岡山のぶどうが美味しいわけ。産地の直売店もご紹介!

岡山県といえば桃やぶどうが有名なくだもの王国。県南西部の倉敷市・船穂地区、真備地区、玉島地区をはじめ、井原市の青野地区などはマスカットやピオーネといったぶどうの一大生産地。なかでも倉敷市船穂地区は果物の女王と呼ばれる「マスカット・オブ・アレキサンドリア」の栽培が有名です。また最近は、長年のブドウの栽培技術に裏付けられた高品質のシャインマスカットの生産地としても注目されています。そんな岡山のぶどうの人気の理由を探っていきましょう。産地のぶどう直売所もご紹介します。
掲載日:2025年09月17日
  • ライター:曲輪衆◎たけ
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なぜ岡山のぶどうが人気なの?

岡山産のぶどうがなぜ人気なのか?それは岡山県の温暖で雨の少ない気候がぶどうの栽培に適しているためです。特に倉敷市の船穂(ふなお)地区は130年以上のぶどう栽培の歴史があり、温室栽培も早い時期に確立されました。その他の近隣地域も早くからぶどう栽培が盛んです。何世代も受け継がれてきた土壌や栽培技術の高さにより、芳醇な香りと糖度、粒の大きさや房の見た目の美しさなど三拍子揃ったぶどうを毎年出荷できているんです。ぶどうの女王といわれるマスカット・オブ・アレキサンドリア、大粒で種無しのニューピオーネ、 ワインレッドの色が美しい冬のぶどう紫苑(しえん)、最近の流行でもある"種無しで皮ごと食べられる”を満たすシャインマスカット、岡山県オリジナル品種オーロラブラックなど、「次世代ぶどう」とも呼ばれる新しい品種の生産にも積極的に取り組んでいます。 

主なぶどう産地①倉敷市船穂地区

船穂地区のぶどう栽培は明治26年(1893年)に始まったといわれています。昭和4年(1929年)にはマスカット・オブ・アレキサンドリアの栽培が開始され、昭和30年代になると先人の努力により温室栽培技術が確立されました。その後も省力化や高品質化が進み岡山のマスカットの一大生産地の地位を築きました。近年はシャインマスカットが主流となり、長い歴史と生産技術に裏付けられた高品質のぶどうが生産されています。

主なぶどう産地②倉敷市真備地区・玉島地区

明治時代後半、真備地区でもぶどう栽培が始まります。特に昭和初期には「真備のデラウェア」が市場で高評価を得ました。昭和後期には全国に先駆けてピオーネの種無し処理が確立し、ニューピオーネの一大生産地になりました。現在はシャインマスカットが主流になりつつあります。真備も長い歴史のぶどう栽培技術によって、高品質なぶどうが安定的に生産される地域です。また、玉島地区南部も古くからぶとう栽培が行われている地域です。

主なぶどう産地③井原市青野地区

昭和期に葉たばこから転換して始まった井原市青野地区のぶどう栽培。日照量が豊かで昼夜の寒暖差が大きく、ぶどう栽培に適している気候と農家の努力により、今では県内でも有数の産地に発展しました。ピオーネやシャインマスカットをはじめ、多彩な品種が6月~11月まで楽しめます。直売所「葡萄浪漫館」や地域イベントも充実し、訪れる人々に“ぶどう文化”を伝えています。

品種紹介①マスカット・オブ・アレキサンドリア

“果物の女王”とも呼ばれるマスカット・オブ・アレキサンドリアは、エジプト原産で香り高く上品な甘みが特徴です。特に船穂地区は明治時代から続く歴史と温室栽培の伝統技術などで、温室の中で一房一房に丁寧な手入れを施し、まるで宝石のように美しい果実を育て上げています。​現在、岡山県全体でマスカット・オブ・アレキサンドリアの全国生産量の9割以上を占めており、船穂地区はその中心的な産地。この地域のぶどう農家の誇りとして、伝統的な栽培技術が受け継がれています。

<マスカット・オブ・アレキサンドリアの出荷時期>
加温栽培(ハウス内を加温機で温めて栽培):5月下旬~8月/冷室栽培(自然の気温で育てる):9月~11月

品種紹介②シャインマスカット

シャインマスカットは2006年広島生まれの品種です。種無しで皮ごと食べられると人気で、全国的にも広がってきています。マスカット・オブ・アレキサンドリアと同じく、岡山では長いぶどう栽培の歴史に育まれた技術によって高品質のシャインマスカットが生産されており、主流品種となってきています。ハウス栽培、露地栽培、貯蔵と、長い出荷可能期間を誇ります。

<シャインマスカットの出荷時期>
​​加温ハウス栽培:7月上旬〜8月下旬/簡易被覆栽培(露地栽培): 9月上旬〜11月下旬/​貯蔵:12月上旬〜中旬

品種紹介③ピオーネ

ピオーネは静岡県生まれで、巨峰とマスカットをかけ合わせた品種です。 大粒で食べ応えがあり、濃厚な甘みと適度な酸味が特徴です。ピオーネの生産量は全国一を誇ります。岡山県が全国に先駆けて種なしの技術を開発・普及させ、現在では「ニューピオーネ」として広く親しまれています。岡山を代表する高級フルーツの一つとして人気があります。

​​<ピオーネの出荷時期>
​加温ハウス栽培: 6月中旬~8月上旬 /無加温ハウス栽培:8月上旬~8月下旬 /露地栽培: 8月下旬~10月下旬

美味しいぶどうの出来るまで

美味しいぶどうが収穫され出荷される様子を取材しに、倉敷市の真備町にある「JA晴れの国岡山 真備ぶどう生産組合」の浅野武志さんの農園を訪ねてみました。ぶどう農家の年間を通じての作業は、非常に緻密な計画に基づいて行われます。美味しいぶどうを育てるためには、様々な作業が必要となります。冬は剪定。芽吹くと摘芽。花が着いたら摘房。花の咲く頃はジベレリン処理(後述)。摘粒、袋かけ、そしてやっと収穫。その他にも施肥、病害虫の予防など、一年を通じて多岐にわたる作業があり、私たちに美味しいぶどうが届けられています。

種無しぶどうはどうやって出来るの?

最近主流になってきている種無しぶどう。 ぶどうの種をなくし大きく育てるためには、開花時期にマイシン処理(確実な無核化)とジベレリン処理(肥大化)という作業が必要になります。この作業を逃すと大粒の種無しぶどうにならないので、農家さんにとっては大変忙しく重要な時期です。写真は種無しぶどうの品種のニューピオーネ、シャインマスカット、マイハート、ブラックシャイン。

収穫

袋掛けの作業を経て、待ちに待った収穫の時が来ます。収穫時期の最盛期はとても忙しいですが、1年間の苦労が報われる時なので、お祭りのような気分だそうです。やはり収穫時期はとても嬉しいと、農家さんがおっしゃっていました。日の出前の早朝より基準の糖度に達しているか確認しながら収穫されていきます。

出荷前の選別、チェック、箱詰め

収穫されたぶどうはすぐ農家へ持ち帰られ、そこで見た目をチェックされ、重さなどの基準に沿って保護フィルムをかぶせて箱詰めされていきます。そして午前中に選果場へ持ち込まれます。

選果場で等級付けされ全国に出荷

浅野さんが所属する「真備ぶどう生産組合」の選果場を訪ねました。選果場が開くと続々と早朝から収穫された箱詰めのぶどうを農家さんが持ち込みます。ここでは一箱一箱、等級付けが行われます。組合員さんとJAの職員さんが農家さんの育てたぶどうを厳しくチェックし、ランクの判を箱に押していきます。最上等級が赤秀。順に青秀・優・良・等級外の5種類の等級がつけられていきます。同じ地域のぶどう農家さんなのでお互い顔見知りでしょうが、誰のぶどうが来てもこの時だけは厳しく厳格にチェックしており、場内はピリッとした雰囲気でした。こうやって真備地域のぶどうの品質を高く保っているんですね。主に首都圏や関西方面の市場に向けてトラックや飛行機で出荷されていきます。ここから出荷される真備のぶどうは箱に「真備」や㋥のハンコが押されています。贈答品店やスーパーで見かけたら手に取ってみてください。

新品種にも挑戦中!幻のぶどう「富士の輝Ⓡ」

ぶどう農家さんたちは主流のピオーネやシャインマスカットだけではなく、新しい品種にも挑戦しています。おじゃました真備町二万地域のぶどう農家浅野さんは、とても珍しいぶどうも育てています。幻のぶどうと呼ばれる「富士の輝Ⓡ」、通称ブラックシャイン。まだ岡山県内では数軒しか栽培していないそうです。とても粒が大きく種無しで食べごたえがあります。

ハート型の「マイハート」

最近注目されているのが断面がハート型の切り口を持つ「マイハート」という品種。もちろん種無しです。ケーキなどのスイーツに引っ張りだこの見た目がとても映える可愛いぶどうです。2品種ともに9月中旬~10月初旬に出荷されます。

豪雨災害を乗り越え復興に挑む真備のぶどう

2018年7月の西日本豪雨で真備町中心地区のほとんどが水に浸かったことはまだ記憶に新しいものです。「真備ぶどう生産組合」のぶどう農家さんの約3分の1が収穫直前のぶどうと共に被災しました。ハウスも水没し、ぶどうの木も何日も水に浸かりました。ぶどうの木は植えてから5~6年経たないと本格的に市場に出せる品質の収穫は出来ないそうです。被災後に植えた木がようやく本格的な収穫が出来るようになったということです。「真備ぶどう生産組合」の木村組合長さんも被災されたそうで、「失った5年間位は戻ってこないが、またよいぶどうを育てていきます」とおっしゃっていました。写真は被災後に復旧再開したぶどう農園。右端の土手の左側全域が水没してしまいました。これからも真備のぶどうを応援していきたいですね。

真備地域ではぶどう栽培を本格的にやってみたいという新規就農者も募集しているそうです。「真備ぶどう生産組合」と「備南広域農業普及センター」が対応してバックアップ体制も充実しているので、興味ある方はお問合せ下さい。

直売所紹介①JA晴れの国おかやま船穂直売所

「JA晴れの国岡山」の直売所です。すぐ隣に船穂地区のJAの出荷場があり、農家から届く朝採れの新鮮なぶどうが大阪や東京などの卸売市場に送られています。6月上旬~11月までマスカット・オブ・アレキサンドリア、シャインマスカット、ピオーネを中心に、瀬戸ジャイアンツやオーロラブラック等の人気品種他、めずらしい品種も並びます。

【JA晴れの国岡山 船穂直売所】
所在地:岡山県倉敷市船穂町船穂2907-2
TEL:086-552-5000
営業時間:8:30~16:30 ※1~3月は8:30~16:00
定休日:年末年始 ※1~3月は土曜日
駐車場:普通車35台

直売所紹介②倉敷フルーツヴィレッジ

地産地消をコンセプトにしたおしゃれなカフェの奥に併設されている産直マーケット。近くのぶどう農家さんから届く朝採りの新鮮なぶどうが並びます。各種加工品も人気です。カフェでは旬のぶどうをふんだんに使ったぶどうパフェが毎年大人気!

【倉敷フルーツヴィレッジ・産直マーケット】
所在地:岡山県倉敷市玉島八島1707-1
TEL:086-486-0262
営業時間:土・日曜日、木曜日以外の平日9:00~16:00 ※木曜日は10:00~16:00
駐車場:あり
取扱い品種:ニューピオーネ、シャインマスカット他 

直売所紹介③OMOぶどう農園

桃の産地でも有名な玉島冨田地区にあるぶどう農園の隣にお店があります。店から見ると畑に鈴なりに実ったぶどうが見えます。シャインマスカットが中心で、2026年からはマイハートなどの品種も販売予定。

【OMOぶどう農園】
所在地:岡山県倉敷市玉島八島1875-4
TEL:090-8604-5708
営業時間:10:00~17:00 ※シーズン中(9月)のみ営業
駐車場:あり
※地方発送可

直売所紹介④花田青果(株)・ナフコ前直売所

玉島青果市場に本社のある花田青果株式会社が毎年出店している出張直売所。家庭用から贈答用まで揃っています。桃、ぶどう、梨、愛宕梨なども旬の時期にあわせて並びます。

【花田青果(株)・ナフコ前直売所】
所在地:岡山県倉敷市玉島832
TEL:086-522-2171
営業時間:9:00頃~16:00
営業期間:7月~11月頃
駐車場:あり
取扱い品種:ニユーピオーネ、シャインマスカットほか他品種もあり
※地方発送可

直売所紹介⑤ロードプラザ倉敷

玉島から真備に抜ける県道54号沿いにある高~い青い看板が目印の果物・野菜・生花が並ぶお店。持ち込む農家さんが値段を決めて販売されている委託販売形式です。農家さんもお客さんもとても大事にされ、お値段もとってもリーズナブル。1パック300円のシャインマスカットを発見!帰りに車の中で手軽に食べられそうです。贈答用など高品質のぶどうや家庭用のぶどうも揃っています。ポニーとヤギのミニ動物園があり、お子様連れにも楽しい場所です。そして、メダカ専門店も併設されていて、掘り出し物もいる100円メダカすくいが人気です。

【ロードプラザ倉敷】
所在地:岡山県倉敷市船穂町船穂7305-2
TEL:086-436-8123
営業時:9:00~17:00
定休日:水曜日、1月1日~10日
駐車場:あり
取扱い品種:白桃、ぶどう全般
※地方発送可

直売所紹介⑥小原商店

地元の桃、マスカット、梨などを扱っている創業50年を越える食料品スーパー。ベテランの農家さんから直接入荷されます。お店の人たちの目利きが確かなので、リーズナブルで美味しい旬の青果が並びます。

【小原商店】
所在地:岡山県倉敷市船穂町船穂7950-1
TEL:086-526-4405
営業時間:8:00~18:00
営業期間:桃は6月初旬~8月末頃、ぶどうは9月頃まで(要問い合わせ)など
駐車場:あり
取り扱い品種:ニューピオーネ、シャインマスカット他
※地方発送可

直売所紹介⑦グレープ愛ランド葡萄浪漫館

山の上にある直売所には、6月下旬のハウス栽培ものから始まり、9月に露地ものが加わって、11月半ば頃までぶどうが並びます。登録されている農家さんが朝採りの新鮮なぶどうを毎日出荷しています。ここはシーズン中、約50種類もの品種が持ち込まれ、珍しいぶどうと巡り会えるのも魅力です。
葡萄浪漫館の館内にある「cafe aoao」では、「3種のぶどう贅沢パフェ」が大人気。新鮮なぶどうをふんだんに使った写真映え間違いなしのフルーツパフェです。(写真は葡萄浪漫館提供)
販売期間は9月30日(14:00~17:00)まで。価格は2,000円で前々日までの予約制です。予約はカフェのメールアドレス(aoao@grnet.jp)へ。

【グレープ愛ランド葡萄浪漫館】
所在地:岡山県井原市青野町3535-3
TEL:0866-63-3112
営業時間:9:00~17:00
定休日:木曜日(7~10月は無休)、年末年始 
駐車場:あり

おしまいに

今回は岡山県南西部のぶどう産地を紹介しましたが、県北部、中部にも新見、津山、高梁、吉備中央町などぶどう栽培の盛んな地域が多くあります。岡山のぶどうは11月まで旬の時期が続きます。ぜひ岡山県を訪れて、美味しいぶどうを食べてくださいね。

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