“自家焙煎”にこだわる児島・藤戸のコーヒー店4選(倉敷市)
香りに誘われて扉を開ける。ひと口飲んですっと肩の力が抜ける。コーヒー店にはいろんな癒やしがありますが魅力は様々です。「豆を焙煎する人の想い」「土地とのつながり」「店内に流れる空気」「人と人とのやり取り」など多くのものが重なって、その店だけの味になっていくのだと感じます。
岡山県内には多くのコーヒー専門店やカフェがありますが、本記事ではライターが独断で倉敷市の「デニムのまち・児島」と「源平ゆかりの地・藤戸」にある、自家焙煎コーヒーにこだわる焙煎所と店舗をご紹介します。地元で長年愛されている店と新たな店、計4軒を実際に訪れて話を聞いてきました。※記事中のコーヒーの味はライター個人の感想です(各店による説明ではありません)
- ライター
- イマオカ マコト
- 掲載日
- 2026年4月30日
目次
1杯目|calma coffee roasters
児島ジーンズストリートそば、青いテントと「COFFEE」の文字。主張しているはずなのに、なんだか街に溶け込んでいる。そんな空気をまとっているのが「calma coffee roasters」です。街歩きの途中で立ち寄る人、テイクアウトの一杯を求める人、カウンターでくつろぐ人。それぞれの時間が自然に流れる心地よい場所です。
ジーンズと似たような感覚
角地に建つ「calma coffee roasters」は2025年3月オープン。人の流れがある場所でもあり自然とにぎわいが生まれています。観光で訪れた人がふらっと入ることもあれば、地元の人が仕事前や休日に立ち寄ることもあるそうです。客層も20代から50代までと幅広く、誰でも気軽に扉を開けやすい空気感。おしゃれながらも温かみがある、まるでお気に入りのジーンズみたいな感覚のコーヒーショップです。
「児島」との縁でオープン
オーナーの濱田大輝さんは大阪出身。ゲストハウスで働いていた縁から児島を知り移住。海沿いにあるゲストハウス「float」を皮切りに倉敷周辺で働きながらコーヒーに関わり、少しずつ自分の店を持つ準備を進めたとのこと。「25歳で開業」「26歳で場所を持つ」という人生設計を持ち、「きっちりした事業計画というより“こうなれたら”とゆるく思いつつ形になりました」「場所についてはやっぱり最初に来た児島がいいなと探したら、この物件にすぐ出会えて。呼ばれてたんでしょうかね」と笑います。
飲みやすさと味わいの両立
店内は一枚板の温かみあるカウンターで5人がけ。「地元の大工さんにお願いして材料を選んだら、僕のいない間にできていた」と濱田さん。取材時にいただいたオススメの「ブルンジ ニャギシル ウォッシュド」は、フルーティーで爽やか。浅煎りで飲みやすく紅茶のような風味もあって、少し冷めてもおいしい一杯でした。オープン当初は浅煎り中心でしたが、40代・50代のお客さんから深煎りのリクエストが多く、現在は深煎りもメニューに加わっています。「深煎りが好きな人にも豆の個性を楽しんでもらえるように心がけて焙煎しています」とのこと。目の前でのハンドドリップを見ているだけでも美味しいと思わせてくれます。
何かを始められる場所に
濱田さんは「まだ未使用の2階スペースも活用しながら、誰かが小さく何かを始められる場所になれば」と、コーヒー店だけではない展開も考えています。たとえばポップアップショップをしてみる、教室やイベントを開いてみるなど、大きな挑戦でなくても、やってみたい気持ちを受け止める場所にしたいのだとか。何かを始める拠点として、地域を面白くしたいという想いが伝わってきました。
ちょうどいいに出会える店
観光地にありつつ、常連もくつろげる、「calma coffee roasters」にはそんなバランスのちょうどよさを感じます。近所の方がふらっと寄ったり、下校中の小学生がのぞいたりと、オープン1年でこのまちに溶け込んでいます。
コーヒーはもちろん、カフェオレ、コーヒートニック、岩城島レモネードといったドリンクも人気。取材時にも女子3人組が濱田さんとの会話を楽しみながら、コーヒートニックとカフェオレをテイクアウトしていきました。もちろん焙煎したコーヒー豆やドリップバッグも購入できます。
児島ジーンズストリート散策に、ちょうどいい一杯が待っていますよ。
【calma coffee roasters】
所在地:岡山県倉敷市児島味野2-2-90
TEL:なし
営業時間:10:00〜17:00
定休日:水曜日
駐車場:なし ※市営駐車場を利用
※イベント出展や臨時休業などのスケジュールは公式Instagramで確認
2杯目|オネストコーヒー 児島店
「オネストコーヒー児島店」は、25年以上にわたりこの場所で愛されているコーヒー専門店。児島でコーヒー豆を買うなら、まず名前が挙がるほど支持されています。駐車場で車を降りるとすぐにコーヒーの香りが。店頭にずらりと並ぶ豆、入りやすい空気、そして気さくに話してくれる店主とスタッフの方々。常連さんとの空気は紛れもなく街の一部として当たり前に存在している「コーヒーのお店」です。
四半世紀超えの愛され店
「オネストコーヒー」は1998年に岡山本店をオープンし、その3年後にオーナー澤省樹さんの出身地である児島店を開店。以来、四半世紀にわたり地域で親しまれてきたお店です。店内で目を引くのは、樽にディスプレイされたコーヒー豆の数々。実際に色やツヤ、大きさを見て“香り”を感じながら選べるので、「今日は違う豆にしてみようかな」と悩む時間まで楽しく感じます。100g単位で購入でき「少しだけ試したい」という人にも嬉しい店です。
オープン前にはコーヒーの産地へ
澤さんは、もともと医療機器のCTやMRIなどを扱う外資系企業の営業職。転勤や仕事環境の変化もある中、親族からのコーヒー豆店を手伝わないかとの声がけが転機になったそう。「やるんだったら誰かの店に入るのではなく自分でゼロからやろう」と独立を決意。さらに「まず自分が扱うコーヒーというものを知らなくては」と開業前に原産地へ足を運び、ジャマイカではブルーマウンテン農園へ。ブラジルでは農園から精製工場、出荷港まで見学。さらにアメリカではスターバックスコーヒーの1号店にも訪れ、現地のコーヒー文化に触れたそうです。豆がどこで育ち誰の手を経て届くのか。その背景を自分の目で見てから始めた経験は、大きな財産になっていると話してくれました。
高品質の豆を手頃な価格で
「コーヒーは、好きな人にとっては毎日のもの。手が出しづらいと続けられない」。その言葉どおり、品質のよい豆をできるだけ購入しやすい価格で届けることを大切にされています。手頃な価格だからこそ豆の回転も早く、焙煎したての鮮度のよい状態で手に入りやすいのも魅力です。澤さんは25年間、ほぼ毎日午前中に7種類ほどの豆を焙煎。「夏はサウナ。5回は着替えるかな」と笑います。季節のブレンドや期間限定のおすすめなど、新しい豆との出会いがあるのも楽しみの一つです。
普段使いの店でありたい
近年は、洗練されたカフェや高価格帯のスペシャルティ店も増えました。「もちろん、それぞれ魅力があるんでね、いろんな楽しみ方があって当たり前」と澤さん。そのうえでオネストコーヒーが目指しているのは、暮らしの中にある「普段使いの店」。「“年配の方も入りやすい”“コーヒーに詳しくなくても相談できる”“毎日の買い物の延長で立ち寄れる”存在でありたい」言葉の端々に、この店のやさしさが滲み出ています。
コーヒー豆を買うのが楽しい
コーヒー豆の専門店ですが店舗で淹れてもらうことも可能です。取材時にいただいた「グァテマラ ブルボン」は、まず香りが立ち、力強い味わいがありながら後味はすっきり。店内に漂う焙煎の香りもごちそうに感じる一杯でした。「どんな豆が合うか聞いてみる」「少しだけ買って試してみる」「いつもの豆をまた買いに行く」そんな日常の積み重ねが25年以上続いてきたのがわかる気がします。ジーンズストリートからは少し離れますが、わざわざ探して訪れる観光客もいるとのこと。「オネストコーヒー児島店」は、児島でコーヒーを堪能するには外せない一軒です。
【オネストコーヒー 児島店】
所在地:岡山県倉敷市児島駅前1-95
TEL:086-474-8533
営業時間:9:30〜18:00(土・日曜日は10:00〜18:00)
定休日:なし
駐車場:あり
3杯目|蓮岡商店 焙煎部
旧下津井電鉄・軌道跡の歩行者・自転車専用道「風の道」沿いにある「蓮岡商店 焙煎部」。大きな看板があるわけでもなく、派手に主張しているわけでもない。それでも、なんだか足を止めたくなる空気をまとっています。初めてなのに、いつか来たことがあるような気持ちになれる、ゆるやかな雰囲気のある場所です。
入ってすぐに「とっておき」
「蓮岡商店 焙煎部」がオープンしたのは2025年9月。当初はカフェスペースを設ける予定はなく、自家焙煎のコーヒー豆販売だけを考えていたそうです。ところが近所の方や訪れた人たちから「ここで飲めたらいいのに」という声が高まり、今の形になったのだとか。暖簾をくぐって店内に入ると、大きな窓の向こうに手入れの行き届いた庭が広がります。季節でその姿を変える大きな1枚の絵画のような“とっておきの景色”に、自然と気持ちが緩んでいきます。
祖父から受け継いだ屋号
焙煎部の部長でオーナーの蓮岡江里子さんによると、「“蓮岡商店”というのは、もともとこの場所で祖父が営んでいた被服工場の屋号なんです」。「長く趣味としてコーヒーに親しんで、8年ほど前から豆の焙煎を始めました。仕入れ先を探しながら少しずつ学んで、好きで続けていたことが豆の販売と店へとつながりました」。北アルプスにある北穂高小屋で働きながら売店のコーヒーを淹れていた時の景色と感動が忘れられず、山を下りた時に書いた「これから何をしたいかリスト」の中に「コーヒー」と記したそうです。穏やかな語り口から好きなものが経験とともに自然と自分の軸になっていることが感じられます。
深煎りが似合う空気
「蓮岡商店 焙煎部」のコーヒーは蓮岡さんの好みの深煎りで、「自分の好きな豆しか置かない」と笑います。深煎りといっても濃く重たいのではなく、豆の味わいをしっかり引き出しながら飲みやすさとのバランスも大切にしているとのこと。取材時にいただいた「ケニア シンバ TOP」は、力強さはありつつも、クセは強すぎず、後味もすっきりしていました。メニューにあるバスクチーズケーキやガトーショコラとの相性もよく、深煎り好きにはありがたい一軒です。
好きなものに囲まれていたい
「山や自然、柴犬、庭の緑、季節の花など、好きなものに囲まれていたいんです」と蓮岡さん。「入口や店内の花は母の担当で、季節の草花を生けています」と。エントランスから目をひく花はテーブルごとにセットが違い、それぞれの違った雰囲気を演出しています。常連さんと話す姿から“価値観の近い人たちが、ふらっと集まって話せる場になれば”という思いが伝わってきます。「蓮岡商店 焙煎部」はコーヒーを楽しむ人や気の合う人が緩やかな時間を共有できる大切な場所になっていきそうです。
緩やかな時間を過ごす
「蓮岡商店」には、実は焙煎部のほかに菜園部、美術部、デザイン部もあるそうで、蓮岡さんとご家族の好きなことがそのまま形になっています。コーヒーのパッケージやカードはデザイナーでもある蓮岡さんによるもの。店内には、かつて「蓮岡商店」の工場で使われていた工業用ミシンやミシン台も残され、令和と昭和が心地よく同居しています。取材時にも、ご近所の常連さんに山好きの常連さん、ガトーショコラとコーヒーを楽しむ男性などが思い思いの時間を過ごしていました。テイクアウトもOK、自家焙煎のコーヒー豆、ドリップバッグも販売しています。懐かしい感じがありつつも整っている「蓮岡商店 焙煎部」に、緩やかな時間を過ごしたくなったら立ち寄ってみては。
【蓮岡商店 焙煎部】
所在地:岡山県倉敷市児島赤崎4-1-8
TEL:なし
営業時間:12:00〜17:00
定休日:日〜水曜日(変動の可能性あり)
駐車場:あり(5台)※複数名の場合は乗合せ推奨
※営業日は公式Instagramで確認
4杯目|パワープラントコーヒー
「パワープラントコーヒー」は、オリーブ園を併設した珈琲焙煎所。店に入った瞬間、コーヒーの香りに包まれて気持ちがほどけます。日々、丁寧に豆を焼く焙煎職人のオーナーと、コーヒーの愉しみ方を熟知した店長が、抜群のコンビネーションで自家焙煎のコーヒーとあたたかい空気を提供してくれる、地域に根付いた専門店です。
オリーブ園隣接の心地よい空間
お店があるのは倉敷市中心部から児島へ向かう道中の藤戸町、ドライブがてらの立ち寄りにはちょうどいい場所です。建物の隣にはオリーブ園が広がり、自家焙煎の豆とコーヒーを楽しめる場所として親しまれています。店内はもちろん、併設のオリーブ園を臨むテラス席で淹れたてのコーヒーを飲みながら癒される、心地よい空間です。
好きなコーヒーを人生の仕事に
話を伺ったのは、オーナー茅野英二さんと店長の悦子さんご夫婦。英二さんは造園土木の仕事に長年携わりながら、若いころからコーヒーへの思いをずっと持ち続けていたそうです。高校生のころには喫茶店に通い、「いつか自分でもやってみたい」と感じていたのだとか。時代の流れや環境の変化の中でその想いが再び強くなり、一念発起して東京のメーカー系スクールへ。「そこで初対面のメーカー社長と意気投合して、しっかり焙煎や抽出を学んで、まずは豆の販売からスタートしました」と英二さん。販売するうちに「ここで淹れたコーヒーを飲みたい」という声が徐々に増え、現在のスタイルになったそうで、好きなものが年月を経て仕事になった喜びを少し照れくさそうに話してくれました。
焙煎職人としての想い
2009年のオープン時からずっと少量ずつ多種の豆を丁寧に焙煎し、鮮度のよい状態で届けることを大切にしているとのこと。豆の持つコクや深みなどの個性を生かしつつ飲みやすいバランス重視の味わいを心がけているそうです。「天城(あまき)ブレンド」「藤戸ブレンド」「倉敷ブレンド」など、地元の地名がついたオリジナルブレンドも人気。取材時にいただいた「天城ブレンド」は、店舗のある藤戸町天城にちなんだ、お店の顔とも言える思い入れのある商品。ほどよい濃さと爽やかさが同居し、毎日でも飲みたくなるやさしい一杯です。オーナー夫婦の人柄も味に滲み出ているのかも。
コーヒーで人を結ぶ店長
「パワープラントコーヒー」を語るうえで、店長の悦子さんの存在は不可欠です。「どんな豆が好みか」「どんな味が好きか」「どんな場面で飲むことが多いか」、そんな会話をしながら「せっかく選んできてくれた方の、ひとりひとりに合うコーヒーを届けたいんです」と悦子さん。以前の来店時の会話を覚えていてくれたり、帰り際にひとこと笑わせてくれたり、そんなやり取りも店を印象づけてくれます。ご家族と一緒に来店したコーヒーが飲めない方まで「また来るね」と帰っていったというエピソードにも、その心地よさが表れています。英二さんが丁寧に焙煎した豆を、悦子さんが愛情を込めて届けるという連携が「パワープラントコーヒー」“らしさ"の大きな要素だと感じます。
幸せのおすそ分け
隣接するオリーブ園には、自然農法で育てている約150本のオリーブ。1級造園管理技士でもある英二さんが手入れをし、秋にはご家族や常連さんと収穫しているそうです。抽出したオイルは「100%天城産エクストラバージンオリーブオイル」として販売、人気商品になっています。オリーブソフトクリームとして味わうこともできますよ。「オリーブとコーヒーは両方とも“幸せの木”って呼ばれているんですよ」と悦子さん。コーヒーの香りに包まれ、オリーブ園に癒されて、会話に和む。地域に根付く「パワープラントコーヒー」には、コーヒーと一緒に幸せを少し分けてもらえるような気がします。
【パワープラントコーヒー】
所在地:岡山県倉敷市藤戸町天城1760-1
TEL:086-428-3706
営業時間:10:00〜18:00
定休日:日・月曜日
駐車場:あり(9台)
※イベント出展や臨時休業などのスケジュールは公式Instagramで確認
まとめ|コーヒーへのまっすぐな愛情
今回伺った4店舗では「まちに溶け込む一杯」「日々の中にある一杯」「緩やかな時間の一杯」「幸せを分けてくれる一杯」と違いを感じましたが、これも人それぞれ感じ方は違うかも知れません。しかし、どの店舗にも共通していたのは「コーヒーへのまっすぐな愛情」。店主やスタッフによるその店ならでは空気と「コーヒーを楽しんでもらいたい」という気持ち。だからこそ、また行きたくなる。岡山にはたくさんの魅力的なコーヒー店がありますが、今回紹介した倉敷市児島と藤戸にある4軒もぜひ覗いてみてください。素敵な出会いがあるかもしれませんよ。
紹介したお店の場所(地図)
- calma coffee roasters
- オネストコーヒー 児島店
- 蓮岡商店 焙煎部
- パワープラントコーヒー
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