日本刀の聖地「備前長船刀剣博物館」の全て!刀剣グッズお土産処もご紹介
備前長船刀剣博物館のある瀬戸内市長船地域は、鎌倉時代前期から刀作りの盛んな地で現存する重要刀剣の約半数がここ長船で作刀されたものなんじゃ。 日本刀の聖地としてここ備前長船刀剣博物館には、日本全国・海外からも多くの刀剣ファンが訪れておる。 備前長船刀剣博物館にはいったいどんな魅力かあるのか、岡山戦国武将隊の武将と姫たちがご案内してまいろう。はずせない近くの刀剣お土産処もご紹介。
- ライター
- 岡山戦国武将隊
- 掲載日
- 2025年12月12日
目次
備前長船が「刀剣の里」と呼ばれる理由は?
備前国では平安末期から刀作りが盛んになり、「古備前」と呼ばれる刀工群が登場したのじゃが、この頃から長船周辺でも刀作りが始まっていたと考えられておる。鎌倉前期には長船の福岡という地で、福岡一文字派といわれる刀工集団が生まれた。鎌倉後期には長船派といわれる刀工集団が生まれ、戦乱が続き刀剣需要が急増し全盛期となる。室町時代になっても戦乱が続いたことで大量の刀が必要とされ、長船では分業制による量産が行われるようになったのじゃ。
その結果、質の高い名品と並び、実用品としての刀も数多く作られていた。戦乱が落ち着くと実戦用刀の需要は減少し長船の刀作りも衰退していった。このように長船地域は日本刀の「量と質」の両面で頂点を極めた刀剣の里であり、数百年にわたり日本刀の中心的存在であり続けた地なのじゃ。
備前長船刀剣博物館とはどんなところ?
日本刀を専門に展示する全国でも珍しい博物館。 刀の展示を見るだけでなく、どのように刀が作られているのかを初心者でも分かりやすく刀剣の知識を深めることができる展示コーナーもある。また、敷地内にある鍛刀場や工房で常駐の刀職者が実際に作業する様子を見学できる。見る・聞く・触れるだけでなく体験もできる刀剣総合博物館である。では、武将と姫が博物館をご案内してまいろう。
情報コーナー「刀剣の世界」
まず、入口を入り正面のチケット売場で入館券を購入。その右側には刀作りの様子を一からわかりやすく解説している情報コーナー「刀剣の世界」がある。「刀ってどうやって作るの?」「どこを見ればいいの?」をやさしく動画やパネルで説明されておる。初心者の方はまず、ここで刀の仕組みを学んでから本物を見ると、理解がより深まりますぞ。ここで予備知識を得たあとはいよいよ実物の刀を見てまいろう。
1階展示室
入口を入り左を見ると刀が展示されている部屋が見える。この展示室には実物の刀がずらーっと並んでおる。長船で活躍した代表的な刀工たちが作刀した刀が展示されており、その刀工の特徴や時代など、長船の刀の歴史なども実物の刀を見ながら知ることができる。刀の鑑賞の仕方や刃文の見方なども解説されており初めて刀を見た方もどんどん刀の世界に引き込まれていってしまうのじゃ。
2階展示室
備前長船刀剣博物館では、年間を通じて多彩な企画展示が開催され、日本刀の魅力を多角的(過去の企画展を例にとると学術的な刀剣用語、赤羽刀や、エヴァンゲリオン、戦国BASARA、刀剣乱舞などのアニメやゲーム、ふなっしーなどとのコラポ)に紹介しておる。これらの展示は、歴史的背景や技術、文化的意義などを深く掘り下げることを目的としており、いつ来ても興味深い内容になっておるんじゃ。
国宝「太刀 無銘一文字(山鳥毛)」
忘れてはならないのが備前長船刀剣博物館が所蔵する国宝に指定されている「太刀無銘一文字(山鳥毛)」じゃ。
鎌倉時代中期に備前国福岡で活動していた福岡一文字派の刀工によって作られたとされ、上杉謙信・景勝親子の愛刀としても知られておる。瀬戸内市が購入し、2020年3月22日より年1回程度の展示公開が行われておる。次回公開は令和8年3月の予定ということじゃ。一度実物を見れば鳥の羽のように見える美しい刃文に必ずや魅了されるであろう。
備前おさふね刀剣の里・刀剣工房
備前長船刀剣博物館のある備前おさふね刀剣の里には「刀剣工房」が併設されておる。刀匠・白銀師・金工師・研師・鞘師・塗師・柄巻師・など日本刀制作の各工程を実際に職方(刀剣・刀装具の制作・修復・仕上げを担う職人を指します。)の作業しているようすが見学可能なのじゃ。では、それぞれの行程や職方さんをご紹介してまいろう。
刀匠(とうしょう)
刀匠とはたたら製鉄から得られた玉鋼を材料に日本刀の素材を鍛え、焼き入れ、研ぎ、銘を切るまでの刀身を作る専門職のことじゃ。安藤広康(あんどうひろやす)刀匠が常駐しており日本刀作りの鍛錬などの一連の作業を間近に見学することが出来る。安藤刀匠は現代刀職展で数々の優秀賞を受賞されておる刀匠で、お話をお聞きするとやはり焼入れの時が日本刀作りが成功するか失敗するか決まるので一番緊張すると。未だ自分で満足できる刀はできていないとおっしゃり、日々研究に明け暮れていると。じゃが、一連の作業はどの作業も楽しいという。安藤刀匠は一見怖そうに見えるが、とても優しい気さくなお方なので来館の折には話しかけられてみるとよろしかろう。作刀に関するいろんなお話を聞くことができるやもしれぬ。
白銀師(しろがねし)
「白銀」とは銀や金属を指す言葉で、刀剣の外装(拵=こしらえ)の中で、主に金属部分を担当し刀の装飾金具や補強具を製作する職方なんじゃ。白銀師がいなければ刀は「鞘に納まらず、武器としての実用や装飾美を持てない」存在になってしまう。常駐の武藤 健(むとう たけし)殿と定期公開の小池 哲(雅号:重之)殿のお二人が作業を公開しておる。
武藤殿にお話をお聞きした。「私たち白金師は鉄以外の金属を扱います。鎺(はばき)だけではなく縁・頭・目貫・鐺(こじり)・切羽なども作ります。依頼主の要望に如何にして応えるか常に考えながら仕事をしてますが、それがとても面白い。」と。武藤殿はとてもお話が上手な方で金工のことだけではなく、刀のお話もとても興味深いものであった。
装剣金工師(そうけんきんこうし)
鍔(つば)、縁頭、目貫などの金具を作る装飾金工の職人。象嵌の技術なども使い美術工芸の要素が強い。また刀に信仰的・芸術的価値を付与するために刀身に彫物を施す職人は金工師とよばれる。常駐の片山 重恒(かたやま しげつね)殿が作業公開をおこなっておる。片山氏によると、「刀匠を目指して岡山に来たのですが、ここ備前長船刀剣博物館で師匠の刀身彫刻をみて感激したのと同時に装剣金工というものがあると知りこの世界に入りました。新しいデザインなど今までなかったようなものを作ってみたい。」とおっしゃっておった。手元にはデッサンノートがあり、刀身彫刻や鍔などの新作デザインがたくさん入っておった。また、彫金を自分でもやってみたいという方は直接片山殿に話してみられるとよかろう。この場所で初心者向けに教室もやられておるそうじゃ。
研師(とぎし)
日本刀を美しく、そして正しく見せるために研磨(とぎ)を行う専門職。刀匠が鍛えた刀は焼き入れのままでは刀身が白っぽく曇っており、刃文や地肌もはっきり見えぬ。そこで研師が仕上げることで、刃文や地鉄の美しさが際立ち、刀剣本来の姿が現れるのじゃ。実用的にも、刃を研ぎ澄ますことで切れ味が整えられるのじゃ。横山 智庸殿、安井 隆之殿の2名の研師が定期公開をおこなっておる。横山殿にお話をおききすると、「刀匠の作った現代刀から研ぎ直しの刀まで様々な刀が持ち込まれます。研ぎ直しは研ぎすぎてもダメで、最小限の研ぎで刀をまた甦らせます。」という。砥石も荒いものから細かいものと大小数多くの種類の砥石がありそれを使い分けておるそうじゃ。とても細かく気を遣う仕事じゃと思うた。
柄巻師(つかまきし)
柄巻師(つかまきし)とは、刀の外装を作る職方その一つで、日本刀の柄(つか)に糸や革を巻き付けて仕上げる職人のことなんじゃ。見た目の美しさだけでなく、実用性と耐久性を兼ね備えた重要な役割を担う。高見 信夫(たかみ のぶお) 殿が定期公開の柄巻師として作業を公開しておる。1988年にこの道に入られたそうじゃ。幅広の平紐を捻りながらただ巻いているのではなくて、よく見てみると何と細いひもを何本も使って編み込むように巻いておられたのじゃ。交差しているところはとても複雑で見た目もとても美しく、外側からみえないように和紙を詰めておる。こうすることによってとても握り心地が良くなり手になじむ柄になるということじゃ。目に見えぬところまでに気を使うまさに職人芸じゃ。
鞘師(さやし)
鞘師とは日本刀などの 鞘(さや)を専門に作る職人のことじゃ。刀剣を構成する部品の中でも、鞘は刀を保護し持ち運ぶために不可欠であり、刀の美観にも大きく関わるものなんじゃ。刀身にぴたりと合う内部構造を削り出し、刀を確実に保持しなければならぬ。鯉口(こいぐち)、栗形(くりがた)、鐺(こじり)など金具との調和も大切なんじゃ。石崎 三郎(いしざき さぶろう)殿が定期公開をおこなっておる。石崎殿は1969年(昭和44年)から師匠に師事し、鞘一筋の数々の賞を受賞されておる職方さんなんじゃ。石崎殿にお話をきいてみた。「鞘の材料は朴ノ木を使います。加工しやすい木材ですが、伐採してから約10年くらい寝かせてからではないと使えません。刀を確実に保持するため刀身にぴたりと合う内部構造を削り出すことがとても重要で気を遣います。」とおっしゃっておった。
塗師(ぬし)
塗師は、主に鞘(さや)や刀装具の表面を漆(うるし)で仕上げる職人で、日本刀制作における重要な職方の一つなんじゃ。現在、岸野 輝仁(きしの てるひと)殿が博物館の常駐塗師として作業公開をおこなっておる。塗師の仕事についてお聞きすると「鞘に漆を塗る工程は約50工程あります。塗っては磨ぎ、塗っては磨きの繰り返しです。ただ塗るだけではなく、鞘師さんと部位によって塗りの厚さなどの綿密な打ち合わせをして作業にかかります。あと、鞘師さんの作った鞘の形を細かい部分まで塗りの厚みなどで変えないように仕上げることも大切です。」とお話くだされた。ここで漆を塗るときや、乾燥させる時には埃が鞘につかないようにとても気をつかわれておった。皆様も塗りの作業中に出くわした時には埃をたてぬよう気をつけて見学なされよ。
昔ながらの古式鍛錬を公開
古式鍛錬(こしきたんれん)」とは、日本刀を製作する過程の中で、伝統的な手法で鋼を高温で加熱し、大鎚でたたき延ばす鍛錬(打ち延ばし・折り返し鍛錬など) の技術・工程を指すのじゃ。特に刀身の内部組織を精練し、不純物を排除したり、鋼の均質性を高めたりして、強く、しなやかで切れ味のよい刀を作るための肝となる部分じゃ。月一回第2日曜日に刀匠が持ち回りで担当して「折り返し鍛錬」の公開実演が行われておる。大槌を振り上げ鉄に打ちつけるとき火花が飛び散り大迫力!見学するには、必ず予約をして備前長船刀剣博物館に入館して受付を済ませ、貸し出される保護眼鏡を着用しての見学となる。刀匠のかたも説明して下さるので刀作りを実際に見て理解することができるのじゃ。
今泉俊光刀匠記念館
今泉俊光刀匠(故人)は備前刀復興の祖といわれ、昭和20(1945)年長船に鍛刀場を開設し伝統的な備前刀を中心に本格的な作刀研究に取り組み、衰退の危機にあった備前長船刀を復興させたお方じゃ。現代においてもその技術を継承し続ける文化的存在としても評価されている刀匠で、素材づくりから工夫を重ね、刃文に鎌倉時代の味わいのある独自の風格ある作風を示したのじゃ。今泉俊光刀匠の功績を顕彰し数々のオリジナルの道具類を展示した記念館となっておる。
刀剣グッズお土産処①ふれあい物産館
備前おさふね刀剣の里の敷地内にあるお土産処。刀剣グッズを中心に扱い、国宝山鳥毛関連のグッズなどここでしか買えない刀剣グッズが人気じゃ。武士や侍ゆかりのお土産、瀬戸内市の地域特産物、さらには刀袋や下緒、刀剣のお手入れを行う打粉・刀剣油・拭い紙まで普通の土産物屋とはまったく違う商品が並んでおる。また、隣の部屋には刀剣特設コーナーがオープンしたばかりじゃ。ここには模造刀が壁にズラリと並び、なんと真剣(現代美術刀剣・アンティーク刀剣)も販売されておる。まさに刀剣ギャラリー。刀剣博物館に来てここに来れば本物の刀も買えてしまうのじゃ!目を引いたのは、「刀剣の材料・素材ガチャ」と単眼鏡ならぬ「単眼刀・山鳥毛」。刀剣好きの方は見て回るだけでも楽しいお店じゃ!
所在地:岡山県瀬戸内市長船966
TEL:0869-66-7550
営業時間:9:00~17:00
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日)、12月28日~1月4日、刀剣博物館展示替え時
刀剣グッズお土産処②アイリーミヤモト
備前長船刀剣博物館近くのジュエリー・メガネ・着物を扱っているお店で、2022年8月から日本刀の素材である玉鋼(たまはがね)を使ったジュエリーを展開。異素材との融合は、大変苦労があったそうじゃが、何度も試行錯誤を繰り返し、備前長船刀剣博物館におられる刀鍛冶が玉鋼から鍛鉄を作り、塗り師が漆を塗り、ジュエリー職人が普段から身に着けられるよう細かく加工しておられる。つまりは作刀の技術がこの小さなジュエリーに詰まっておるのじゃ。また、国宝「太刀無銘一文字(山鳥毛)」とのコラボ商品で京都西陣織で山鳥毛の刃文のデザインされた帯も人気で、刀剣を愛するファンにとってはどれも欲しくなってしまう逸品がならんでおるお店じゃ。新規商品として山鳥毛クッションがリリースされておる。
所在地:岡山県瀬戸内市邑久町豊原94-1
TEL:0869-22-0206
営業時間:10:00~19:00
定休日:水・木曜日
おしまいに
備前長船刀剣博物館を全てまわってみたがいかがであったろうか。まさに刀にまつわる全てを網羅しておる楽しき場所であった!刀マニアにとっては天国。なんせ全ての職方がおりいつ行っても刀の作られている様子を実際に見ることができるという日本中探してもここしかないであろう。またこれから刀を知りたい、刀に興味があるという方にもうってつけの場所じゃ。備前長船刀剣博物館では体験講座として、小刀製作・ペーパーナイフ製作・日本刀手入れなどの講座も行っておる。日本刀の聖地・刀剣の里とよばれる長船にぜひ一度お越しくだされ。
【備前長船刀剣博物館】
所在地:岡山県瀬戸内市長船966
TEL:0869-66-7767
営業時間:9:00~17:00
定休日:月曜日(休日の場合は翌平日に振り替え)、祝日の翌日(土曜日・日曜日は除く)、年末年始(12月28日~1月5日)、展示替え時
地図
- 備前おさふね刀剣の里 備前長船刀剣博物館
- 備前おさふね刀剣の里 長船ふれあい物産館
- アイ・ミヤモトジュエリー
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