「マビ昭和館」はまるで大型のタイムマシン。気軽に時間旅行を満喫(倉敷市)
岡山県倉敷市真備町にある「マビ昭和館」は、月に2日(主第1・第3日曜日)だけ開館する私設博物館。懐かしさに胸を熱くする大人から初めて見る世界に目を輝かせる子どもたちまで、全国から多くの人々が吸い寄せられるように集まってきます。
一歩足を踏み入れると昭和の空気に包まれる、博物館という枠には収まらない規格外のタイムマシン。泥臭いながらもキラキラと輝いていた昭和を生きてきた館長や温かいスタッフの皆さんとの触れ合いも楽しい!“昭和101年”の夏、昭和を約1/3生きたライターが「マビ昭和館」で実際にタイムスリップしてきました。
- ライター
- イマオカ マコト
- 掲載日
- 2026年7月28日
目次
ミニカーから始まった「12,000点超の昭和ロマン」
「車が好きでね。最初はミニカーのトラックとかを集め始めたのがきっかけだったんです。大きな本物の車をたくさん集めるわけにはいかないから、まずはミニカーを自分の手元に置いて楽しんでいました」と笑うのは、「マビ昭和館」館長の丸岡律夫さん。圧倒的なコレクションの数々は、館長が45歳の時に集め始めたミニカーからスタートしました。
車好きが高じて、定年後には旧車を自身で板金修理して走らせるほど車への情熱を注いできた館長。気がつけば、自宅にあったお父様の形見のカメラやコツコツと集めたミニカーはなんと数千台規模に。 それらを「せっかくだから、どこかでみんなに見てもらいたい」と、倉庫を大改造して陳列したのが「マビ昭和館」の原点です。現在では、自動車、ミニカー、バイク、自転車、カメラ、生活用品、おもちゃ、映画ポスターなど、実に12,000点を超える貴重な昭和の資料が所狭しと並んでいます。
- 丸岡館長
- 車に思い入れが強いので目立っていますけど、何かに特化したわけではなく、あらゆるジャンルの昭和が詰まっていますよ。

名車に誘われ、誰もが「時をかける空間」
受付で入場料を払うと…というより建物に入る前から目を引くのは、三菱デボネア・コンバーチブル(オープンカー)をはじめとする数々のクラシックカー。ズラリと並んだ美しい姿は、館長の徹底したこだわりによるもので、なんと「マビ昭和館」の車たちは展示物でありながらナンバー付きの登録車で実際に道路を走ることができるんです!
その車たちを見下ろすように貼り巡らされている一面の映画ポスター群、一際目立つ手描きの看板は実際に倉敷の映画館で使用されていたもの。希少です!ポスターの裏には理髪店や駄菓子屋の風景をリアルに再現した「昭和レトロ横丁」が!私にとっても懐かしい「昭和の空気」は、どこを切り取っても当時の人々の息遣いが聞こえてきそうで、誰もが「時をかける空間」です。
- 丸岡館長
- 見てもらうために車を綺麗にしたわけじゃなくて、もともと綺麗にして飾りたいっていうのが自分の性格なんです。みんなが喜んでくれるから本当に嬉しいですね。

生活用品や農具に引き寄せられる「あの頃の記憶」
館内にかかる懐かしい歌に後押しされて2階へ。台所用品からAV機器に家電、時代の色を伝える生活用品、さらにはかつて日本の田畑を支えた農具の数々までが、所狭しと並んでいます。まさに「昭和館」の名にふさわしく、昭和という時代を丸ごと詰め込んで未来へと運ぶタイムマシンのようです。 昭和の子どもたちが遊んでいたおもちゃに文具、台所やリビングで活躍していた生活用具の数々。古い農具のコーナーでは立ち止まって涙する人もいるそうです。ここの展示物は特化したコレクションではなく、かつての暮らしや大切な肉親との思い出を呼び起こす記憶のスイッチの役割も担っているように感じます。私もいろんな展示物に足を止め自分の昭和を思い起こしました。
- 丸岡館長
- 農具や生活用具はいろんな方が持ち寄ってくれて、思い出やエピソードを話してくれるんですよ。

昭和の部屋を抜けると「圧巻のミニカーコレクション」
「マビ昭和館」のきっかけとなったミニカーコレクションは、昭和が再現された部屋を抜けた先の専用展示室にあります。「どこから見ればいいの?」という圧巻のコレクション!様々な種類のミニカーはマニアにとっては何時間でもいられる禁断の部屋かもしれません。何か気になることがあれば館長に尋ねてみては?ミニカーの展示室を出ると、こちらも開館のきっかけになったカメラコレクションが待っています。館長のお父様のコレクションをはじめ、時代を彩ったカメラに魅了されます。他にもちょっと勉強になる展示や昭和の家あるあるの展示があったりと、なかなか足が進みません。
- 丸岡館長
- いろんなジャンルのミニカーがあるのでじっくり見てほしいですね。好きな人は一日中居られる場所かもしれません。

優しいボランティアの方々が教えてくれる「昭和の温もり」
再び1階に降りて館外へ。車庫には希少な三菱車やマツダオート三輪が!こちらもナンバー付きでピカピカです。その先はオートバイ&自転車のコーナー。こちらにも希少なバイクや自転車が展示してあり、「それらが本当に好きでたまらない」という昭和を生きたボランティアスタッフが自らの思い出を交えながら優しく説明してくれます。 取材日は「若い頃にアメリカをバイクで走ったという破天荒なエピソード」を楽しく話してくれました。
展示品を見るだけでなく「人」を介してその時代の温度やストーリーに触れることで、ここでの時間は何倍も豊かで温かいものになります。「マビ昭和館」のもう一つの大きな魅力は、展示案内や昭和サロンで歓迎してくれる人生の先輩たち。残念ながら写真はないのですがシニアの部活動のように楽しそうです。
- 丸岡館長
- みんな、それぞれが適材適所で動いているので気軽に話しかけてください。僕たちも話すのが楽しいんです。

お腹も心も満たしてくれる「昭和レトロのメニュー」
せっかく「マビ昭和館」を訪れるなら、お腹も満たしましょう。近所の人たちも通う喫茶ブース「昭和サロン」で人気の「昭和レトロカレー」。家庭的で優しくコクもあって程よい辛さ、昭和世代には懐かしく、若い世代には新鮮かも。このカレー、前日から牛すじを丁寧に煮込んで仕込む、とても手の込んだ愛情たっぷりの逸品なんです。またシュワシュワのメロンソーダにバニラアイスがのった昭和喫茶でお馴染みの「クリームソーダ」も人気です。月2回の営業日を楽しみに和気あいあいと集まる近所の方々とサロンのお姉さまたちの笑顔が、昭和感をさらに高めてお腹はもちろん心までじんわりと満たしてくれます。
- 丸岡館長
- 昭和を満喫してほしいから、カレーのごはんも昭和にこだわって当時の炊飯ジャーで炊いているんですよ。

西日本豪雨を乗り越えての再開は「みんなへの恩返し」
今でこそ笑顔が溢れる「マビ昭和館」ですが、2018年7月の西日本豪雨災害では、高さ183cmにまで達する未曾有の水害に見舞われました。 シャッターが水圧で開かなくなり、車や集めてきた貴重なコレクションの多くが水没しましたが、館長は「残そう」と立ち上がりました。頑張って復元しようとしたものの浸かったものは泣く泣く諦めて、それでも車だけは全て修復させようと注力したそうです。
多くのボランティアや全国からの温かい支援を受け、翌年の5月に奇跡の復活。今では地域住民が楽しめる「カラオケの集い」などが開催される多目的ステージも稼働し、ふたたび多くの人が笑い合える倉敷市真備町のシンボルとなっています。
- 丸岡館長
- 毎日20〜30人が手伝ってくれました。皆さんに1日も早く『恩返し』をしたい一心で再開までの1年間、死に物狂いで頑張りました。

デボネアをはじめ展示品は「パレードや映画などに大活躍」
最初に触れた、三菱の高級車「デボネア」のオープンカー(コンバーチブル)は、「マビ昭和館」に並ぶ名車のなかでも特に熱い視線を集めています。こちらは瀬戸大橋開通記念としてわずか3台のみ製造されたという超がつく希少車で、ナンバー付きの個体はなんと現在この1台のみ。フィギュアスケートの高橋大輔選手がバンクーバー五輪で銅メダルを獲得し、地元・倉敷に凱旋した際のパレードで館長自ら緊張のなかハンドルを握って実際に使用した伝説の一台です。今でも大ちゃんのファンが車目当てに訪れるとのこと。
さらに、実は数々の映画やドラマに「マビ昭和館」の車両や貴重なアンティーク品が数多く出演しており、例えば岡山県内で撮影された阿部寛さん主演の映画「とんび」でも多くの車両が登場しています。もしかしたら、あなたがこれまでにスクリーンやテレビ画面のなかで目にして「どこか懐かしいな」と心をときめかせたあのレトロな自動車や小道具も、「マビ昭和館」のお宝かもしれませんよ。
- 丸岡館長
- デボネアは本当に宝物。ぜひ近くで見てください。大ちゃんのパレードは緊張したけどやってよかった!一生の思い出です。

世代を超えて「笑顔とパワーがつながる場所」
2023年には「第二展示場」も新たにオープンしてさらにパワーアップ。こちらにも希少車が展示してあり、2階のギャラリーには様々な作風で昭和を描いた高本幸男さんの作品をはじめとした逸品が展示されています。タイミングがあえば、在廊している色鉛筆画作家の話も聞けるかも。
近年では、昭和を知るシニア世代だけでなく、若いカップルや家族連れ、さらには地元の小学校の社会見学としても大人気で社会科見学で年間100人ほどの小学生を受け入れているそうです。懐かしむ場所であり、学ぶ場所であり、そして何より人と人が温かく繋がる「マビ昭和館」は昭和の暮らしが丸ごと詰まったタイムマシンです。元気なシニアの方々が優しく教えてくれるあの頃の暮らしの知恵や、館長が死に物狂いで守り抜いた宝物たちに会う「時をかける旅」に出かけてみませんか?
【マビ昭和館】
所在地:岡山県倉敷市真備町辻田961
開館時間:10:00~16:00
開館日:毎月第1・3日曜日
入館料:高校生以上800円、小・中学生400円
※障がいのある方、喫茶・軽食「昭和サロン」のみ利用の方は入館無料
駐車場:あり
- 丸岡館長
- 引率の先生も昭和を知らない世代(笑)。本でしか見たことがない実物を前に、子どもたちも興味津々で質問してくれます。そんな「マビ昭和館」にぜひ遊びに来てください。

地図
- マビ昭和館
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