岡山・雄町米の酒蔵巡り
酒造りが息づく岡山は、温暖な気候と清らかな水、そして受け継がれる杜氏たちの技に恵まれた地です。蔵元を訪れれば、杜氏たちの思いが込められた一杯が皆さんを待っています。
土地の個性とともに味わう、ここならではの地酒の旅へ出かけませんか。
目次
岡山は全国有数の酒どころ
岡山は、酒造りに欠かせない良質な米と、三大河川が育む澄んだ水、温暖な気候に恵まれた土地です。
さらに、江戸時代後期には「備中杜氏」が卓越した技を確立し、その名は全国に広まりました。
こうした豊かな風土と杜氏たちの技が受け継がれ、岡山の地酒は今も国内外で高い評価を得ています。
幻の酒米と呼ばれる「雄町米」とは
雄町米は1859年、偶然見出され、岡山で栽培が始まった日本最古といわれる原生品種の酒米です。
山田錦や五百万石といった全国で知られる酒米のルーツとなった品種でもあります。
大粒で「心白」が大きく柔らかいため、麹菌が入りやすく、豊潤なうま味と奥行きを生む最高峰の酒米として全国の酒蔵に愛されてきました。
一方で、背丈が高いので倒れやすく、病害虫にも弱いことなどから栽培が難しいため、戦後の食糧事情も重なり作付けは急減。
1973年には作付面積が約3haにまで落ち込み、「幻の酒米」と呼ばれるほど希少な存在となりました。
しかしその後、県内で雄町米の価値が再注目され、2019年には約600haまで回復するなど、県内各地で雄町米の栽培が復活しました。
今では全国生産量の約95%を占める雄町米の主要生産地として、日本酒文化を支え続けています。
「雄町米」の酒を醸す「辻本店」へ
勝山は出雲街道の宿場町・城下町として栄え、白壁の土蔵や格子窓の商家が残る町並み保存地区。
町中には象徴となった多彩なのれんが揺れ、旭川沿いには室町期から続く高瀬舟の発着場跡が約700mにわたり残されています。
1804年創業、真庭市勝山に蔵を構える「辻本店」は、看板銘柄「御前酒1859」「美作」などで知られる岡山を代表する酒蔵です。
酒造りの原点に立ち返るべく、伝統の「菩提酛(ぼだいもと)」の製法にも蔵独自で取り組み、唯一無二の個性を追求しています。
直営のレストランとショップ「お食事処 西蔵」「SUMIYA」も併設し、酒と食、地域文化を一体で楽しめる旅の目的地としても人気です。
また、2025年10月にフランス・パリで開催された「Salon du Saké 2025」で、「御前酒1859」が最高賞を受賞し、海外からも注目される酒蔵のひとつとなっています。
「辻本店」が雄町米にこだわる理由
今回は、雄町米の酒造りについて、「辻本店」杜氏・辻麻衣子さんにお話を伺いました。
「雄町は、とてもデリケートなお米なんです」と辻さん。「吸水が本当に難しくて、15秒違うだけで仕上がりが変わるんですよ」。
洗米後の吸水を秒単位で管理し、一度に水に浸ける量も変えながら、日々最適を探る…。そんな緻密な仕事が続きます。
さらに雄町米は原生種に近く成熟にばらつきが出るため、扱いの難しさも。
「手がかかる子なんです」と笑う一方で、「思ったよりうま味が出たり、寝かせたらぐっとまろやかに化けることもあって、それが酒造りをしていてすごくおもしろいです」と目を輝かせます。
こうした酒米に正面から向き合い、「辻本店」は2022年、原料米の全量を雄町米に切り替えました。1995年から積み重ねてきた挑戦です。
鍵となったのは、雄町米の中で、本来酒造りに使用されない規格外の米への注目。
「最初は心配だったんですけど、むしろいい麹ができて。やっぱりお米の形が麹菌の入り方に合っているんでしょうね」。
その気付きにより、手に取りやすい価格帯のお酒から大吟醸クラスまで、新たな雄町米の魅力が花開きました。
「今まで気づけなかった雄町米の魅力を、きちんと伝えていきたい」と語る辻さん。
雄町米を通した酒造りに、杜氏をはじめ酒蔵の皆さんは真摯に向き合う日々を重ねているのです。
「お食事処 西蔵」で日本酒ペアリングを楽しむ
「お食事処 西蔵」では、蔵自慢の日本酒と料理のペアリングを気軽に楽しめます。
今回は、「西蔵膳」(要予約)3,000円の各料理に合わせてセレクトいただきました。
「先付3種盛り」には、肉や魚とも相性のいい「御前酒1859」を。
甘み・辛み・酸味のバランスがよく、各品それぞれの味をすっと引き立てます。
そしてメインの「銀鱈の粕漬け」には「美作」を。
昔ながらのうま辛口が、粕のコクと銀鱈の香りをきりっとまとめ、余韻を心地よく締めくくってくれます。
※価格は2025年11月26日現在のものです。
雄町米の酒造りを学ぶ体験・見学ツアーも
老舗酒蔵「辻本店」の酒造りに込められたまっすぐな思い、伝わったでしょうか。
併設の「お食事処 西蔵」で、できたての地酒とともに、蔵元の息吹を感じる一杯をぜひ楽しんでください。
また「辻本店」では、予約制の「御前酒体験ツアー」1,500円~や毎年春・秋開催の「御前酒まつり」、さらには雄町米の田植えや稲刈り体験など、参加型の取り組みも充実しています。
公式サイトから最新情報をチェックして、ぜひ雄町米の酒造りの現場にぐっと近づいてみてください。
御前酒蔵元 辻本店 基本情報
所在地:岡山県真庭市勝山116
TEL:0867-44-3155
営業時間:直営ショップ:10:00~17:00 ※カフェ、食事処の営業時間は公式サイトをご確認ください。
定休日:木曜日、年末年始
駐車場:普通車6台(大型車可)

「御前酒」をより深く知る体験ツアー「Gozenshu Experience」を2コースご用意。
①「そやし水」(約600年前に始まり、「御前酒」が復活させた菩提酛づくりに欠かせない乳酸水)の試飲や瓜の酒粕漬けを試食ができます。実際に使っている麹や米を見るなどの体験を通じて、「御前酒」の酒造りを説明します。
[体験名]GOOD PLAN(グッド プラン)
[所要時間]40分
[料金]1,500円
[定員]1名様よりお申し込み可
[締切り]開催2日前13:00まで(上限人数に達した場合、早期に申し込みを終了いたします。また締め切りを過ぎてもご案内可能な場合がございますので、その際はお電話にてお問い合わせください)。
②実際の酒蔵見学を通して、酒造りを説明します。また、試飲も温度帯などの条件を変えて、お酒がどのように変化するのかを体感していただきます。
[体験名]SURPRISING PLAN(サプライジング プラン)
[所要時間]1時間40分
[料金]5,000円
[定員]1名様よりお申し込み可
[締切り]開催2日前13:00まで(上限人数に達した場合、早期に申し込みを終了いたします。また締め切りを過ぎてもご案内可能な場合がございますので、その際はお電話にてお問い合わせください)。
エリア別 雄町米の日本酒を醸す酒蔵を巡ろう
雄町米を使う蔵は、県内に点在しています。
それぞれの土地と水、つくり手の思いが息づく蔵へ、ぜひ旅の途中に立ち寄ってみてください。
ーーー備前エリアーーー
ーーー備中エリアーーー
- 嘉美心酒造
- 所在地:岡山県浅口市寄島町7500-2
TEL:0865-54-3101 
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- 菊池酒造
- 所在地:岡山県倉敷市玉島阿賀崎1212
TEL:086-522-5145 
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- 熊屋酒造
- 所在地:岡山県倉敷市林705
TEL:086-485-0007 
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- 三冠酒造
- 所在地:岡山県倉敷市児島下の町2-9-22
TEL:086-472-3010 
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- 三光正宗
- 所在地:岡山県新見市哲西町上神代951
TEL:0867-94-3131 
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- 十八盛酒造
- 所在地:岡山県倉敷市児島田の口5-6-14
TEL:086-477-7125 
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- 白菊酒造
- 所在地:岡山県高梁市成羽町下日名163-1
TEL:0866-42-3132 
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- 平喜酒造
- 所在地:岡山県浅口市鴨方町鴨方1283
TEL:0865-44-2122 
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- 芳烈酒造
- 所在地:岡山県高梁市有漢町有漢2535-1
TEL:0866-57-2003 
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- 丸本酒造
- 所在地:岡山県浅口市鴨方町本庄2485
TEL:0865-44-3155 
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- 山成酒造
- 所在地:岡山県井原市芳井町簗瀬23
TEL:0866-72-0001 
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- 渡辺酒造本店
- 所在地:岡山県倉敷市連島町亀島新田170
TEL:086-444-8045 
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ーーー美作エリアーーー
雄町米の日本酒を醸す酒蔵MAP
- 御前酒蔵元 辻本店
- 板野酒造場
- 利守酒造
- 萬歳酒造
- 酒工房 独歩館
- 室町酒造
- 嘉美心酒造
- 菊池酒造
- 熊屋酒造
- 三冠酒造
- 三光正宗
- 十八盛酒造
- 白菊酒造
- 平喜酒造
- 芳烈酒造
- 丸本酒造
- 山成酒造
- 渡辺酒造本店
- 落酒造場
- 多胡本家酒造場
- 田中酒造場
- 難波酒造
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「晴れの国おかやま館」の地酒コレクション
岡山市の表町商店街にある「晴れの国おかやま館」では、今回ご紹介した酒蔵の地酒を数多く取りそろえています。
地酒のおみやげ探しに迷ったら、ぜひ足を運んでみてください。
※各商品の在庫については、店舗へお問合せください。
晴れの国おかやま館 基本情報
所在地:岡山県岡山市北区表町1-1-22
TEL:086-234-2270
営業時間:10:00~18:00
定休日:火曜日(祝日の場合は営業)、年末年始
駐車場:契約駐車場「城下地下駐車場」あり ※3,000円以上お買上の方に1時間の駐車券を進呈













































