古民家ギャラリー「一初」で日常とアートの境目に立つ。入るとそこは古さと新しさがまじりあう不思議な空間(岡山市)
自然豊かな岡山市の北部、建部町の町並みの中に突然現れる不思議な古民家。外見は普通の古民家ですが、一歩足を踏み入れると想像以上に広くて深い空間。そんなギャラリー「一初」で、様々なアートに触れてきました。
- ライター
- 大岩主弥
- 掲載日
- 2025年12月15日
目次
はじめに
かつて岡山藩が他領との国境を警護するため津山藩と接する建部に陣屋を構え侍屋敷が作られたことから、商人や職人が集まり、建部陣屋と新しく形成された建部郷の中心として栄えたといわれている建部町。旭川の水運を利用した高瀬舟での交易も盛んだったようです。その名残を残した古民家を改築したギャラリーが建部町中田町の住宅地にあります。住宅地の中に忽然と現れる「一初(いっぱつ)」です。こちらは明治20年に建築された油屋本家大村邸を改装して作られた、現代美術の展示販売を中心に茶亭、工芸品及びプロダクト品販売からなる複合ギャラリー。
建部町と言えば、子供時代に遊びに行った「たけべの森」が印象的で、広々とした公園にワクワクしたものです。大人になって久しぶりに訪れた建部で、今回はアートに触れてきました。衣・食・住・遊・知・美 のカテゴリに分け様々な事象を取り扱い紹介するという「一初」。どうぞお楽しみください。
JR建部駅から徒歩で行ける距離
最寄り駅である建部駅へは、岡山駅からJR津山線で約40分、510円。建部駅の駅舎は趣がある木造駅舎で、開業はなんと明治33年4月15日。電車で訪れた際は是非レトロな駅舎にもご注目ください。そこから住宅地を約10分歩くと「一初」に辿り着きます。道は難しくはないのですが、目印となる建物があまり無いので、地図を確認しながら歩く事をお勧めします。
町並みに馴染んだ古民家ギャラリー
大きなガラス扉とアーティスティックな暖簾が目印。「一初」に辿り着きました。暖簾がなかったなかったら見落としていたかもしれないほど、町並みに馴染んでいました。明治20年に建築された旧建部町油屋本家大村邸。当時盛大に酒造業を営み繁栄していた様子が残る家屋そのままの佇まい。
中は想像以上の広さ。そして、古民家と現代風の絶妙なマッチング
中に入ると、想像以上に広い邸内。通路が広くとられているのと、正面のガラス張りの窓から庭が見えるので開放感があります。そして、なんと2階建て。
まずは古民家の雰囲気を楽しんでいきます。敢えて屋根を大きくしており、内からは庭全景が見えない状態に。敷き詰められた石とステージと松がちらりと見えるように設計されています。隠されているからこそ広がりを感じる、なんだか不思議な光景。入ってすぐ右側の上がり框にある立派な巨石は吉備中央町産。敢えて土壁の中の骨組みを見せていたり、障子は太鼓張りで張られていたり、一つ一つにこだわってつくられた内装。じっくり見てみてください。
テラダヒデジ個展「民が」第二部新嘗の後、正月への旅支度~文字アート
2025年12月現在行われているのは『テラダヒデジ個展「民が」第二部新嘗の後、正月への旅支度』。
先人たちが築き上げてきた日本のかたちに、現代の要素を混ぜ合わせた作品制作をされているテラダヒデジさん。絵描きであり文字描きと公式インスタグラムに書かれている通り、今回の個展では多くの絵画と文字アートを見ることが出来ます。
是非見ていただきたいのは入り口扉の左上に張られた手書きの御札。こちらは手書き一点ものだったそうですが、第一部に来られたお客様に好評で、第二部では販売品として並ぶ事になったそうです。蛙の御札可愛い。テラダさんが造られた四字熟語の御札も売られているのですが、こちらも素晴らしくて。私は「瞬間永遠」(一瞬一瞬を永遠のごとく楽しみ大切にすること)という言葉に惹かれ購入いたしました(1,320円)。また、今回の会期で終わりになってしまうそうですが、おみくじもあります。100円で1回ひけて、素敵なおみくじが手に入ります。全種類制覇するまでひいた強者もいらっしゃったそうですよ。こちらも是非やってみてほしいです。
テラダヒデジ個展「民が」第二部新嘗の後、正月への旅支度~絵画
私は「一初」の公式サイトに出ていたテラダさんの絵を見て、「本物をこの目で見てみたい」と思い今回足を運びました。拝見し、絵の迫力はもちろん、個展の題名にもなっている民への愛情と、そこにある遊び心にとても惹かれました。特に民衆版の「大首絵(浮世絵版画の一形式で、役者・美人などの上半身を描いたもの )」が面白く、着物に書かれた文字アートから職業を考えるのがちょっとしたクイズのようで楽しかったです。第一部の時にはもうちょっと種類もあったそうですが、何枚か売れたとのこと。そこで、ああここはギャラリーで気に入った絵は購入できるんだという当たり前のことに気づかされました。もし、お気に入りの作品があれば是非お手元に。そういったところは美術館とは違うギャラリーの楽しさですね。
2階はギャラリーストア
2階は過去に個展を開かれた方のアーカイブのようになっているそうで、こちらも気に入れば購入可能です。アパレル、照明、絵画、食器などなど。個人的にはこんなにも日常とアートを結び合わせてくれるアートとアーティストさんがいることに驚き、そしてワクワクしました。
広々とした茶亭
お茶と茶菓子を楽しむことが出来る茶亭もあります。茶亭では大きな窓から庭が見渡せます。寒い時期に入るとしばらく茶亭はお休みという事で今回私は体験できませんでしたが、2026年2月21日から始まる新しい個展に合わせて、またお茶の提供が再開するようです。楽しまれたい方はご確認の上、足をお運びください。
おわりに
外見からは想像できないくらい楽しむことが出来た「一初」。
気になる展示の話をギャラリーの方が詳しくお話しくださるので、気が付いたら約2時間も滞在していました。都会の喧騒から離れて、建部の古民家で出会えた今を生きるアートの数々。是非自分のお気に入りを見つけに足をお運びください。
【一初】
所在地:岡山県岡山市北区建部町中田171
TEL:086-280-1047
営業時間:12:00~17:00
定休日:水、木曜日
駐車場:あり(8台)
地図
- 一初
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