてを味わってほしいという想いから添加物は一切使いません」とのこと。賞味期限が3日というのも、そのこだわりを表しています。

丁寧につくられたなめらかなこし餡を包み込む酒粕の皮は薄く、餡が透けるほど。ほのかでもあり、それでいてしっかりと立つ酒粕の香りは、他にはないやさしい余韻を残します。ほどよいサイズ感も後押しして、つい「もう一つ」と手が出てしまいます。時間も手間も惜しまず、効率よりも鮮度を優先するその姿勢は、代々受け継がれるまんぢゅうづくりの哲学です。

一番人気のブランド品「竹の皮包み」

3個入りから色んな種類のセットがある中でも、「昭和、平成、令和と変わっても竹皮で包んだ10個入りは人気があるね」と社長。見た目にも趣があり、手に取ると竹皮の風合いと手触りがなんとも優しい。

「この包装が贈り物や手土産としてとても喜ばれるんですよ」とのことで、藤戸まんぢゅうに馴染み深い私も、「藤戸まんぢゅうといえば竹の皮」のイメージがあります。他にも紙箱入りは数量別で7タイプ、お祝い事などには格調高い木箱入りもあります。

老舗を守りつづけていくために

「欲張らず、着実に。この味を地元の人と、訪れた人のために守っていきたい」。
金本社長は伝統を守りながら時代と共に藤戸まんぢゅうを残すべく努力を重ね、その一環として平成2年に倉敷市串田に製造工場を新設。衛生面や安定供給を確保しつつ、味と品質を守り続けています。
実はパッケージに使うロゴや掛け紙のデザインも平成中期に刷新されています。「伝統を守り続けるために世界観を壊すことなく、自然に受け入れていただけるように配慮しています」とのこと。また味についても、「時代に合わせて少しずつかえているんですよ」と、見えないところで伝統を守り続ける配慮があることをあらためて知りました。

老舗だからこそできること

金本社長の考えを尊重しつつ、そのバトンを受け取ったのが長女の金本昌子さん。
倉敷市の人気カフェ「スケアクロウ」とのコラボマフィン、真庭市の「ジェラート醍醐桜」&「御前酒蔵元 辻本店」とのコラボジェラート。徹底的にペアリングを検証した「雁ヶ音ブレンド茶(煎茶/ほうじ茶)」、「コーヒー」など、柔軟な発想と行動力で老舗の枠を超えた商品を次々と形にしています。
※マフィン、コーヒーはイベント限定販売です。
※ジェラートは「藤戸饅頭本舗」では販売していません、お問い合わせは「ジェラート醍醐桜」まで。
ジェラート醍醐桜|公式サイトはこちら→https://daigozakura.jp/

人気のあんチョコペースト

チョコレート専門店「@alfer」とコラボ開発したあんチョコペーストとナッツを挟んだ「もなか」も好評です。藤戸まんぢゅう伝統のこしあんを挟んだタイプもあり、どちらもおすすめです。
※もなかの販売は本店だけの取り扱いとなります。

また本店では、月1回の店頭イベントを不定期で開催しており、人気商品は午前中の早いうちに完売するほど。イベント告知は公式Instagramで発信しています。マフィンやコーヒーに出会いたい方はぜひ!

串田工場でも購入できます

本店から車で5分ほどの場所にある串田工場には併設の串田店があります。こちらは工場直営のため、タイミングが良ければ正真正銘「つくりたて」を購入することができます。

先に紹介した「あんチョコペースト」も購入できます。店頭に車も停めやすく、オープンと同時に出張などの手土産を求めるお客さまで賑わう日も珍しくありません。
大事なことなので、もう一度書きますが「もなか」はこちらでは購入できません。

え!?本当に?おすすめの食べ方

藤戸まんぢゅうは出来立てを製造日にいただくのがオススメです。こだわりのこしあんと酒粕の風味がよくわかり、ほどよい食感の薄皮が何とも言えません。

なのですが、社長のオススメがもうひとつ!なんと意外にも「天ぷら」!「これがなあ、うまいんよ」とのことで、実際にやってみました。


藤戸まんぢゅうにそのまま衣をつけてサッと揚げて、熱々をいただきます!「あ、おいしい」。サクッとした衣と熱いあんこ、好相性です。おやつとしてはもちろん、甘いものとお酒を一緒に愉しむ私は日本酒のアテにしましたが、リピートしたいですね(好みがありますので、自己判断で)。

食べない「藤戸まんぢゅう」オリジナルグッズも好評!

新たな展開は「食べないけど、暮らしのそばにある藤戸まんぢゅう」という発想にも。
倉敷・岡山・福山(広島県)に展開中の大型文具店「うさぎや」プロデュースのオリジナルポールペンには、ボディのロゴと「10個入り竹皮包み」のチャームが。また倉敷といえば、カモ井加工紙のmt「マスキングテープ」。こちらも色んなシーンで活躍できるデザインが魅力です。今後のグッズ展開も期待してしまいますね。

藤戸の歴史と共にこれまでも、これからも

今回、話をうかがって感じたのは「藤戸まんぢゅう」は藤戸寺の歴史と供養の心、職人の仕事、地域の暮らしが長きにわたり重なり合って形づくられてきたということ。少し大袈裟かもしれませんが、もはや「小さな文化財」と呼んでもいい存在ではないでしょうか。この小さな一口大のまんぢゅうとそれを見守るまちには、戦の世から現代まで続く祈りと日常が、静かに息づいています。

 

【藤戸饅頭本舗 本店】
所在地:岡山県倉敷市藤戸町藤戸48
TEL:086-428-1034
営業時間:8:00〜17:00
休業日:火曜日、第2水曜日
※商品がなくなり次第閉店の場合もあります。

【藤戸饅頭本舗 串田店】
所在地:岡山県倉敷市串田919-3
TEL:086-485-3221
営業時間:8:00〜17:00
休業日:火曜日、第2水曜日
※商品がなくなり次第閉店の場合もあります。
藤戸まんぢゅう|公式Instagramはこちら→https://www.instagram.com/fujitomanjyu/

どこで買える?

岡山県を代表するお菓子のひとつだけあって、多くの店舗で購入できます。県内では天満屋(店舗限定)、岡山高島屋、おみやげ街道(JR岡山駅、JR倉敷駅)スーパーマーケット(ニシナ、マルナカ)、サービスエリアなど。東京の「とっとり・おかやま新橋館」、大阪の倉敷市アンテナショップ「クラシキ」(KITTE)でも販売しています。

※店舗や販売日などの制約がある場合もあります。

周辺のみどころ|源平合戦ゆかりの地

「藤戸饅頭本舗本店」は、馬に乗って海を渡り平家軍と戦ったとされる武将・佐々木盛綱の銅像がある「盛綱橋」のたもとにあります。この辺りは1184年に源平の「藤戸合戦」があった地で、多くの史跡が残っています。
藤戸寺をはじめ、経ヶ島(きょうがしま)や笹無山(ささなしやま)など、気候の良い時期には自転車やウォーキングで巡ってはいかがでしょうか?倉敷川沿いの藤棚、藤戸寺の「平家物語」で有名な沙羅双樹や桜、紫陽花など季節の花も楽しめます。

紹介したスポットの場所(地図)

  • 藤戸饅頭本舗 本店
  • 藤戸饅頭本舗 串田店

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この記事を書いたライター

イマオカ マコト

広島県~東京を経て岡山県に30年在住。広告業界で活動し、県内の様々な魅力と出逢っています。
自身のテーマは「少年の心を持ったオヤジでいたい」。CARP、お酒、車旅が好きで、小さくて古い4WD車と小さなバイクで走り、パワー・癒し・文化的スポット、時には食や名物なども紹介します。
場所や人を繋ぐお手伝いができ、そこで何かを発見していただけたら最高です。

イマオカ マコト

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