「民藝」のまち倉敷 〜人々の暮らしの営みから生まれた工芸〜
倉敷を語るうえでよく出てくるキーワードのひとつに「民藝」があります。民藝とは「民衆的工藝」の略称で、美術品として作られたものではなく、人々の生活のなかから生まれてきた器や生活雑貨のことです。
現在の観光地としての倉敷美観地区が整備される前から、倉敷に根付く民藝の歴史と、民藝にふれることができるスポットを紹介します。
- ライター
- toru.
- 掲載日
- 2026年4月27日
目次
倉敷美観地区と民藝のつながり
「民藝」とは、今から約100年前に柳宗悦(やなぎ むねよし)氏らによって提唱された「民衆的工芸」という言葉を省略した造語です。これは、一部の人だけが楽しむ鑑賞用の美術的工芸とは異なり、地域の暮らしの中で必要とされ、無名の職人(工人)によって作られた日常使いの道具を指します。
人々の生活の中に息づく「民藝」を見つけ出し活用することで、「人々の生活の質を上げていこう」という運動を「民藝運動」と呼び、特に戦後の物資が乏しく精神的にも厳しい時期には、民藝を通じて生活を豊かにしようという強い願いが込められていました。
「大原美術館」を設立した倉敷出身の実業家・大原孫三郎氏は民藝運動のよき理解者として、柳らの活動を資金面で支援していました。孫三郎なきあと、その思いは長男の大原總一郎氏へと受け継がれていきます。
倉敷民藝館
「倉敷民藝館」は1948年(昭和23年)、第二次世界大戦終結からわずか3年という物資も精神も厳しい時代に設立されました。東京の「日本民藝館」に次いで日本で2番目に作られた民藝館であり、地方においては日本初です。
重厚な建物は江戸時代末期の米蔵を改装したもので、倉敷における「古民家再生」の第1号でもあります。この建物再生が嚆矢(こうし)となり、古い町並みを保存する活動が現在の美しい倉敷の街並みが残るきっかけになったとも言われています。
館内には岡山や倉敷の作品だけでなく、世界各地から集められた日常の道具を展示しています。
併設する売店では、岡山県内はもとより各地の民藝がセレクトされており、実際に手に取って選ぶことができます。
【倉敷民藝館】
所在地:岡山県倉敷市中央1-4-11
TEL:086-422-1637
営業時間:10:00~17:00(受付は16:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日、ただしGWとお盆期間は開館)、年末年始(12/29~1/1)
料金:一般1,200 円 、高・大学生500円、小・中学生300円 ※売店への入場は無料
駐車場:なし(近隣の有料駐車場を利用)
倉敷本染手織研究所
大原總一郎氏に招かれて「倉敷民藝館」の初代館長となった外村吉之助(とのむら きちのすけ)氏が、自宅を使って1953年に開設した「倉敷民藝館附属工芸研究所」をルーツに持つ「世界一小さな学校」です。
生徒数は10名以下の少人数制で、1年間住み込みで手紡ぎ、本染め、手織りの技術を学びます。
「倉敷民藝館」の初代館長を務めた外村吉之助氏は、織物の研究者でもありました。
こちらで作られている代表的な作品が「倉敷ノッティング」。毎年秋ごろに「倉敷民藝館」で開催される倉敷本染手織会作品展では、在校生や卒業生による力作が並びます。
【倉敷本染手織研究所】
所在地:岡山県倉敷市本町4-20
非公開(外観のみ見学可)
大原美術館(工芸館)
日本で最初の西洋美術を中心にした美術館として知られる「大原美術館」にも民藝に触れられる展示があります。
創設者の大原孫三郎氏と長男の大原總一郎氏は、民藝運動のよき理解者であり支援者として、作家たちとも親交を深めていました。土蔵を改装して作られた「工芸館」には、民藝運動を牽引した以下6名の作家の作品が展示されています。
- 濱田庄司(はまだ しょうじ)|陶芸
- バーナード・リーチ|陶芸
- 富本憲吉(とみもと けんきち)|陶芸
- 河井寛次郎(かわい かんじろう)|陶芸
- 棟方志功(むなかた しこう)|木版画
- 芹沢銈介(せりざわ けいすけ)|染色
【大原美術館】
所在地:岡山県倉敷市中央1-1-15
TEL:086-422-0005
営業時間:9:00~17:00(3月〜11月) ※最終入館16:30、9:00~15:00(12月〜2月) ※最終入館14:30
休館日:月曜日(臨時休館あり)※休館日が祝日、振替休日と重なった場合は開館。8月は無休
料金:一般2,000 円 、高校・中学・小学生(18歳未満)500円
駐車場:なし(近隣の有料駐車場を利用)
日本郷土玩具館
日本各地に伝わる郷土玩具を収集したミュージアム「日本郷土玩具館」。こちらにも民藝にふれることができるコーナーがあります。
入ってすぐの売店には、倉敷でうまれた手しごとにまつわるさまざまな商品を紹介。店内および奥のギャラリーには、民藝を紹介するコーナーが設けれられています。
【日本郷土玩具館】
所在地:岡山県倉敷市中央1-4-16
TEL:086-422-8058
営業時間:10:00~17:00(受付は16:40まで)
休館日:年末年始(12/30〜1/1)
料金:大人600円、中~大学生300円、小学生100円、小学生未満無料 ※売店への入場は無料
駐車場:なし(近隣の有料駐車場を利用)
滔々 toutou 倉敷民藝館南店
「倉敷民藝館」のすぐ隣にある複合施設「倉敷SOLA」。みんげい広場を入った奥にあるこちらのお店は、岡山県内はもとより全国の手仕事の品を扱っている工芸品のセレクトショップ。
倉敷美観地区内では、こちらのお店だけに置いている作家さんの作品も多数あります。
レトロな雰囲気が特徴的なこちらのガラス食器は、岡山市「三宅吹硝子工房」三宅義一さんの作品です。
こちらは島根県にある西持田窯の作品。窯を営む津田堅司さんは、沖縄での修行を経て2019年に独立された若手の作家です。
2026年5月16日(土)〜24日(日)にかけて、この場所で個展が開催される予定です。
レジ横には備中和紙で作った、ねこと丸石をかたどった小さな張り子がありました。こちらは張り子くじ(1,500円)として販売されており、どれが出るかは引いてみてのお楽しみです。ミニサイズなので、かさばらず持ち帰れます。倉敷の思い出にいかがでしょうか。
店内にはその他にも興味深い品々が多数並べられています。
【滔々 toutou 倉敷民藝館南店】
所在地:岡山県倉敷市中央1-4-13
TEL:080-9799-7751
営業時間:12:00~17:00
定休日:無休
融民藝店
JR倉敷駅と倉敷美観地区を結ぶ商店街から続く通りにある「融(とおる)民藝店」。創業は1971年で、半世紀以上にわたりこのまちの歴史を静かに見守ってきたお店です。
レトロで趣のあるガラス戸を引いて店内に入ると、全国津々浦々で生み出された民藝の数々が陳列されています。
2022年にこの店を前店主から引き継いだ山本尚意(やまもと たかのり)さんに店内を案内していただきました。
取材時、入口すぐのスペースには九州地方で生み出されたガラスや陶磁器の数々が陳列されていました。
こちらのグラスは、ガラス瓶を再生して作られたものだそう。丈夫で割れにくく普段使いにも最適な一品です。
小上がりのスペースには、倉敷にゆかりのある民藝の品々が陳列されています。
倉敷ガラスのコーナーに、石のような塊がありました。これは倉敷ガラスの素となる素材で、熱して吹くことでさまざまな形状を作るそうです。
別のコーナーには、先述の大原美術館・工芸館に収蔵されている染色家、芹沢銈介のデザインしたマッチ箱なども陳列。これらは創業以来こちらのお店にて保管され続けてきたもので、設えに合わせてディスプレイされているとのことでした。
【融民藝店】
所在地:岡山県倉敷市阿知2丁目25-48
TEL:086-424-8722
営業時間:11:00~18:00
定休日:月・火曜日
おわりに
民藝をテーマに倉敷美観地区を散策してみると、観光地としての倉敷美観地区が成立するより以前から、民藝運動の足跡があったことに気づかされました。
戦後間もない頃に「倉敷民藝館」が出来たこと、初代館長の外村吉之助氏、それを支援した大原家の働きと、どれか一つでも欠けていたら多くの人が知る白壁のまちの姿は無かったのかもしれませんね。
今回紹介したスポット以外にも、倉敷美観地区周辺には民藝を扱うお店が点在しています。懐かしくて新しい、民藝をたずねて倉敷のまち歩きをしてみませんか。
紹介したスポットの場所(地図)
- 倉敷民藝館
- 倉敷本染手織研究所
- 大原美術館
- 日本郷土玩具館
- 滔々 toutou 倉敷民藝館南店
- 融民藝店
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