レンタサイクルで岡山のサイクリングコース「吉備路自転車道ルート」を走ってみた(温羅伝説編)

岡山県内に沢山あるサイクリングコース。それぞれに魅力あるコースですが、実際にレンタサイクルに乗り体感してきた様子を紹介します。今回は「吉備路自転車道ルート」に点在する"温羅伝説"にまつわる場所を巡ります。
掲載日:2025年09月11日
  • ライター:大岩主弥
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ハレいろ・サイクリングOKAYAMA

岡山に幾つかあるサイクリングコース。岡山県が推奨しているコースを紹介している「ハレいろ・サイクリングOKAYAMA」というサイトがあります。
ここで紹介されているサイクリングコースはどれも魅力的。車で現地へ訪れ、スポーツサイクルに乗り換えてコースを走る人向けに紹介されているコースですが、記事では誰でも楽しめるよう近場で借りられるレンタサイクルを駆使して、サイクリングコースを堪能してみようと思います。
写真は「吉備の中山」を遠くから眺めて。

吉備路自転車道ルート

「ハレいろ・サイクリング OKAYAMA」で紹介されているサイクリングコースの中から「吉備路自転車道ルート」を走ってみました。岡山でサイクリングロードと言えば昔からこのルートが有名。子供から大人まで多くの人が気軽に楽しめるコースとなっています。アップダウンも少なくコース全長は約25km。スポーツサイクルでの所要時間は約1時間。コースの途中には古代の歴史を堪能できる史跡が点在しています。その中で、今回は「温羅伝説」にまつわる場所を中心にご紹介していきます。

JR岡山駅前で自転車をレンタル

吉備路自転車道ルートのスタートは岡山県総合グラウンドとなっていますが、レンタサイクルをJR岡山駅で借りてそこからスタートしました。JR岡山駅東口を出て右手に120m進んだ新幹線高架下にある「レンタサイクル駅リンくん」へ。レンタサイクルの利用は1回500円。
※岡山県総合グラウンドにはコミュニティサイクル「ももちゃり」のポートはありますが、吉備路方面にはサイクルポートがなく、街乗りサイクルでのロングドライブは難しいので今回は使用しません。

【レンタサイクル駅リンくん】
所在地:岡山県岡山市北区駅元町1-2
TEL:086-223-7081
営業時間:平日7:00~20:00、土曜日・休日7:00~19:00

「温羅伝説」とは

岡山の夏最大の祭りと言えば「うらじゃ祭り」。この「うらじゃ」の「うら」とは、鬼の名前「温羅」から取られています。かつて吉備の国を支配していた温羅が、大和朝廷から派遣された吉備津彦命(きびつひこのみこと)に退治されたというお話があり、皆様が良く知っている「桃太郎」の原型になったと言われる伝承です。桃太郎では鬼は悪者と描かれていますが、岡山では温羅は百済から渡って来た渡来人で、鉄の技術を伝え、吉備の国の人たちに慕われていたと言われています。「うらじゃ祭り」の名前が表す通り、温羅の存在は桃太郎と対等に扱われています。
写真は「吉備津神社」にある案内看板。

白山神社

まずは「白山神社」に向かいます。岡山駅から約4km。約30分。
温羅は吉備津彦命との戦いの末、首をはねられ、その首を首(こうべ)村にさらされたと言われています。現在の岡山市の「首部(こうべ)」こそがその場所で、地名の由来になっています。その地にあるのが「白山神社」。境内には盛り土があり、温羅の首塚(首を埋めた場所)と伝えられています。

【白山神社】
所在地:岡山県岡山市北区首部236
駐車場:なし

吉備津彦神社にある温羅神社

首部の「白山神社」から約6km。約30分。
桃太郎のモデルとして有名な吉備津彦命ゆかりの神社「吉備津彦神社」。日本一の大きさを誇る灯篭など見どころは沢山ありますが、注目したいのは境内に「温羅神社」があること。本殿に向かって左側、吉備の中山への登山道の近くにあります。2人が同じ敷地に祭られている事。とても岡山らしい場所として好きな場所です。

【吉備津彦神社】
所在地:岡山県岡山市北区一宮1043
TEL:086-284-0031
営業時間:境内拝観自由(6:00開門、18:00閉門)
駐車場:普通車100台(利用時間:6:00~18:00) ※大型車可(正月は臨時駐車場合わせて300台)
ひっそりと佇むこちらの社にも是非足をお運びください。

吉備津神社の御竃殿

「吉備津彦神社」から約2km。約10分。
仁徳天皇(大阪に大きな古墳がある有名な天皇ですね!)が吉備津彦命の功績を称えて創建されたと言われている「吉備津神社」です。長く美しい回廊が映画の撮影に使われたりと有名ですが、温羅伝説として外せないのは「御竃殿(おかまでん)」。
首村にさらされた温羅の首は夜になるとうなり声を上げ、それが何年も続いたそうです。村人たちは温羅の怨念を怖れ、吉備津彦命が吉備の中山のふもとにある土かまどの下に首を完全に埋めたという伝説があります。それがこの「御竃殿」です。
しかし埋めた後もうなり声は収まらず、吉備津彦命の夢枕に立った温羅のお告げで、『吾が妻、阿曽郷の祝の娘阿曽媛をしてミコトの竈殿の御饌を炊がめよ。もし世の中に事あれば竃の前に参り給はば幸有れば裕に鳴り禍有れば荒らかに鳴ろう。ミコトは世を捨てて後は霊神と現れ給え。われは一の使者となって四民に賞罰を加えん』と聞き、そのお告げの通りにすると、唸り声が治まり平和が訪れたとの話。(『』内、吉備津神社公式サイトより引用)

これが今も「吉備津神社」で行われている鳴釜神事の起源とされています。

私が行った際はたまたま神事が行われた後で、竃が炊かれている様子、そこに漂う独特の香り、空気を感じることが出来ました。御竃殿内は写真撮影禁止のため、こちらでご紹介は出来ませんが、ご興味ある方は神社にお問い合わせください。

【吉備津神社】
所在地:岡山県岡山市北区吉備津931
TEL:086-287-4111
営業時間:境内拝観自由(授与所9:00~16:00/祈祷受付時間9:00~14:30)開門5:00、閉門18:00
駐車場:普通車400台、大型車4台

楯築遺跡

「吉備津神社」から約11km。約1時間。
吉備津彦命が温羅との戦いで築いた楯の跡と言われている「楯築遺跡(たてつきいせき)」。
日本最大の弥生墳丘墓で、奇妙な形の岩が円状に並べられたストーンサークルは、現在パワースポットとしても人気があるそうです。周りには古墳も多く、いったいどれほどの人物がこの地を治めていたのか。今も研究が続いているそうです。

【楯築遺跡】
所在地:岡山県倉敷市矢部

鯉喰神社

「楯築遺跡」から2km。約10分。
鯉喰いの伝説が残る「鯉喰神社」。以降この伝説に関わる地を幾つか周るので少し詳しく書きます。

吉備津彦命が陣を構えたのが吉備の中山。温羅が陣を構えたのが鬼ノ城。2人はそこからお互いに矢を放ちます。温羅からの矢を防ぐために作った楯が残されていたのが「楯築遺跡」で、お互いの矢がぶつかり合って落ちたところが「矢喰宮(やぐいのみや)」。お互いの力が拮抗しているところで、吉備津彦命は一計を案じます。矢を2本つがえて放ったのです。1本は温羅の放った矢に落とされますが、残った1本が温羅の左目を突き刺します。温羅の目から流れた血が「血吸川(ちすいがわ)」を赤く染めます。危機を悟った温羅は雉に姿を変え逃げ、吉備津彦命は鷹に姿を変え追いかけます。温羅は更に鯉に化け、血吸川に逃げ込みますが、鵜になった吉備津彦命についにつかまりました。

長くなりましたが、その鯉を捕まえたこの地に建てられたのが「鯉喰神社」という訳です。御祭神は「楽々森彦命(ささもりひこのみこと)」桃太郎のお供の猿のモデルと言われています。そして、実は温羅も御祭神。岡山では温羅は神様として愛され続けています。

【鯉喰神社】
所在地:岡山県倉敷市矢部109

矢喰宮の矢喰の岩

「鯉喰神社」から約4km。約30分。
吉備津彦命と温羅の放った矢がぶつかって落ちた場所という伝説が残る「矢喰宮(やぐいのみや)」。吉備の中山と鬼ノ城のちょうど中間地点にあります。温羅は矢を放つだけでなく、岩も投げつけたという伝説があり、矢とぶつかった岩がここに落ちたと言われています。それが「矢喰の岩」で、今も見ることが出来ます。

【矢喰宮
所在地:岡山県岡山市北区高塚
TEL:086-803-1332(岡山市観光振興課)
駐車場:あり

温羅の血で赤く染まった血吸川

「矢喰宮」のすぐ近くに「血吸川」が流れています。ここから「足守川」に抜け、温羅が逃げていった様子を地図を見ながら想像すると、とても面白いです。

まとめ

「矢喰宮」から「JR岡山駅」までは約18km。約2時間で戻ることが出来ます。
今もそのままの名前の史跡が残され、「温羅伝説」を辿ることが出来る「吉備路自転車ルート」いかがでしたでしょうか。興味が湧いた方は是非足をお運びください。「吉備路自転車ルート」は1日あればゆっくり周っても十分満喫出来るコースですが、今回行かなかった古墳時代や戦国時代を辿れる場所もあるので、テーマを決めて巡るのもおススメです。

「温羅伝説」としては「吉備路自転車ルート」から少し離れる「鬼ノ城」と、その周りにある「阿宗神社(あそうじんじゃ)」、「鬼の釜」、「鬼の岩屋」には訪れませんでした。レンタサイクルでは「鬼ノ城」のような山道を行く事を禁止されているお店もあるので、もし行かれる場合は確認の上向かってくださいね。景色と歴史、是非お楽しみください。
写真は吉備路自転車ルート沿いにある、桃太郎の桃が流れてきた川と言われいる「笹ヶ瀬川」。
 
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