岡山・天空の茶畑で茶摘み体験!飲み比べもできる「海田園黒坂製茶」へ行ってみた(美作市)
映画のロケ地にもなった「天空の茶畑」がある岡山県美作市海田(かいた)地区。朝霧と昼夜の寒暖差が育む上質なお茶の産地で、60年以上のお茶作りの歴史を持つ「海田園黒坂製茶」を訪ねました。茶摘みから手もみ製茶体験、4種の飲み比べまで、自分の手でお茶が生まれる感動体験ができる、忘れられない一日をレポートします。
- ライター
- 酒井悠
- 掲載日
- 2026年6月23日
目次
映画のロケ地にもなった「天空の茶畑」
岡山県北東部の山あい、美作市海田地区に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのが段々と連なる広大な茶畑です。標高約300メートルの斜面に広がるこの茶畑は、かつて里では霜が降りて茶木が傷んでしまうため、霜が避けられる山の上に畑を拓いたのが始まりだといいます。
その結果として生まれた、朝霧の中に浮かびあがるような景観が「天空の茶畑」と呼ばれ、映画のロケ地にも選ばれるほどの絶景になりました。
谷川がつくり出す朝霧は茶葉に降り注ぐ日差しを遮り、昼夜の寒暖差が旨みをゆっくりと育みます。蛍が飛び交う清流と澄んだ空気——室町時代の書物に「美作の国の産物」と記されるほど古くからの茶の産地として、この土地が愛されてきた理由が自然と腑に落ちます。
こだわりはシングルオリジンと一貫製造
「海田園黒坂製茶」では、土づくりから茶木の栽培、摘み取り、加工まですべてを自社で一貫して行っています。工場では20数台の機械を使い、蒸熱・冷却・揉捻・乾燥の工程を丁寧に経て仕上げます。
注目したいのは、茶葉をブレンドせずに単一農園の個性を楽しむ「シングルオリジン」として展開していること。コーヒーやチョコレートの世界で浸透してきたシングルオリジンの概念を日本茶に取り入れ、この畑、この土、この気候でしか生まれない味わいを届けています。
常時12種類ほどの茶の木を育て、収穫時期を品種ごとにずらすことで長い期間摘み続けられる工夫もしています。農薬はほぼ使用せず、収穫後は木を切り戻してふかふかの土に整えます。年々厳しくなる夏の暑さに対応するため、新品種の導入も進めており、気候変動と向き合いながら「この土地で最もおいしいお茶」を追い求めています。
5月スタート!茶摘み体験のリアル
毎年5月上旬から始まる一番茶の収穫は、約1ヶ月かけて行われます。広大な茶畑の摘み取りは機械で行いますが、ツルなどの雑草はすべて手作業で根から抜くそうです。茶木の下に体を潜り込ませて行う草抜きは想像以上の重労働に感じられます。二番茶・三番茶は真夏の暑さの中での作業となり、害虫が増えた年には収穫を諦めることもあるそうです。
体験ではその茶畑に実際に入り、自分の手で新芽を摘ませてもらいました。海外からの参加者も多く、言葉が通じない場合は携帯の翻訳アプリで案内するというおおらかさに、黒坂さんご夫婦の温かな人柄が滲み出ていました。
摘んだ葉が一杯のお茶になるまで〜手もみ製茶体験〜
茶畑から戻り、いよいよ手もみ製茶の体験が始まります。自分で摘んできたばかりの葉が、この手でお茶に変わっていく——その工程一つひとつが、驚きの連続でした。
体験の前に、まず黒坂製茶さんのお茶の試飲をさせてもらいました。水分を含んだ茶葉がふくらむ様子に子どもたちも興味津々でした。
手もみ製茶体験は以下の手順で行いました。
1.葉を蒸す…ホットプレートで摘みたての茶葉を蒸し、葉をやわらかくします。
2.最初のもみ…おにぎりを握るような力加減でやさしく葉をもみほぐします。力の入れ方が大切です。
3.水分を飛ばしながら揉み込む…弱火で水分を飛ばしながら、徐々に力を加えてしっかりと揉みます。この工程を2回繰り返します。
4.仕上げの乾燥…保温程度のやさしい熱で残った水分をとばし、カラカラになるまで乾燥させて完成です。
手のひらに伝わる温かさと、茶葉の青々とした香りが部屋いっぱいに広がります。わからないことがあれば、黒坂さんがやさしく丁寧に教えてくれるので、初めてでも安心して進められます。小学生の子どもも夢中になって取り組み、「できた!」と顔をほころばせる場面がとても印象的でした。
完成したお茶を急須で淹れると、まろやかな甘みと豊かな香りが広がる煎茶が生まれました。「さっきまで畑にあった葉が、今ここにある」という感動は、体験した人にしかわからないものがあります。
4種の飲み比べ〜美作のお茶の奥深さ〜
体験を締めくくるのは4種のお茶の飲み比べです。
<美作紅茶>
和紅茶らしい穏やかな香りで、苦みが少なくストレートで飲み干せる親しみやすい味わい。
<きぬむすめ玄米茶>
自家栽培の「きぬむすめ」米を使用しており、香ばしい玄米の香りに続いてお茶の豊かな風味が広がります。
<美作番茶>
室町時代から受け継がれた製法である、枝葉を大釜で煮て、天日干しの途中に煮汁をかけ直すことで飴色に仕上げる逸品で、旨みが凝縮した深い香りが印象的です。
<海田の雫>
海田園黒坂製茶が各品種の良さを生かしてブレンドした一番茶。豊かな旨味と上品な余韻が特徴で、お菓子との相性も抜群です。
お茶を練り込んだフィナンシェもありました。さっぱりした口当たりに風味豊かなお茶の香りが重なる、飽きのこないスイーツです。
ほかにもパスタソース「茶ノベーゼ」など、斬新な加工品の開発にも取り組んでおり、お茶の新しい楽しみ方を提案しています。
土を作り、草を抜き、葉を摘んでお茶にする——。黒坂製茶のものづくりへの情熱は、一杯のお茶の奥にたしかに宿っていました。岡山を訪れる際には、ぜひ美作の緑の中でその味わいを体感していただきたいです。
【工場見学・お茶体験について】
海田園黒坂製茶では、予約制で工場見学や体験を受け付けています。お茶をより身近に感じてもらうための「お茶体験メニュー」もあり、海田と海田茶の魅力を五感で感じることができます。
【海田園黒坂製茶】
所在地:岡山県美作市海田2343
TEL:0868-72-2801
営業時間:9:00~18:00
定休日:日曜日、祝日
駐車場:あり(普通車3台)
映画『風の奏の君へ』
今回取材で訪れた「天空の茶畑」は、2024年6月公開の映画『風の奏の君へ』のメインビジュアルに使われたロケ地です。美作市出身の小説家・あさのあつこの原作を、同じく美作育ちの大谷健太郎監督が映画化した、故郷愛あふれる作品です。主演の松下奈緒が演じるピアニスト・里香が訪れ「一生忘れない」と言葉を残した絶景が、ゴールデンウィークから5月中旬にかけて最も色鮮やかな新緑を迎えます。
監督:大谷健太郎 出演:松下奈緒、杉野遥亮、山村隆太(flumpool)ほか
地図
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