日本遺産に認定!「石の島」北木島~絶景と石の文化体験~(笠岡市)
岡山県の南西部に位置し、笠岡諸島で最も大きい島「北木島(きたぎしま)」。古くから良質な花崗岩(かこうがん)を産出し、「石の島」として日本遺産に認定されています。美しい瀬戸内海を眺めながらフェリーで片道約1時間。石切りの歴史が学べるミュージアムをはじめ、フォトジェニックな島グルメ、迫力ある採石現場や絶景など観光スポットが多く、近年国内外の旅行者から注目されています。
今回は、JALふるさとアンバサダー※(岡山県担当)の下田美紀(しもだみき)さんとスタンフォード大学経営大学院在籍中のモニカ・マローンさんが、岡山県国際課の国際交流員2名(カラン・スタークさんとカロリーナ・ヴァシレースカさん)と共に、その魅力に迫ります。
※客室乗務員がゆかりのある地域に移住し、地域資源を活用した商品やツアーなどのコンテンツの創出、地域課題に対する企画提案などを行う取り組みです。また、今回の北木島訪問の記事はJALの旅コミュニティ「trico」でも紹介されています。記事はこちら≫
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- ライター
- おか旅編集部
- 掲載日
- 2025年11月20日
目次
伏越(ふしごえ)港から北木島へ
旅の始まりはJR笠岡駅から徒歩約15分の伏越(ふしごえ)港から。
北木島に行く方法はフェリーと旅客船の2種類があり、フェリーの場合は伏越港、旅客船の場合は住吉(すみよし)港から出航します。
なお、フェリーの場合は船内で旅客運賃を支払うスタイルなので、伏越港には券売機がありません。
旅人の4人は、船の到着を今か今かと待っています。
いよいよ乗船。下田さんは、笠岡諸島への旅は「飛島(ひしま)」に続いて2回目。一方、モニカさんは日本の島を訪れるのは今回が初めて!
どんな経験ができるのか今からワクワクしています。
船内に入ると、まもなく船員が集金にやってきました。「並ばなくて良いので便利ね」と、笑顔のモニカさん。
お天気にも恵まれ、船は順調に運行を継続。笠岡諸島をはじめ、ここでしか見られない瀬戸内海の島々の様子が楽しめます。一行はデッキに出て、すれ違う船に手を降ったり、記念撮影をしたりして楽しみました。モニカさんは「海外では岩肌だらけの島が多いけど、日本は緑豊かな島が多いのね」と興味深く眺めていました。
船に揺られて約1時間。途中、白石島(しらいしじま)を通過後、いよいよ北木島の豊浦(とようら)港に到着します。
日本遺産にも認定された「石の島」
北木島は、瀬戸内三大銘石の一つ「北木石」の産地として有名。その品質の良さから日本国内の歴史的名建築の造営にも多数利用されています。そうした功績が認められ、2019年7月、「知ってる!? 悠久の時が流れる石の島~海を越え、日本の礎を築いた せとうち備讃諸島~」として日本遺産にも認定。現在、「石の島」として国内外に広く知られる存在となりつつあります。
快適な島時間をサポート!観光拠点「K's LABO」
北木島には豊浦港、金風呂(かなふろ)港、大浦(おおうら)港、楠(くすのき)港と、4つの港がありますが、フェリーの着く豊浦港から金風呂港周辺が最も観光スポットの豊富なエリアです。最初に訪れたのは、島の観光拠点となる施設「K's LABO(ケーズラボ)」です。
同施設は、島の石材会社がかつての石工場を改装してオープンした複合施設で、館内には島の石材業の歴史がわかるストーンミュージアムのほか、ドリンクやフードと共にゆったりした島時間を楽しめるカフェが併設されています。
また、シーカヤックやSUP(サップ)などマリンアクティビティグッズのレンタルやレンタサイクルなどもあり、快適な島時間をサポートしてくれます。
ストーンミュージアムで「石の島」の歴史を学ぶ
まずは、「K's LABO」の館内にあるストーンミュージアムで島の採石業の歴史などについて学びます。
今回、島を案内してくれるのは、北木島で唯一現役の採石場を運営する鶴田石材のスタッフ関谷(せきたに)さんです。関谷さんの話を聞きながら、館内のパネルの一つひとつを興味深く見つめる4人。北木石が、大阪城の石垣や日本銀行など、自分の知っている建物に使われていることを知り、「いつか北木石が使われた施設を見に行ってみたい」とモニカさんは目を輝かせていました。
地元素材を生かしたフォトジェニックな島カレーに舌鼓♪
見学の後は、カフェでランチタイム。窓から海や港の風景の見える開放的でスタイリッシュな空間は、島での休憩にぴったり。カフェは2階テラスと共に貸切レンタルルームとしても活用できるそうです。席に着くと、ヤシの木のオブジェがのった島カレーが登場。
「わあ!」という歓声の後、一口食べた一同は目を丸くして「Delicious!」と口々にコメント。
「養鶏が盛んな笠岡らしいチキンカレー!マイルドで辛すぎないところが良いですね」と下田さん。モニカさんも「このカレー本当に気に入ったわ!日本はお米がもちもちしてごはんがとても美味しい」と感激していました。
お腹がいっぱいになったところで、次の目的地に向かいます。
島の周辺は海に囲まれているため、海風に吹かれながら散歩が楽しめるのも魅力です。豊浦港からは対岸に隣の白石島が望めるほか、海岸沿いの海は透明度が高く、大小の魚が泳いでいる姿がくっきり見えるなど、島ならではの光景が楽しめます。
採石で生まれた岩肌と湖が織りなす「北木の桂林」
「K’s LABO」から徒歩約15分。関谷さんの案内で訪れたのは、かつて石を切り出していた採石場の跡地でした。
採石場は日本語で「丁場(ちょうば)」とも呼ばれ、石を四角く切り出す様子が豆腐を切る姿に似ていることから、豆腐の数え方“1丁、2丁”に由来しているのだそうです。
山肌が大きく削り取られ、岩がむき出しになった景観は圧倒的。島の採石は昭和32年頃に最盛期を迎えましたが、その後多くが操業を停止し、やがて跡地には水がたまって湖のような風景が生まれました。
特にこの場所は、中国の景勝地・桂林を思わせる山水画のような景色から「北木の桂林」と呼ばれています。
目の前に広がる迫力ある岩肌と静かな湖を前に、下田さんとモニカさんは思わずスマホを取り出し、夢中でシャッターを切っていました。
島内最大規模!丁場跡に生まれた美しい湖
次に、「北木の桂林」から徒歩数分の場所にある「丁場湖」を訪れました。最盛期には、島内に127もの丁場(採石場)があった北木島ですが、なかでも最大規模といわれている場所がこちらです。なだらかな坂道をあがると、その少し奥に美しいエメラルドグリーンの湖面が現れ、4人から、「わあっ」と歓声があがりました。湖の上に設置された牡蠣いかだのステージから、しばしその眺望を満喫。周囲には石の端材で作った観客席も整備され、近年はライブやファッションショーなどイベント等に利用されているそうです。
島内にイタリア・ベニスの景観!? 石の端材が築いた港
「実は、イタリアのベニスみたいな場所もあるんです」と関谷さん。その言葉に惹かれ、4人が向かったのは“北木のベニス”と呼ばれる小さな港でした。かつて石を積み出すために使われていた場所で、採石の端材を石垣のように積み上げてつくられた護岸が、水路沿いのベニスの景観を思わせることから、いつしかそう呼ばれるようになったそうです。
「島で採石してきたからこそ生まれた景観。マチュピチュの石積みにも少し似ているかも」とモニカさん。
一方、下田さんは「無駄を出さない発想や、石積みに込められた日本ならではの技術が活かされているのが素敵ですね」と感想を語りました。
島で唯一現役の採石場を生かした展望台
続いて訪れたのは、島内で唯一いまも現役の採石場として稼働している「石切りの渓谷展望台」です。関谷さんによれば、ここを管理する鶴田石材は1892年から採石を始め、良質な石を求めて山の上から下へと掘り進んでいったそうです。その長い年月がつくり出したのが、高さ60mもの断崖絶壁。この迫力ある風景を観光客に一般公開したのが、この展望台だそうです。
利用できるのは平日12:00〜13:00、土日祝11:00〜13:00の限られた時間のみですが、予約不要で立ち寄れるのもうれしいポイントです。
団体や時間外の見学を希望する場合は、事前に鶴田石材へ問い合わせてください。(TEL:0120-68-2120)
足がすくむ高さ60m!迫力の景観に大興奮
展望台へは、受付横の小道を進み、やや急な坂を上って約5分。たどり着いた先には、高さおよそ60mの断崖が広がっていました。足がすくむようなスリルに思わず息をのむ一行。しかしそれ以上に、切り立った岩壁とエメラルドグリーンの湖面が織りなす絶景に感激し、思わず「ヤッホー!」と声を響かせては、反響音に笑顔を見せていました。
石切りの渓谷展望台で、モニカさんは「高いのはちょっと怖かったけど、採石場を上から見下ろすスリリングで貴重な体験!眼下に広がる池が本当に美しかった」と満面の笑顔。
下田さんも「採石で切り出された崖の断面がとにかく美しく、その高い技術に驚かされました。池には島の人が放した赤い鯉もいて、つい探してしまいました(笑)」と、大満足の様子でした。
島内にかつて4館!島の最盛期を映す、映画館「光劇場」
旅の締めくくりは、旧映画館「光劇場(ひかりげきじょう)」へ。北木島が石材業でにぎわっていた頃、昭和20年代~40年代にかけて島の石工たちに娯楽を届けていた映画館です。外観は一見、普通の民家のようですが、中に足を踏み入れると小さなホールに当時の映写機や設備がそのまま残されていました。
劇場の管理人さんによると、かつて島にはなんと4館もの映画館があったそう。「本土より最先端でしたよ」という言葉からも、当時の隆盛ぶりが伝わってきます。
4人は北木石に関するドキュメンタリー(英語字幕付)を鑑賞した後、石割体験に挑戦。島の歴史とにぎわいの記憶に思いを馳せました。
一度は閉館していた光劇場ですが、約10年前に再生プロジェクトが立ち上がり、見事に復活。今では島の文化を伝える貴重な拠点となっています。
見学を希望する場合は「友の会(担当:馬越(うまこし)さん)」へ事前にご連絡ください。(TEL:090-7893-8862)
絶景と石切りストーリーに出会える「石の島」北木島
楽しい島時間もそろそろ終わり。帰りは金風呂港からフェリーに乗り込みます。半日の旅でしたが、船から望む瀬戸内の多島美に始まり、ストーンミュージアムで石の歴史を学び、フォトジェニックな島グルメを味わい、採石にまつわる絶景や歴史ある施設を巡るなど、思いがけない発見にあふれていました。
最後に2人に感想を聞きました。
「ここでしかできないユニークな体験ばかりでした。日本の歴史的なスポットといえば京都と思っていましたが、それだけじゃないと感じました。最後に訪れた映画館もとてもノスタルジックで素敵でした」(モニカさん)
「採石場を訪れたのは初めてでしたが、岩肌の迫力やエメラルドグリーンの湖面の美しさに感動しました。島の人たちもとても温かかったです」(下田さん)
最盛期には6,000人が暮らしていた北木島も、いまは人口600人ほど。しかし、石切り文化が残した歴史や採石跡の壮大な景観は、今も島の宝として息づいています。
静かに、力強く、物語を語りかける「石の島」へあなたも出かけてみませんか。
紹介したスポットの場所(地図)
- 伏越港
- K's LABO(ケーズラボ)
- 北木の桂林
- 北木のベニス
- 丁場湖
- 石切りの渓谷展望台
- 光劇場
- 金風呂港
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