岡山観光WEB 晴れの国×くだもの王国

岡山の桃といえば“白桃”。岡山県の桃は直射日光を当てないよう一つ一つに袋を被せる有袋栽培で、果皮が薄くて白い上品な色合い。瀬戸内海の温暖な気候と長年の栽培技術によって育まれ、果肉は柔らかくて甘みが強く、ジューシーなのが特徴です。7月から8月にかけて旬を迎え、9月頃まで収穫される品種もあります。日本有数の高品質な桃として知られています。

明治8年（1875年）に桃が試験場に導入されたのが始まりで、明治38年（1905年）に白桃が発見されました。昭和7年（1932年）には清水白桃が偶然発見され品種登録されました。玉島地区では明治27年（1894年）に桃の栽培販売が始まりました（備南広域農業普及指導センター資料より）。戦時中は一時衰退しましたが、その後桃の産地として復活し現在に至ります。先人たちの努力によって栽培面積も栽培技術も高まり、現在では岡山市一宮・津高地域、赤磐市山陽町と並ぶ、岡山県の桃の三大生産地のひとつとなっています。生産者の高齢化などの問題もありましたが、近年では若い世代の就農も増え、更に盛りあがりをみせています。

岡山、玉島の桃の収穫最盛期は7月中旬から8月中旬ですが、品種によって6月から9月まで出荷リレーが続きます。しかし美味しくとろけるような桃ができるまでには、年間通して生産者の方々が愛情を込めた様々な作業を行っています。では美味しい岡山の桃ができるまでをみていきましょう。生産者さんによって栽培方法は異なりますが、今回は玉島の富田地区に農園を構える若手の生産者さんを訪ねてみました。

桃の収穫が終わるとすぐに翌年の生産に向けての作業が始まります。桃の木の日当たりを良くして良い実をつけるために剪定作業が年に数回行われます。何年か先を見越して計画的に行うそうです。上からみると木の中央部が空間となっていました。これなら全体的に日がよくあたりそうです。

桃は1本の木に対してたくさんの実を着けるので、養分を集中させ大きく甘い桃にするため、実を間引く作業が必要になります。これを蕾の段階で行うのが摘蕾で、幼果の時に行うのが摘果です。12月頃になると摘蕾作業が始まります。最終的に残す実を日当たりなどを考えながら摘んでいきます。

玉島では例年4月上旬に桃の花が満開になります。満開時期には近くを走る新幹線から、JR新倉敷駅の北西に位置する小高い丘（桃畑の多い冨田地区）の南側斜面がピンクに染まって見えるほどです。また、山陽自動車道の玉島ICと道口PAの間を走っていると両側にピンクに染まった桃畑を見ることができます。

桃はほとんどの品種は自家受粉（風やミツバチなどの虫などで自然に受粉すること）しますが、川中島白桃や、2005年に登録された甘くて大玉が特徴のおかやま夢白桃などの品種は花粉を持たないため人工受粉しないと実を結びません。受粉作業は満開直後に行われます。早咲きの「白皇」や「白鳳」から花粉を採取したり、前年に採取して冷凍保存した桃の花粉が使用されます。

岡山の桃栽培の特徴の一つに、実に袋をかけて日光を当てないで成長させる有袋栽培が挙げられます。実一つ一つに手作業で袋を被せていく大変な作業です。日光だけでなく、桃を傷つける風や雨、虫などからも実を守るため、より美しい白い桃が育ちます。桃の実がピンポン玉くらいの大きさきなった6月頃から袋をかけます。

桃の害虫として蛾やカメムシがいます。これらを防ぐために「防蛾灯」が使われています。特に夜行性の蛾は桃の果汁を吸うため、桃畑に黄色やオレンジ色の光を放つ防蛾灯を設置し、蛾を寄せ付けないようにしています。この防蛾灯が設置された桃畑エリアでは、夜になると沢山の黄色や緑の光が桃畑を浮かび上がらせる幻想的な風景が夏の風物詩になっています。最近では害虫が嫌う高周波を発する機器も使われています。

これまでの苦労がやっと報われる時です。熟した桃はとてもデリケートなので、両手で包むようにして優しくもぎとっていきます。収穫時に使うかごの内側にはスポンジが張り巡らされていました。もぎ取るタイミングも、流通の時間も考えて一番良い時期を選ぶ必要があります。糖度を計り雑味なども残っているため必ず味見をしてタイミングを決めます。もぎ取る時期が近づくと毎日桃畑に確認しに行くそうです。

朝収穫した桃はその日のうちに選別・梱包され、出荷先（農協・問屋・直売所・スーパーなど）に持ち込んだり、集荷されていきます。その間も丁寧に細心の注意をはらいます。岡山県の白桃の等級は、主に糖度と外観に基づいて、生産者団体や選果場で決定されます。「ロイヤル」「キング」「エース」「加工用」とわけられ、私たちか購入するときの目安にもなります。贈答用や家庭用など、独自にランク分けしているところもあります。最高級クラスの糖度・外観・大きさと3拍子揃った「ロイヤル＋」級の桃は、収穫された中でも数パーセントしか該当しないそうです。もちろんお値段は張りますが、贈答用として引く手あまたの大人気！

今回取材にお邪魔した桃農家さんは就農7年目の「くらねら果樹園」の田邉さん。樹本来の特性を大事にした「岡山自然流」という栽培方法で、樹上熟成朝採り直送をモットーにしている、桃に対する熱き想いを持つ若手生産者さんです。

取材の際に小屋の中を覗いてみると、農機具が入っていると思いきや、中はなんと忍者の手裏剣道場！農閑期にここで忍者の修行をしているそう。作州忍者鶴山隊のともちピンク殿もビックリ！毎年桃の開花時期に畑で祭祀を斉行したり、極秘に忍者イベントも行なっているそう。ちょっとユニークな桃農家さんでした。でも、桃に対する熱意や研究意欲、技術は本物！これからどんな農園になるのか楽しみです。

岡山の桃の一大生産地である玉島地区は、JA晴れの国岡山の本店や非破壊糖度センサー完備の大規模自動選果施設・玉島北ピーチセンターなどもあり、桃農家がとても多い地域です。そのため、旬の時期を迎えると沢山の直売所が建ち並びます。桃畑とこれらの直売所が並ぶ道路を「玉島ピーチロード」と名付けて、今回取材した順番に紹介していきます。

「MOMONA」はハワイ語で「甘い、よく肥えた」という意味があるそうです。その名の通り甘くて美味しい桃作りを目指している、2人の女性によって運営されている桃農園です。桃の時期の土・日曜日にはキッチンカーも出て、桃ジェラードも販売！農園ガイドツアーも開催予定です（詳しくはお問い合わせください）。

【モモナピーチファーム】
所在地：岡山県倉敷市玉島道口
※カーナビを設定する場合は「池畝保育園」（倉敷市玉島道口3877-17）を経由地として看板を目印に
TEL：080-3052-5966
営業時間：10:00～17:00
営業期間：6月初旬～12月（お歳暮用の冬桃）
取扱い品種：はつおとめ、はなよめ、日川白鳳、恋みらい、白鳳、清水白桃、おかやま夢白桃、川中島白桃、白麗、ハネージュ、玉うさぎ、千年蟠桃、幸茜、黄金桃、黄ららのきわみ、西王母、エンパイヤ、冬桃がたり
※地方発送可

玉島ピーチロード沿いにある桃などの地産地消をコンセプトにした人気のおしゃれなカフェ（記事内最後に紹介）の奥に併設されている産直マーケット。すぐ近くの桃農家さんから朝採りの新鮮な桃がとどきます。加工品の桃ネクターも人気です。

【倉敷フルーツヴィレッジ・産直マーケット】
所在地：岡山県倉敷市玉島八島1707-1
TEL：086-486-0262
営業時間：土・日曜日、木曜日以外の平日9:00～16:00 ※木曜日は10:00～16:00　
取扱い品種：早生品種から白鳳・清水白桃など全般・黄金桃
※地方発送可

肥料を極限まで抑え、除草剤を一切使わない草生栽培を行っています。美味しくて品質の良い桃を提供するために、手間をかけて１つ１つを手作業で糖度を計測し、厳選した桃だけを販売している桃農家さんです。

【ひろりファーム】
所在地：岡山県倉敷市玉島道口5324-6
TEL：070-8331-7291
営業時間：8:00～15:00頃
営業期間：6月初旬～9月中旬
取扱い品種：はつおとめ、ひめこなつ、はなよめ、プリタ、恋みらい、白鳳、清水白桃、ハネージュ、紅錦香、まなみ、幸茜、玉うさぎ、瀬戸内白桃、恵白、西王母、エンパイア
※地方発送可

JA晴れの国岡山の本店に併設される直売所。夏から秋には桃やマスカット・ピオーネなどのぶどう、秋から冬は愛宕梨・新高梨などの梨を中心に豊富な品揃え。ロイヤルと呼ばれる等級の桃は岡山の桃の最高品質の特上品。贈答用として大人気です。

【JA晴れの国岡山 玉島北直売所「メルカートたまきた果菜館」】
所在地：岡山県倉敷市玉島八島1507-1
TEL：086-523-1521
営業時間：4～12月／8:30～16:30、1～3月／8:30～16:00
取扱い品種：はなよめ、日川白鳳、加納岩白桃、白鳳、清水白桃、おかやま夢白桃、川中島白桃、白麗、恵白、黄金桃
※大型駐車場あり
※地方発送可

道沿いの大きなアーチ形のゲートが目印。およそ3ヘクタールの広大な園内には桃だけではなく各種果樹園もあり、2頭のヤギがのんびり草を食んでいます。直売所には園内で収穫されたばかりの桃が並びます。また、桃の他にブドウ、リンゴが栽培されています。

【くらしき桃源郷】
所在地：岡山県倉敷市玉島道口2680-1
TEL：080-9795-8259
営業時間：8:00～13:00頃
営業期間：桃は7月初旬～8月中旬、その後ブドウ、リンゴ販売
取扱い品種：清水白桃を中心に白鳳、黄金桃など
※地方発送可

玉島から真備に抜ける54号線沿いにある高～い青い看板が目印の果物・野菜・生花が並ぶお店。持ち込む桃農家さんが値段を決めて販売されている委託販売形式で、農家さんもお客さんもとても大事にされ、お値段もとってもリーズナブル。贈答用と家庭用に分かれています。ここにはポニーとヤギのミニ動物園があり、お子様連れにも楽しい場所です。そして、メダカ専門店も併設されていて掘り出し物もいる100円メダカすくいが人気です。

【ロードプラザ倉敷】
所在地：岡山県倉敷市船穂町船穂7305-2
TEL：086-436-8123
営業時：9:00～17:00
定休日：水曜日（桃の時期は毎日営業）・1月1日～10日
取扱い品種：白桃全般、ブドウ、青果、生花、切花他
※地方発送可

玉島青果市場に本社のある花田青果株式会社が毎年出店している出張直売所。家庭用から贈答用まで揃っています。桃だけではなく、マスカット、梨、愛宕梨なども旬の時期に並びます。

【花田青果㈱・ナフコ前直売所】
所在地：岡山県倉敷市玉島832
TEL：086-522-2171
営業時間：9:00頃～16:00
営業期間：7月～11月頃
取扱い品種：白鳳、清水白桃、おかやま夢白桃、川中島白桃、白皇、白麗、黄金桃など
※地方発送可

地元の桃、マスカット、梨などを扱っている創業50年を越える地元食料品スーパー。白凰・清水白桃はベテランの農家さんから直接入荷されます。お店の人たちの目利きが確かなので、リーズナブルで美味しい旬の青果が並びます。

【小原商店】
所在地：岡山県倉敷市船穂町船穂7950-1
TEL：086-526-4405
営業時間：8:00～18:00
営業期間：桃は6月初旬～8月末頃、その他ブドウなど旬の青果を年間販売。
取扱い品種：はなよめ、白川白桃、加納岩白桃、川中島白桃、白鳳、清水白桃、、白麗、おかやま夢白桃、黄金桃他
※地方発送可

店の名前からして岡山弁丸出しのお店。朝とれたての桃を生産者が直接お店に運び、陳列まで行っています。フルーツはもちろん、 野菜 、お酒 、そして加工食品や調味料、地元の材料を使ったお弁当など、玉島周辺で作られた商品がここぞとばかり揃っているお店です。

【産直市場 ぼっけぇ〜きて屋】
所在地：岡山県倉敷市玉島1651-1
TEL：086-527-7390
営業時間：9:00～16:00
取扱い品種：玉島で生産される品種全般
※地方発送可

直売所でもご紹介した「倉敷フルーツヴィレッジ」。こちらのカフェでは地元玉島の桃を使ったカレーやパフェ、白桃ネクター、ピーチジンジャエールなどが楽しめます。ドライブ途中、ちょっとひと息入れるのにもちょうど良い場所です。

【倉敷フルーツヴィレッジ】
所在地：岡山県倉敷市玉島八島1707-1
TEL：086-486-0262
営業時間：平日11:00～17:00、土・日曜日、祝日11:00～17:00（L.O.16:30）
定休日：月曜日（祝日の場合は翌日） ※火曜日不定休

ご紹介した様々な直売店。贈答用、家庭用など目的に合わせて何件か回ってみるのも良い方法です。何よりもお店の方とお話ししてみることをお勧めします。目的や予算に合わせて一番良い桃を選んでくれます。美味しい桃の食べ方なども聞いてみましょう。また、程度の良い桃やお買得品は早くなくなっていきますので、早めの時間に行くことも大切です。玉島の桃は早生品種から冬桃まで様々な品種が生産されています。清水白桃などはとても人気で、収穫時期の終わり頃には品薄状態に。直売所には生産者から直接少量でも入ってくるので、清水白桃に限らず諦めないで問い合わせしてみるのも肝要です。

桃農家さん、問屋さん、直売店の皆さんが、情熱・愛情を持って私たちに美味しい岡山の桃を届けるべく奮闘中でした。玉島の桃を一度食べたのがきっかけで毎年桃の時期を楽しみにしている常連さんも多く、中には農家さん指定で購入される方もいらっしゃるそうです。また、6月の早生品種のはなよめから12月の冬ものがたりまで出回る全ての品種をコンプリートされる熱狂的なファンも！「玉島ピーチロード」周辺には今回紹介出来なかったお店もまだまだあります。ぜひ一度岡山の桃の産地を訪れてみてください。すぐ近くの港町玉島は昭和レトロの残る街として人気のスポット。桃購入と一緒に玉島の観光も楽しんでいただければと思います。