一房のマスカットができるまで。岡山・真備のぶどう農家に一年間密着。直売所情報も!
みずみずしく輝く岡山県産のマスカット。店頭に多く並ぶ夏後半から秋のものというイメージを持つ人が多いかもしれません。しかし、実際にぶどう農家さんの畑を訪ねてみると、その一房ができるまでには驚くほど長い期間とたくさんの作業がありました。今回、倉敷市真備町の浅野さんの農園に一年間密着!一房のマスカットができていく様子を、季節ごとに追いかけました。普段何気なく食べているマスカットのできるまでを、ぜひ知ってください。岡山のおいしいぶどうが買える直売所の情報も紹介します。
- ライター
- 曲輪衆◎たけ
- 掲載日
- 2026年8月26日
目次
- 岡山を代表する果物「マスカット」
- 一年間密着したぶどう農家の浅野さん
- ぶどう農家の年間カレンダー
- 【12月~1月】冬の大仕事、剪定(取材日:2026.1.30)
- 【2月~3月】春、ぶどうの生命力に驚く!芽吹き・芽欠き(取材日:2026.3.9)
- 【3月~4月】細かい作業が続きます。摘芯・房の間引き(取材日:2026.4.9)
- 【3月~4月】小さな花からぶどうの房へ。開花!(取材日:2026.4.19)
- 【4月】タイミングを逃すと大変!ジベレリン処理(取材日:2026.4.19)
- 【5~6月】房づくり。摘粒は引き算の作業(取材日:2026.5.13)
- 【6月~7月】袋を掛けたら収穫まであと少し(取材日:2026.6.21)
- 【7月~9月】いよいよ収穫!1房を切る瞬間(取材日:2026.8.12)
- 【7月~9月】収穫しても終わりじゃない!選別・調整・箱詰め・出荷(取材日:2026.8.12)
- 【7月~9月】集出荷場から全国の市場・販売店へ(取材日:2026.8.12)
- 【番外編】ぶどう栽培講習会への参加
- 岡山・真備のぶどうはどこで買える?(直売所情報)
- おしまいに
岡山を代表する果物「マスカット」
岡山県を代表する果物の一つとして人気が高いのが「シャインマスカット」です。温暖で晴れの日が多い岡山の気候はぶどう栽培に適しており、県内各地で栽培されています。ぶどうの王様と呼ばれる「マスカットオブアレキサンドリア」の生産量日本一を誇る岡山県では、代々受け継がれた100年を超える栽培技術の元、生産者が一房一房丁寧に育てることで、安定した高品質なマスカットができ、夏から秋にかけて旬を迎えます。
一年間密着したぶどう農家の浅野さん
前年の収穫後から一年間密着させていただいたのは、倉敷市真備町でぶどうを栽培する浅野武志さん。2代、50年間にわたってぶどう作りに取り組んでいます。約70haの畑で栽培されている品種は、シャインマスカット、ピオーネ、マイハート、そして幻のぶどうと呼ばれる富士の輝きなど約8種類。定年退職後にぶどう作りを始めたきっかけは、親がぶどう畑をやっていたからという単純な理由だけだったと言いますが、とても研究熱心で新品種も早くから取り入れ、挑戦している農家さん。浅野さんは真備ぶどう生産組合の役員も務めるなど、真備地域のぶどう農家の世話役としても生産者から信頼されています。
ハウスで育てられているシャインマスカットの一房を一年間に渡って、くらしき移住宣伝大使を務める水野美咲さんと追いかけました。
ぶどう農家の年間カレンダー
ぶどう農家さんの年間スケジュールをみてみましょう。
収穫後~ 枝の管理・お礼肥
冬 剪定作業
春 芽吹き
新梢管理
春~初夏 花穂・房づくり・マイシン処理
初夏 ジベレリン処理
初夏 摘粒
夏 房の管理・袋掛け
夏~秋 色・糖度・成熟管理
収穫期 収穫・選別・出荷
収穫後 次年度に向けた管理
このように様々な作業があります。その他にも要所で追肥や害虫・病気対策も行います。どれ一つ怠っても 店頭に並ぶ食べておいしく、見た目もきれいなぶどうにはなりません。
【12月~1月】冬の大仕事、剪定(取材日:2026.1.30)
収穫後、冬には葉が落ち、伸びた枝だけになります。そこで枝を切る剪定作業が始まります。一見すると「せっかく伸びた枝を切ってしまうの?」と思ってしまいます。ところが、この剪定が翌年のぶどうの出来を左右する大切な作業なのです。農家さんには枝の状態を見ながら「どこを残し、どこを切るか」を判断する技術が必要です。前年に房のあった枝はそのほとんどが切り落とされます。
- 水野さん
- こんな寒い時期から次の年の作業が始まるんですね。

- 浅野さん
- 葉がまだあるうちに翌年の養分をためるため、収穫した直後から肥料を散布するなどの作業が始まります。

【2月~3月】春、ぶどうの生命力に驚く!芽吹き・芽欠き(取材日:2026.3.9)
冬の間、静かだったぶどう畑。春になると枝のあちこちから芽が吹き始め、新しい枝や葉へと成長していきます。ここで新しい芽が伸びすぎないうちに、芽欠き作業が行われます。数日前には小さかった芽がどんどん伸びていく、ぶどうの木の生命力に驚きました。
- 水野さん
- せっかく芽吹いた芽を取ってしまうのですか?

- 浅野さん
- 栄養分が集中するように最終的には一枝一房を基準に、これから成長していくであろう枝ぶりを想像しながら一番適した芽を残して、あとは摘み取ります。このようにして弾ける食感のシャインマスカットに育てていくんです。

【3月~4月】細かい作業が続きます。摘芯・房の間引き(取材日:2026.4.9)
残した芽は葉・花穂を付けながらどんどん伸びてきます。1枝に1つの花穂を残しあとは摘み取ります。ここで枝の成長を止め、残した花穂に養分が集中するように葉を5枚ほど残して摘芯(枝先を切る)を行います。そして残した花穂も穂先に40~50粒ほど残して枝元の方の粒を切り取ります。その時、元の部分の少し離れた所に一つだけ印となる部分を残しておきます。この状態で開花を待ちますが、その前に「種なしぶどうをつくるための最初の大切な作業」 としてマイシン処理を施します。この作業がないと種なしのシャインマスカットにはなりません。
- 水野さん
- 穂の先の方だけ残して切り取ってしまうのは、なんだかもったいないような気がします…。

- 浅野さん
- これは大粒の見た目にも美しい房に仕上げるための作業で、出荷時の規格基準にも関係しています。何もしない自然のままの房だと、細長い小さな粒の山ぶどうのようになり、商品にはなりません。

- 水野さん
- ひとつ残した花穂に印をつけるのはなぜですか?

- 浅野さん
- この印の意味は、次の作業工程でわかりますよ!

【3月~4月】小さな花からぶどうの房へ。開花!(取材日:2026.4.19)
春、ぶどうの花の開花です。とても小さな花です。ここからいよいよ「ぶどうの房」へと形が変わっていきます。普段見る完成したぶどうからは想像できないほど、小さな花から始まっていることに驚きます。この時期にも農家さんの細かで重要な作業が続きます。
- 水野さん
- ぶどうの花、はじめて見ました。こんなにも小さいなんて!

- 浅野さん
- この花1つが1粒のぶどうになるんですよ。

【4月】タイミングを逃すと大変!ジベレリン処理(取材日:2026.4.19)
満開直後に行われるのは、ジベレリン処理という作業です。カップに入ったジベレリン液に一房一房浸していきます。浅野さんのこのビニールハウス内には、約4000房のぶどうがあるので大変な作業です。また、満開から3日後までに行わなければならないもので、同じ木でも房によって花が咲くタイミングが違うので、全部咲き切った房から処理をしていきます。そこで活躍するのが以前残した花穂上部の印です。ジベレリン処理が終わったものは印を切れば、まだのものと判別ができるということです。お手伝いの人を頼んで全ての花穂にやらなければならない重要な処理です。
- 水野さん
- ジベレリン処理をしないと、どうなるんでしょうか?

- 浅野さん
- マイシン処理とこのジベレリン処理で99%種なしになり、粒も大きく育ちます。この処理がないとシャインマスカットとよばれる商品にはなりません。花穂に付けた印の意味もわかりましたか?

- 水野さん
- はい!全ての花穂に施さなければならない重要な作業だとわかりました。

【5~6月】房づくり。摘粒は引き算の作業(取材日:2026.5.13)
ジベレリン処理後しばらくすると、房の中の粒が少しずつ膨らんできます。日を追うごとに果粒が大きくなり、このあたりで房全体が「ぶどうらしい姿」になってきます。今度は「大きくする」だけでなく「一房を美しく仕上げる」作業へ移っていきます。摘粒という作業です。「たくさん実らせる」のではなく、「あえて粒を減らす」ことで、残した粒を大きく、おいしく育てるという農家さんの技術がここにあります。作業の様子を見ているとかなりの経験が必要なのを痛感します。
- 水野さん
- 摘粒はどんなところに注意して作業をするのですか?

- 浅野さん
- 単に不要な粒を摘み取るだけではなく、房の一粒一粒を見ながら、飛び出しそうな粒や奥の方に埋もれている粒を切り取って、出荷時に房全体がきれいな円筒形になるように、その姿を想像しながら作業しています。

【6月~7月】袋を掛けたら収穫まであと少し(取材日:2026.6.21)
摘粒が終わり房が出来てくると、次は袋掛けです。袋を掛けることで、雨による汚れや病害、害虫・鳥などによる食害から果房を守ります。袋掛け後は房が外から見えなくなるため、収穫までの成長を直接見ることができなくなります。その前にも何度か房の調整を行うそうです。袋の中ではマスカットが少しずつ大きくなっていきます。
- 水野さん
- 袋掛けが終わると、あとは収穫を待つだけなのでしょうか?

- 浅野さん
- いいえ。ここからが大切な時期なんです。園内を巡回して、病気や害虫・房への適度の光・枝葉の状態・天候や土壌の状態を見ながらの水分管理とやらなければならないことが多いです。ハウス内の温度管理・色づき具合・糖度確認・成熟管理 などの日々の管理が続きます。そして最後に収穫適期の判断をします。

【7月~9月】いよいよ収穫!1房を切る瞬間(取材日:2026.8.12)
待ちに待った収穫の日。一年間追いかけてきたマスカットが、ついにその時を迎えます。早朝5時頃から畑に行き、再度房の状態や糖度を確認します。そして―チョキン!大切に育てられてきた一房が枝から切り離されました。冬の剪定から始まり、芽吹き、花、房づくり、袋掛け。何ヶ月もの時間をかけて育てられたマスカットです。一房の重みが少し違って感じられます。畑で収穫されたマスカットはキズなどがつかぬように、農家の納屋まで運ばれます。
- 水野さん
- やっと待ちに待った収穫で、嬉しいですね!

- 浅野さん
- 良い房が出来上がればもちろんうれしいです。でも毎年のことですから。その日の収穫が終わって朝食を済ませた後には、最後の一仕事が待っていますよ。

【7月~9月】収穫しても終わりじゃない!選別・調整・箱詰め・出荷(取材日:2026.8.12)
シャインマスカットは、収穫したらすぐ店頭に並ぶわけではありません。房を商品に仕上げるための「選別・調整・箱詰め・出荷」という大切な工程が待っています。ここでも農家さんの経験が生かされます。次に販売先や出荷規格に合わせて房の重量や品質を確認し、房を傷つけないよう丁寧にフィルムに包み、箱へ詰めていきます。シャインマスカットは粒がこすれると傷みやすいため、取り扱いにも細かな配慮が必要です。そしてJAなどの出荷先や市場、直売所、販売店などへ運ばれます。ここまで終えて、ようやく私たち消費者のもとへ届けられる商品とししてのマスカットの完成です。
- 水野さん
- 最後の最後まで手を掛けているのですね。

- 浅野さん
- ここが私たちが手を掛けられる最後の場になるので、 房の形や粒の状態などをチェックし、必要であれば傷んだ粒や状態の悪い粒を取り除き、房の形を整え調整します。本当に最後の「ひと手間」です。

【7月~9月】集出荷場から全国の市場・販売店へ(取材日:2026.8.12)
箱詰めされたぶどうは、浅野さんが所属しているJA晴れの国岡山の真備ぶどう生産組合の集荷場へ持ち込まれます。JAは生産者ごとに荷受けをし、出荷場でもさらに房の大きさや形、粒の状態、傷・病気・脱粒などを再度確認します。ここで規格基準によって厳密に等級分けされます。そして箱にラベル、品種、生産者、等級、重量、産地など、必要な表示を付けます。 蓋をかぶせて梱包され、トラックに積み込まれ、倉敷市真備で作られたぶどうは関西方面・関東方面(一部海外)・近県・県内の市場、販売店へとトラック便や航空便で運ばれて行きます。
- 水野さん
- 荷受け後のチェックや等級分けの時は、とてもピリッとした厳格な空気が張り詰めているんですね。

- 浅野さん
- 出荷先によって規格や表示方法が決められているため、農家が出荷したものを一定の基準でそろえることが重要です。かつ真備地域全体の高い品質を守るためにも、厳密にしなければならないとても大切なことなんです。

【番外編】ぶどう栽培講習会への参加
浅野さんの所属する真備ぶどう生産組合では、JA晴れの国岡山と組合員の生産者を対象としたぶどう栽培講習会を年に数回実施しています。
3月に開催された1回目のハウス栽培をされている生産者さんを対象とした講習会におじゃまさせていただきました。この日は岡山県備南広域農業普及センターの技士・JAの指導員による栽培技術や各工程の注意点、気象状況とハウスの温度管理・水やりの目安などの技術的な指導がありました。次にJA出荷・販売担当者から昨年の状況から今年度の需要予想と要望の報告。そして肥料メーカーの担当者からのお話もありました。とても専門的な内容で、初心者もベテランも熱心に聞き入っていました。講習後には芽欠きの実演があったり、担当者へ質問したりと、最新の情報を皆で共有することで地域全体の生産量と品質を高く保っている努力があったんですね。
岡山・真備のぶどうはどこで買える?(直売所情報)
浅野さんの所属する真備ぶどう生産組合には残念ながら直売所はありませんが、出荷されたものは首都圏・関西圏・広島県、もちろん地元岡山などの市場から各所のスーパーやお店に並びます。JA晴れの国岡山の箱やラベルの貼られたぶどうを見かけたら、ぜひ一度手に取ってみてください。
また、一部のぶどうは真備町の近くにあるJA晴れの国岡山が運営する「JA晴れの国岡山 旬感広場」(総社市)で買えたり、県内の各スーパーにもたくさん並びます。その他にもぶどうの時期になると、真備町をはじめ岡山県内の産地周辺には直売所も開店しますので、現地でぜひ季節の味を観光とあわせて楽しんでください。※ぶどうの直売店情報は下記のリンクよりご覧ください。
おしまいに
昨年収穫時期に取材したぶどう畑のぶどうがあまりにもおいしかったので、「何もない木からどのようにまたぶどうが実っていくんだろう?」と思ったことがきっかけで、1年間の取材がスタートしました。取材を終えてみて、「想像以上に手間暇かけて育てられているんだ!」というのが率直な感想でした。岡山県産の美味しいマスカット、ぜひ食べに来てください。
最後に、一緒にぶどう作りを追いかけた、くらしき移住宣伝大使の水野美咲さんからもひとこと。
- 水野さん
- 真備ぶどう生産組合では、ぶどう栽培をやってみたいという方を支援しています。岡山県に移住して3年間ぶどう栽培をしている方が講習会に参加されていて、頑張っていらっしゃる様子も目の当たりにしました。興味がある方は、岡山県備中県民局の備南広域農業普及指導センターで受け付けていますので問い合せてみてください。また倉敷市では県外から移住される方に向けた支援金や補助金の制度もあります。詳しくは倉敷市のホームページをご覧ください。









































































































